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ツール・ド・三遠南信!? [スロー旅]

2003年の旅日記を再編して掲載しています。


『ツール・ド・三遠南信!?』の巻

さあさあ、やって来ましたよ〜5月!自転車旅のシーズンが!
今回は、2003年5月19日(月)から5日間の連休を取っておいたのです。
これはもう、3泊4日で行くしかないっしょ〜!
2〜3日前から、「岐阜県の下呂温泉を中継地点にして奥飛騨温泉郷へ!」
という魅惑的な構想も浮上しておりまして、前日までには準備もバッチリ。
ただ、今回もトレーニングはまったくしておらずのぶっつけ本番ですが…。

ちなみにその準備とは…自転車はビアンキのシクロクロスモデル。
とはいっても、前回の旅でタイヤがバーストした際に、タイヤを標準装備の
35Cのブロックパターンありのものから、28Cのスリックタイプにしたので、
もうシクロというよりはツーリング車の、マイ旅自転車、愛車〜。
自転車屋に足しげく通い調整も済ませておいた。その自転車にヘッドライト、
新しく買ったインフレーター(携帯用空気入れ)、ペットボトル水、
サドルバッグが装着されています。サドルバッグの中にはワイヤーロックや携帯工具、
パンク修理キット、ヘッドライト用のスペア電池が。というわけで、ま、今まで通り。

そして今回からの新装備。まずはテールライト。赤く光るやつね。前回怖かったので。
夜間走行の安全性アップ!それからこれは新兵器っすよ〜、サイクルコンピュータ!
「コンピュータ」といっても、スポークにマグネットのセンサーを付けて、
速度や距離が計測できるだけのものなんだけれど。それでも、あれば楽しい小物!

自分が背負うザックには、これも前回と同じような感じで、必要箇所のみの地図、
お金、最小限の着替え、身のまわり品、それから使い捨てカメラと、
よりコンパクトにまとめた。それに追加して、スペアチューブ。
前回パンクしたときは持っていなくて痛い目にあったからねえ。

あとは当日、お気に入りのウェアを身にまとい、手にはグローブを装着。
コンタクトレンズ装用につき目の保護のためにサングラスをかけ、
相変わらず見た目と快適性重視でヘルメットはナシで、出発するのみ!

ところが初日、5月19日(月)は雨が降っていた…。
午後の遅くから雨は上がったのだけれど、今日は準備日にするしかない。
名古屋に電車で出て、旅前の最後の買い物日とした。が、目ぼしいモノはなく、
関係ないけれど欲しかったジーンズを買って帰ってきただけなのであった〜。


次の日、5月20日(火)。天気予報では「くもりのち晴れ」だった今日も、
朝から雨が降っているじゃあないの!いつでも出発できるようにと
雨が上がるのを待っていたけれど、気がつけばお昼過ぎになってしまっていた。
今日の出発をあきらめかけていると、午後1時半ごろ、雨は上がり、
少し晴れ間も見えてきた!今日出発しなければ3泊4日の行程は不可能、
魅惑の奥飛騨温泉郷にも行けない…出るしかない!
天候の不安はありつつも、準備OK出発だー!

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準備OKマイ自転車&荷物。

今回のルート予定は、自宅から、国道に出て北上、岡崎市、豊田市、瀬戸市、
愛知県を抜けて岐阜県は多治見市、可児市、美濃加茂市まで来たら、
そこからは飛騨川沿いに国道41号線をさらに北上、というもの。
JR高山本線で高山まで行ったとき、電車内から線路の近くを通る道を見て、
自転車でも走りやすそうだと思ったのが、この計画を構想したきっかけ。

ということで、自宅を出発。国道248号に出て岡崎市を北上。
まあ順調に走行していたのだけれどだがしかし!ポツリ、ポツリと、
国道1号線との交差点付近で雨が降ってきた!ついてねえなあと思いつつ、
近くの会社事務所が入っている建物の軒下で、雨宿りをすることにした。

すると、建物内のおばさんが出てきて、「いらない傘があるからあげるよ」と。
とてもありがたいお言葉。でも、自転車走行で傘はさしづらいし危ない。
それに自転車を濡らしたくない自分は雨が上がるまで待つつもりでいたので、
「いいですいいです」と丁重にお断りさせてもらった。それにしても、早くも、
いい人に出会えたな。こういう人とのふれあいが思いがけずあったりするから、
自転車ひとり旅はいいんだよなあ。

しかし、待てども待てども雨はやまない。時間もロスしているし、
今日はもうあきらめて家に帰ろうと思い始めていた。
ひまつぶしにサイクルコンピュータの速度や距離を見る。
ここまで14キロほど走ってきたのか。さらにひまつぶしに、
腕時計のクロノグラフ機能を再確認。普段使わないよこんなの。
雨はまだ上がらない。道の向こう側にうなぎ屋があって、悩ましくいい匂いがした。
関係ナイけど、「ひまつぶし」と「ひつまぶし」って似てませんか(バカ)?

1時間ほど待っただろうか、ようやく雨がやんできた。今日はもう家に帰ろう。
来た道を戻り自転車を走らせていると、また、雨が降ってきた。
ほんっっとうに、ついてないなあ。今度はカメラ屋の軒下で雨宿り。
目の前を中学生が徒歩や自転車で通り過ぎていく。自転車は濡らしたくないので、
雨中走行は絶対に避けたいところ。とにかく、雨が上がるのを待つ。

さらに1時間ほど経過。雨はまだ上がりそうにない。
小降りになり雨がやみそうに思えてきたところで、意を決して再び走り始めた。
しかし、道は濡れていて高速回転するタイヤが泥を巻き上げる。
自転車は泥で汚れ、背中もザックも汚れる。しかも、ほんっっっとうについてない、
またまた雨が降ってきた。もう、ヤケクソ。自分の運のなさに怒りが込み上げてきて、
思わず声も上がる。午後5時半ごろ、ようやく家に着いたものの、
自転車もウェアもザックも泥まみれ。もう3泊4日の行程は不可能。奥飛騨も無理。
「いつもこうだよ〜」!何かと雨に降られることが多い自分。
やり場のない怒りに充ち満ちていた。

ウェアを脱ぎ捨て、短パンに上半身裸。この日はその後、自転車やザックに
付着した泥をぬぐい去る作業で、終わった。


翌日、5月21日(水)。もう、モチベーションは下がりまくっていた。
昼下がりまで寝て過ごし、こんな目にあうのは、前回の自転車旅の文を
いまだにホームページに掲載していないからだとなぜか思い、急きょ完成させたり。
少し気が紛れた。精神的にまいっていたので、この日はある意味リハビリ日となった。
明日、どうしようか。1泊2日でも、どこか、行こうか。そんな気になれた。
下呂温泉?いや、電車で行ったことがあるし、最終目的地としてはちょっとな…。
そうだ、愛知県内の温泉地、湯谷温泉に行こう!昔、同じ鳳来町にある親戚の家まで、
クルマで連れていかれていたときに通った道で途中まで行けそうだし、
懐かしい気分にも浸れそうだ。距離は下呂と比べたら近いけれど、
温泉宿で、の〜んびりしてこよう。決定!明日、出発!


5月22日(木)、天気は晴れ!午前9時、自宅を出発!軽快にペダリング。
雨に降られて予定変更を余儀なくされたけれど、自転車はやっぱり気持ちいいなあ〜。
風を感じながら、道は蒲郡市の国道23号線に合流。市街を抜け坂を越えると海に出る。
海沿いを進み、2年前に通ったときにはまだ建造中だった『ラグーナ蒲郡』を横目に、
御津町へ。このあたりで左折して31号線へ、豊川市方面に向かう。

ここまで、特にこのあたりから、昔と変わらないのどかな光景が見てとれて、
ちょっと懐かしい気分にさせられた。クルマの交通量も少なくて快適。
豊川市、一宮町と軽快に自転車を走らせる。新城市に入ると国道151号線へ。
このまま国道をたどれば湯谷温泉まで行けるのだけれど、ここはあえて、
親戚の家までの道のりで途中まで行くことにした。こちらのほうがクルマも少なくて
走りやすいだろう。新城市街を避け右折、橋を渡り川を越える。
橋の真ん中で立ち止まると、やっぱりなんだか懐かしく感じる川の景色。
そして上流に向かい69号線、川沿いの別所街道を走る。あ、民家の庭にニワトリが。
道が、風景が、本当にのどかで懐かしい。途中、親戚の家への道から外れて、
懐かしロードはここまでにしたのだけれど、帰りにおみやげでも持って、
長い間行っていない親戚の家に寄っていこうかな、そう、思えた。

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たぶん昔も見ただろう川の景色。       ニワトリが放し飼いに。

宇連川沿いの69号線をさらに進むと、川の様相も上流のものに変わってきた。
それでも登り坂は少なく気持ちよく自転車走行を楽しんでいると、新城市から鳳来町へ。
長篠城址の近くを、赤引温泉を通り過ぎ、国道151号線に再合流すると、湯谷温泉だ!
もう来ちゃったのか!?時間はまだお昼前。温泉地は思っていたよりも小規模で、
本で紹介されている有名な宿はあるものの、全体的には寂れているように感じられた。
ここで折り返して帰ってしまうのはあまりにもつまらない。ようし、先に行ってやろう。
予定変更!行けるところまで行ってやる!その前に、飲食店で昼食を。
焼き鳥丼定食に五平餅!腹いっぱい。

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上流っていい。         焼き鳥丼に五平餅うまかったー。

のんびり昼食を終えると、午後12時40分ごろ、先に進むため出発。
じつは今回、やる気のなさもあって、湯谷温泉あたりまでの地図しか持ってきていない。
ということは、ここから少し先の地理はあまりわからないわけで、
どの町を通ってどこに行けるのかもよくわからん!ただ、国道151号線の標識には
『飯田120km』とあったりするので、このままこの道を行けば、長野県の飯田市に
たどり着くことだけはわかった。飯田か…残りの距離、「長野県」という響き、
ここからの目的地としては申し分なかろうて。よーし、行ってやるー!

と、意気込んで再出発はしたものの、ここからが今回の過酷な旅のはじまりだった。
だらだらと登り坂が続く続く。なんとなく予想はしていたけれど、山道ばかりじゃん!
しかしここは、軽いギアにして黙々とペダルを回転させ登る。時折、渓谷にかかる
「○○淵」という橋を渡る。はるか谷底に川。けっこう怖い。さらに行けども行けども、
目の前に立ちはだかる山、山、山。するとトンネルが現れる。トンネルを抜けると
下りに差しかかる。でも、下り坂はスピードが出る分あっという間だし、
帰りは逆に登り坂になるんだよなぁと思うとそんなには喜べない。
そしてまた登り坂へ、振り出しに戻る。着実に進んではいるので、
振り出しには戻っていないのだけれど、こんなパターンの連続!

登り坂は本当にキツい。とにかく消耗するので、水分補給は欠かさず行う。
というよりは、冷たいものを飲みたくてしようがなくなる。
自販機を見つけては、ゴクゴクゴク…ウマーイ!最高!自販機もない山道も続くので、
自転車に装着してあるペットボトル水もゴクゴク。ウマイ!
山道続きで、持ってきたペットボトル水はほどなくしてなくなった。
そしてあまりに厳しい登り坂は、自転車を引いて歩くことも。
休憩になるし、少しではあるけれど進んでもいるわけで。この先まだ長い。体力温存。

こんなにキツい山道ではあるけれど、いいこともあった。それは、やっぱり下り坂!
これほど気持ちのいいものはない。ペダルをこがなくても進む…どんなに楽なことか!
そして、ちょっとペダルを踏み込んで飛ばせば、時速50km以上!爽快!
山道の下り坂ではあまり飛ばすと危険ですが。実際、道幅の狭いところで
向かいから大型トラックが出てきたことがあって冷や汗かいた。
それから景色。山、川、農村、山あいの景観は、どれも素晴らしい。
あとは空気感。気温も平地よりも低くて、空気がおいしく感じられる。
沢から流れ吹く冷たい風。気持ちいい〜。クルマも少ない。自然の音色が感じられる。
ウグイスのさえずりも聞こえてきて、少し、和めます。

そんなわけで、とにかく長く感じられたが国道151号線、別所街道の山道を突き進み、
鳳来町を抜けたあと東栄町、豊根村と山を越え、茶臼山をかすめる形で新野峠に至り、
ついに長野県、阿南町に突入!標識の標高表示は1060m。キツいわけだよ!

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山の景色。           長野県阿南町へ。天狗?

ここからは、山を下る長い坂道。最高ーッ!
調子に乗って、湧き水で濡れた急カーブの路面で後輪がドリフトこいて焦ったりしつつ、
山道から抜け出ると、まっすぐなゆるい下りの一本道。その先には町が見える。
峠も越えたし、ここから先はもう登り坂もないのか〜と、少しほっとしたものの、
よく見るとさらに向こうには、また山が見える。やっぱりいやな予感…。
でも今はこの気持ちのいい道を進むのみ!

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まっすぐ一本道。これでも国道。

阿南町の道の駅を通り過ぎ、しばらく進むと、また登り坂になってきた。
さらに進むと、やっぱりか…もう完全に山道!それでもこの山道を乗り越えると下り坂。
標識は同じ151号線だけれど、遠州街道となっていた。もう登りはないか。
いや、先に山が見える。案の定、またまた登り坂に入る。

前半は下り、後半は登りといった構図で、阿南町の道のりもとても長く感じられた。
登り坂の先に、いつものごとくトンネル。短いそのトンネルを抜けると、
顔写真入りの標識が。『ようこそ下條村へ 峰竜太のふるさとです』…ププ。
噂には聞いていたけれど、これか〜!そしてここがあの下條村かあ!
思いがけず峰竜太のふるさと下條村に出くわし、少し笑えた。

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そうですここが峰竜太のふるさとです。

峰竜太の、いや、下條村の標識を越えるとそこからは下り坂だったが、
まだ向こうに山が見える。はいはい、覚悟はしていましたよ、また登り坂。
ふう、あきれてものもいえないというか疲れてものがいえない感じではあったけれど、
ここまで来てしまったらもう、意地でも飯田市街までは行かねば!

トンネルを抜け、道の駅を通り過ぎ、『お気をつけて』と下條村を出るときも
峰竜太の標識があり別れを告げると、午後6時ごろ、予測通りの範疇か、
ついに、飯田市に到来!来たか〜。でも市街はまだ先か。もう少し!

しばらく下り坂を進むと『天竜峡』の標識が。天竜峡は、名古屋から飯田経由のバスと
JR飯田線を乗り継いで前に来たことがある、ちょっと地味な観光地。
来たことあるところに泊まって帰るのもどうかと思い、ここはスルー。

市街はまだか。飯田市内の道のりも長く感じられる。もう夕方、日も落ちかけている。
走行中、左側にコンビニを確認、そのまま直進しようとした、その時!
車道と歩道との微妙な段差にタイヤをとられてバランスを失い、瞬間、
自分のことよりも「自転車大丈夫か?!」と思い、手を着き足を着き受け身を取るも
コンビニ前の歩道付近で落車!仰向けになって背負ったザックがクッションとなり、
頭を軽く地面にコンと打った。大の字、天を仰ぐ。自転車は自分の上に。
すぐに起き上がり自転車を見る。自分も自転車も、軽い擦り傷とチェーン外れ以外は
問題なさそうだけれど、「やってもうた〜」と思わず声を出してしまった。

コンビニ駐車場の隅に自転車を持っていき、チェーン外れを直す。
手が油で汚れてしまったので、コンビニに入り手を洗う。ついでにドリンク購入。
同じ白色のアスファルトでわかりにくい車道と歩道の段差と、夕刻で視界が悪かったのが
落車の原因か。危なかった〜。クルマがガンガン走っているところで落車なんてしたら、
本当に危ないな。気をつけよう。気を落ち着かせてオレンジジュースでエネルギー補給。
それにしても、市街はまだなのか。少し不安に思い、駐車場で人に道を聞いてみた。
が、説明はよくわからなかった。女の人に聞いたのが間違いだったかな。
でも少なくとも、このまま151号線を行けばいいことだけはわかった。
ということで、忘れもしない、セブンイレブン飯田松尾代田店をあとにした。

さらに薄暗くなってきたので、先を急ぐ。サングラスは視界が悪くなるので外した。
コンタクト目にはホコリや塵防止のため必需品なのだが(ハードコンタクト装用時に
ホコリや塵が目に入るとものすごく痛いのです)…。ここからしばらく進み
急な坂道を下り切ると、また登り坂!どうなってんの151号線は。
山を越えて村、また山を越えて村、この繰り返しじゃん!
自転車にはまったく不向きだな〜。それでも、この道を行くしかない。

かなり暗くなってきた。もう夜。そろそろ折り返し地点、宿泊先を決めなくては…。
黙々とペダルをこぐ。すると道路左側の高台に『天空の城』という看板が!
あ、雑誌で見たことがあるような…飯田市街でもいい宿泊施設だ。
もうここにすんなり入りたかったけれど、この時間では食事は出ない。
このあたりにコンビニや飲食店はなさそうだし、やはり市街、
こうなったらJR飯田駅まで行って、おみやげも買っておこう!

しばらくゆるい坂道を登り進むと、ようやく、見たことのあるリンゴ並木が。
飯田市街地に出た。ところが、地図もなく、夜間、駅がどこなのかわからず、迷った!
仕方なく、交差点で信号待ちのおばさんに道を聞いてみた。
すると、説明はよくわからなかったものの、「これ持っていって」と、
まんじゅうを手渡された。「え?いいんですか?ありがとうございます〜」。
お礼をいって別れ、手探りで駅へと向かう…さ迷いさ迷い、
ようやく、JR飯田駅に着くことができた〜。

飯田駅に来たものの、あてにしていた売店はもう閉まっていて、観光案内所もなさそう。
しようがない。このあたりのコンビニで簡単に夕食を買って、
宿泊しようと思い市街を巡ったものの、これといった旅館、ホテルがない。
やはり、通り過ぎてきた『天空の城』かなあと思い始めたのだがしかし!
また迷った…。夜間は本当に道に迷いやすくなる。これ自分の弱点だな…。
駅前の道を行ったり来たりしてもどうにもわからなかったので、
また人に道を聞いてみた。おじいさんだったので少し頼りなく感じたけれど、
そのおじいさんのいうことを信じて、その方向に走り出した。

しばらく進むうちに、見たことのある光景に気がついた。こっちだ!間違いない!
おじいさんのいっていたことは本当だった!ありがとうジッチャン〜。
そしてようやく、『天空の城・飯田城趾三宜亭本館』にたどり着いたのであった〜。

建物に近づくと、カラオケの騒がしい音が聞こえてきた。適当なところに自転車を置き、
入口からフロントへ。部屋はツインだけれど空きがあって、午後8時半ごろ、
無事チェックインすることができた〜。風呂は天然温泉で朝食は出る。
少し安くしてもらって9千円ちょっと。ま、いいでしょう。
売店もあるらしく、おみやげは明日ここで買っていくことにした。

部屋に入り、すぐにウェアを脱ぎ浴衣に着替えた。はあ〜、リラックス〜。
お茶とお茶請け菓子をいただく。おばさんにもらったまんじゅうのことを思い出し、
よく見ると、飯田銘菓かと思いきや、なぜか包装にアホの坂田のイラストが入っていた。
困惑(笑)。でもいい思い出になるだろう、これはおみやげとして持って帰るぞ〜。
テレビを見つつ、コンビニで買った夕食を食べる。置いてあったパンフレットを見ると、
飯田市街の簡単な地図が載っていた。こうだったかー!納得。
地図さえあればすぐにわかったものを〜。

そうこうしているうちに午後11時。そろそろ風呂にでも入りましょうか。
パンフレットによれば、湯は天然温泉で、飯田城温泉というらしい。
聞いたことはないが、平成7年地下1300mから出湯とあるから、
無理やり掘り出したんだろう(笑)。実際、入ってみると、
湯はトゥルっと若干のぬめりがあり確かに温泉。ぷはぁ〜、極楽じゃ〜。

ひとっ風呂浴びて部屋に戻り、少しテレビを見てから、日付も変わって午前12時、
コンタクトレンズを外して歯を磨く。今日は早めに寝ることにした。
明日は朝食を7時半に頼んであって、その前に朝風呂にも入りたいし、
いつもよりも早起きだ。疲れも取っておきたい。それに今日の難行を考えると、
早めに出るに越したことはない。腕時計のアラームをセットして、就寝。


ピピッ…5月23日(金)、朝。午前6時30分ピッタリ、アラームで目が覚めた。
おもむろにテレビを見る。画面左上の天気予報を見ると、南信(南信州ということか)、
晴れのち、雷雨マーク!確率50%!ヤバい…これはますます、早めに出発しなければ。

それはさておき、ここは朝風呂へ行っておかないと。
露天風呂に入ると、お、今は晴れている。露天風呂、眺めがいいねえ。極楽極楽。
朝風呂もほどほどに、部屋に戻ってウェアに着替え、朝食の場所へ。
ほかの宿泊客を見ると、オッサンやジッチャンバッチャンばかりだった。
そうだろうよ、こんな観光地でもないところでしかも平日だったら。
朝食は、いわゆる旅館の朝食といった感じでなかなかよかったです。

朝食を済ませて部屋で身支度を整え、部屋を出ると売店へ。おみやげを見る。
迷って迷って、クッキーやチョコレート、馬肉やいなごの缶詰をチョイス。
配送しようかと思ったけれど、明日にも渡したいからな、持って帰ることにした。
ザックは荷物でいっぱいになり、かなり重くなった。大丈夫か?

フロントにて会計、チェックアウト。そうだ、もっと楽な道はないものか。
聞いてみることにした。愛知県の岡崎方面に戻りたいことを告げると、
フロントの人いわく、「国道151号線よりも名古屋・豊田方面に向かう
153号線のほうがよいのでは」ということだった。地図がないのでなんとも
確認のしようがなかったけれど、この人のいうことを信じてみようと思った。
それほどに、来た道、151号線はきつかった。旅館周辺の地図をもらい、
まずは国道153号線へ向かうことにした。旅館をあとにする。

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泊まった宿。高台にあって見晴らしよい。

午前8時40分、午後の雷雨(予報)から逃れたい一心で、帰路、出発!
地図があれば、飯田市街はすぐに把握できた。それでも少し不安に思いながら、
この道かな〜と153号線をめざして市街を走っていると、しばらくして標識で
153号線を確認できてひと安心。『名古屋120km・豊田100km』とあり、
やはり153号線のほうが家まで近そう。よっしゃ、この道を突き進むぞー!

「いい道が続いている」と旅館のフロントの人はいっていた。
しばらくは平たんな道が続いていたので、153号線で正解だったとも思えたけれど、
だらだらと長い登り坂もあったりで、ペースは上がらず。飯田市を出て、阿智村へ。
そしてこの道の向こうには、やはり山が見えた。いやな予感がした。

予感的中。長野県に出入りするには山を越えるしかないのか!
鬼の山道アタック。うねうねと登っていく道、標識には『登坂7%8%』とある。
数字を見てもよくわからないけれど、キツ過ぎる坂。降参〜。
今日はもう無理をしないことにした。急な登り坂は、自転車を引いて歩く!
ザックも重たいし、昨日以上に体力温存だ。自販機で十分にジュースで水分を補給。
まったく、こっちも山道ばっかりじゃん!

自転車なのに急な登坂は歩き作戦で、スローペースながらも、浪合村に到達。
とろとろと走り進むとようやく、『寒原峠』の標識が。標高1073m、
電光掲示板には気温17℃の表示。涼しいのはありがたいんだけれど、
登り坂でのペダリング運動はそんな涼しさをもかき消してしまうんだよな…。

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寒原峠。

峠からは下り坂。低い気温も手伝って下りは気持ちいい。
ただ、あまり急な下り坂が続くと逆に疲れる。ブレーキングにクルマに気を使い、
重くなったザックも相まって首や肩が痛くなる。それに疲れもあってか、
スピードを出すと昨日よりも手がぶれやすい。慎重に、スピードも抑え目にした。

下り坂もほどほどに、またすぐに登り坂となった。例の作戦で乗り越える。
やっとの思いで『治部坂峠・標高1163m』の標識、トンネルを抜けると平谷村へ。
下り坂を慎重に走り切ると、またすぐにだらだらと登り坂。道の駅でドリンクタイム。
そこではバイクツーリングの人たちを見かけた。バイクは楽だろうよ〜。
ただね、自転車や徒歩の自力旅でないとわからないよさもあるんだよ〜。

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治部坂峠。

まだ長野県。いつ雨に降られるかわかったもんじゃない。先を急ぐ。
またまた登り坂を行くと、赤坂峠に到達。平谷高原スキー場の施設を横目に、
平谷村から根羽村へ。ほんっとにこのへん、村ばっかりだなあ。
ここからは下り坂が多かったけれど、慎重に走り進む。

急な下り坂が続いて逆に疲れ始めてきたあたりで、よっしゃ〜!ようやく、
ようやく愛知県、稲武町へ!これで雷雨も免れたのか?153号線を川沿いに、
ゆるい下り道を行く。のどかな風景まだまだ山の中。そのうちだらだらと登り坂になり、
夏焼温泉の小さな温泉施設を通り過ぎる。坂を越えると、稲武町の中心地?に出た。

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ようやく愛知県に戻って来た〜。

中心地とはいっても、国道から少し離れたところに住宅が多く見られる程度で、
標識では商店街の表示もあったけれど確認できず、印象は“集落”だった。
ただ、国道沿いには大きな道の駅の施設があり、公共の温泉施設もあった。
人出も多い。時間は午後1時半。ここで昼食を済ませておかないと、
この先まともな飲食店がないかもしれない。そう思い、この施設群の一部なのか、
なかなか雰囲気のいいレストランで昼食をとることに。パスタランチのセットを注文。
自転車運動後のせいか、とてもおいしく感じられた。

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自転車旅はメシがうまい!!

さあ、昼食も済んだことだし、もう少し、がんばって行きますか。
しかし出鼻をくじくように、だらだらと登りの坂道が続いた。
途中、周辺地図の標識があったので見ると、この先に峠のトンネルがあって、
そこを越えると足助町ということらしい。この地味な登り坂はそこまでの辛抱か。
長く感じられたもののしばらく走り進むと、現れた「伊勢神トンネル」。ここが峠か。

しかし、この伊勢神トンネル、これまでいくつものトンネルを通り抜けてきたけれど、
このトンネルが一番凶悪だった!歩行者や自転車が回避できるスペースはほぼなく、
車道の幅も狭い。対向車線とこちら側の車線でクルマがすれ違ったら、
もう自転車の逃げるスペースはない。おまけに1km以上続く長さ。
これはもう、自転車を引いて端を歩いていくよりどうしようもない。
テールライトを点滅させて、トンネル内の左端いっぱいを、
恐る恐る歩いてやり過ごしたのだった。

というように、今回はトンネルが多かったので、日中でもトンネル内では安全のため、
テールライトやヘッドライトを使うことが多かった。それが当たり前かな?
特に今回から装備したテールライト、着けておいてよかったと思う!

悪の伊勢神トンネルを抜けると、下り道が待っていた。そしてトンネルの手前から
すでに足助町に入っていたようだった。足助町といえば紅葉で有名な香嵐渓。
地図のない自分には、あの香嵐渓にたどり着くのはちょっと思いがけなかった。
香嵐渓へは豊田市から自転車で来たこともあるので、あと少しという思いが強まった。
道すがら、ドライブインの喫茶店名が『紅葉』だったりする。
だんだんと、香嵐渓に近づいてきたのが感じられた。

そしてついに、香嵐渓に到達!当然、今は紅葉の季節ではないので観光客は見かけず。
こんな季節外れに来るのは旧街道が好きな人だけだろう。そう、今まで走ってきた道、
中馬街道っていうんだよな。そういえば稲武町だったかダムの発電施設付近の道の壁に、
昔の過酷な峠越えの様子が描かれていた。当時の運輸移動の大変さに想いをはせながら、
壁画の人たちの顔が本当に苦しそうで、こちらも重たい気分になって疲れ倍増だった。

紅葉の季節ならクルマでいっぱいになる駐車場にあった自販機で、ジュースで補給。
すぐに香嵐渓をあとにする。当初の予定としては、豊田市まで行って、
そこから国道248号線に乗って岡崎市方面に向かうつもりだったのだけれど、
思いがけず香嵐渓にたどり着いたので、ここからは岡崎市に向かう別のルートがある。
香嵐渓から153号線を少し行くと、左折する道。足助街道、39号岡崎足助線。
前に豊田から自転車で香嵐渓に来たとき、帰り道はこちらの道を通って
豊田方面へ向かったっけか。というわけで、途中までは見知った道だ。

この岡崎足助線、岡崎市で国道248号線に合流するまで、穏やかに下りが続いていて、
とても走りやすかった。まさに山から街に下りていく感じ。
豊田市に入ると、山あい、徳川家康の祖、松平氏の出身地の松平郷を通り抜けていく。
そして岡崎市へ。首が痛い、肩が痛い、腰が痛いとうような疲労はあったものの、
比較的楽に岡崎市まで到達することができた。

地元といってもいい岡崎ではあるけれど、まだここは岡崎市の端。
岡崎まで来たら家までスグという固定観念もあって、ここからが意外と長く感じられた。
39号線を道なりに進み、やっと国道248号線に合流。このままこの道を行けばOK。
しかしここからも長く感じられる。今までの道に比べて道は複数車線あって広いけれど、
とにかくクルマの交通量が多い。景色も空気も悪い。車道や歩道内の自転車道を行く。

ようやく、国道1号線との交差点、4日前に雨宿りした地点を通過。
ペースは速くはない。そうだ、このまま行けば、行きつけの自転車屋が近い。
転倒したし、一度自転車を見てもらって今回の旅を終えよう。そう思い、少し寄り道。
自転車屋では待たされたものの、自転車を見てもらい調整完了。
ホイールの振れ以外は特に問題もなく、これでひと安心。

さあ、家に帰るかー。ここからは完全に知った道。焦らずのんびりと、家路を行く。
248号線から離脱、県道へ。刻は夕方から夜へ、かなり薄暗くなってきた。
田んぼの真ん中を突っ切るアスファルトの道を走り抜け、自宅のある集落へ。
そしてついに、午後7時半、自宅に到着!ゴールだ〜!というような感慨は
あまりなかったものの、少し、ほっとした。すぐにウェアを脱ぎ捨てて、
冷蔵庫にあったジュースをがぶ飲み!ゴクゴクゴクゴク…ンマーイ!!
シャワーを浴びて汗を流す。ぷはぁ〜、リラックス〜。

ということで、今回は1泊2日だったけれど、やっぱり自転車旅はいいもんですねぇ。
長い道のりと、この達成感がたまらんのですよ、スロートラベルは。
また自転車でどこか遠く、行くしかないなー!

そしておまけ。今回からの秘密兵器、サイクルコンピュータ!そのデータ結果は?!
まずは1日目、走行距離159.54km、走行時間8.48.44h、平均速度時速18.1km、
最高速度時速53.6km。2日目、走行距離129.87km、走行時間7.47.43h、
平均速度時速16.6km、最高速度時速44.3kmでした〜。
いくら山道ばかりだったとはいっても、遅すぎるでしょ〜。
ま、自転車を引いて歩いていた分も入っているし、素人だし、しようがないか〜。
2日目の疲労とビビりっぷりも見てとれる。それからなんといっても、
帰りの道のほうが距離が断然近い!旅館の人のいうことを聞いてよかった。
同時に自分の無計画さ加減も思い知らされた。まぁ、のんびりゆっくり、
時間をかけて遠くに行く、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)、
スロー旅を実践できたっつうことか!うまくまとまったところで、終わり!




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