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奥飛騨秘湯の宿めぐり自転車付き! [スロー旅]

2004年の旅日記を再編して掲載しています。


『奥飛騨秘湯の宿めぐり自転車付き!』の巻

はーい、またまた連休取りまして、スロー旅のはじまりですよ〜。
参加者は毎度おなじみ自分とKさん。2004年10月4日(月)からの5日間で、
今回は前回の予告?にもありましたとおり、若干“スタンプ帳”に取り憑かれ、
そう、奥飛騨へ行きましたとさー!

というわけで、前回の旅で発見した「日本秘湯を守る会」の宿、そしてスタンプ帳。
そこに加盟する宿はことごとく、自分たちの好みのストライクゾーンど真ん中!
に思えまして、しかも「スタンプを10コ集めたら泊まった好きな宿にご招待」って、
そんな特典もあったらもう“秘湯の宿”を選ばずにはいられないでしょう!
そこで、今まで自転車旅の構想にはあったものの、まだ行ったことのなかった
奥飛騨温泉郷に着目。そこにも秘湯の宿が何件かあるということで、
もはや宿本位で、この旅の企画が決定したのであった〜。

しかし、そうはうまくいかず。10月の奥飛騨は紅葉シーズン、考えが甘かった。
平日でも人気宿は予約がとれません!5日間の中で泊まる場所と日にちを変更、
ルートを考え直す。電話予約の問い合わせも粘って粘って、
なんとか4泊のうち3つ、“秘湯の宿”を確保!

そんな感じで計画は進み、電車の切符も購入。名古屋から高山へ行くなら
定番の特急列車「ワイドビューひだ」を差し置いて、「鉄道の日記念きっぷ」で、
前日からの“前乗り”で、普通列車に乗ってゆくぞー!帰りも鈍行!スロートラベル〜!
ちなみに鉄道の日記念きっぷとは、“秋のミニ青春18きっぷ”みたいなものです。
JR鈍行列車1日乗り放題が3回分。18きっぷよりも1回あたりの料金は割高だけれど、
秋は18きっぷが発売されないから、これが代役として使われているようです。

さてさて、今回もモチロン折りたたみ自転車持参っすよ〜。
荷物はいつもの旅の持ち物をヒップバッグとサドルバッグに。準備OK!


連休前日の10月3日(日)は普通に仕事があるため、荷物と折りたたみ自転車を持って
電車で名古屋へ出勤。今回は寝台列車ではないけれど、“前乗り”のワクワク感と、
当日の時間を長く使える利点は捨てがたく、仕事あがりで電車に乗り込んで出発!
岐阜駅で高山本線、高山まで行ける鈍行の最終列車に乗り換えて、のんびりガタゴト、
名古屋駅で急いで買った駅弁をほおばったりしつつ、電車に揺られ運ばれてゆきます。
高山線は渓流沿いを走っていて景色がいいんだけれど、夜なので当然、
外は真っ暗、何も見えず。下呂は街の灯が多かったか。

0時ちょっと過ぎ、JR高山駅着。ここで失敗!18きっぷとか乗り放題の乗車券って、
0時を過ぎちゃうとそこからの運賃が別にかかってしまうんですね!
今このときまで勘違いしていて、1〜2区間の運賃をちょっと損することに。

今日は朝から天気はよくなかったんだけれど、駅から出てもやはりまだ雨が降っている。
この日まで天気予報とにらめっこしながら自転車持参を決定しただけに、
明日からは雨は降らないでほしいところ。
雨天では自転車行程をあきらめざるを得ないんですよねぇ…。

さて、前乗り計画なので、駅前のシティホテルを予約済み。
チェックインしてシャワー浴びて、今日はもう寝るだけ。
明日の朝、雨が上がっていることを願いつつ、眠りにつく。


そして4日(月)。早めに出るつもりだったけれど、なかなかベッドから出られず。
自分にムチ打って身支度整えチェックアウト、旅のはじまりだーっと、外に出てみると、
やっぱり高山、冷えますねぇ。空はどんより曇ってはいるけれど、雨は降ってない。
予報通りなら、今日は雨は降らないはず!ホテルの下のコンビニでおにぎり&豚汁で
朝食を済ませたなら、自転車を組んで、さあ出発だー!

高山は朝から観光の人たちが見られます。朝市があるからねぇ。外国人もちらほら。
「飛騨の小京都」といわれるくらいの古い街並みが魅力的なのでしょう。
時間はすでに午前10時。もっと早く出発するはずだったのになぁ。
高山の観光地は気になりながらも、素通り。国道158号線を東へ、高山市街を抜けて、
今日は奥飛騨上宝村の平湯までの自転車行程。平湯まで行ったら行ったで、
有名な上高地へも行きたいし、宿にもたどり着かないといけないという予定。
出発時間が遅いだけに、そこまでできるのかが早くも心配です…。

158号線は細い道もあれば広い道もあり。高山から平湯へと観光地を結ぶ道なので、
クルマの交通量はそこそこ多い。大型トラックやバスの排気ガスが目に気管支にツライ!
クルマ嫌いだ〜もう。そしてもちろん、どんどん標高の高いほうへと
向かってゆくのですよねぇ〜。地味〜に、登り坂が続く。

高山市から、丹生川村へ。次第に景色は田舎へと移り変わってゆく。
やっぱり田舎道はいいですな〜自転車旅サイコ〜。遠くに見えた手づくり豆腐の店が
気になったり、だんだんと山あいに入れば、道端のどんぐりが気になったり。

そんな道すがら、前方向かいからクルマ、その後ろからバイクが3台、
すごいスピードでクルマを追い抜いて、危ないな〜と思ったら!
バイクが1台クルマに接触!!バイクはバランスを崩して倒れ、
ライダーもろともアスファルトを滑走し、止まった。ライダー起き上がれない。
クルマからはおじさんおばさん夫婦が降りてきて、たぶん救急車を呼んでいる。
これは紛れもなく交通事故、危ないっす!クルマ、怖いっす!

冷たいようだけれど、そのときも今でも、あきらかにバイクのほうが悪いし、
自業自得だと思った。むしろ、たぶん旅の途中であったのだろうクルマの夫婦は
足止めされることになって、いい迷惑でしょう。クルマもバイクも、
ぶつかったら壊れるし人は死傷するんだから、もうちょっと責任持って
運転してくれないとねぇ。もちろんそれは自転車であっても。

う〜む、事故ってコワいな〜。気を取り直して自転車をこぎ進む。
いいかげん、山道っぽくなってきた。坂道もキツさを増してゆく。お腹も減ってきた。
そんななか、喫茶店風の店を発見。当初は平湯でお昼をと考えていたのだけれど、
このあたりだとまだ平湯まで5分の3くらいの地点。少し会議…
「これを逃したら当分飲食店はないかもしれない」、ということで決定〜。
ここで昼食とします!『コーヒーハウスパロット』というこの喫茶店、
名物だというトマトカレーがおいしかった。水もわき水で、よかったです。

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コーヒーハウスパロット。わき水汲めます。

よし、メシも食ったし、もうひとがんばり登り坂を進むぞー。
と、すぐに広い駐車場のドライブインに出くわす。
みやげもの屋もあるし、お昼ここでもよかったな〜と思いつつも、通り過ぎる。

重苦しいペースで坂を登っていくうちに、だんだんと霧っぽくなってきた。
スキー場のレストハウスなどの施設付近に到達したころには、もうかなりの霧深さ。
ちょっと、おもしろくなってきた。「口開けていくと水分補給できる〜アー」って、
若干テンション壊れ気味。

霧の中を進み進み、ようやく、「平湯トンネル」にたどり着いた〜。
長さは2430m、たぶん、長くてつまらないと思う。
最初は、「トンネルはつまらないから旧道登って峠越えしよかー」という計画も
あったけれど、「やっぱりトンネルで山を突き抜けたほうが楽だよなー」と、
時間も余裕がないこともあって、この平湯トンネル前まで来たわけです。

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平湯トンネルに臨む。

さあ、トンネルに、突入〜。トンネル内はつまらないというよりは、つらかった!
道は広くないから、暗い中車道を進むのは危ない。仕方なく歩道を進むのだけれど、
歩道は狭くて、しかも壁から湧き水が出ていたりして水たまりや泥たまりが絶えない。
前方もよく見えないのでスピードは出せない。そんな道が2km以上続くんだから、
とにかくツライという以外にはなかった。ここを帰りも通るのかと思うと、
ちょっと考えてしまうのであった〜。

前方に光、やった、ようやくトンネルを抜けると、上宝村。さ、寒い。上着を着込む。
これで峠は越えた!あとは下り道のみ。まだまだ霧深いけれど、一気に坂を下る!
ひゃー、寒いー!鼻水たれる、手は冷たくなる。でもすぐに平湯に到着〜!

早速、平湯バスターミナルへ。ここからは自転車を折りたたんで、
バスであの上高地へと行く予定だったんだけれど、時間はもう午後3時、
しかも天候も曇っていて、あまりよろしくない。ということで、
バスには乗るけれど途中で降りて、今日泊まる宿にもう入ることにした。

ターミナルで飲み物を買い込み、上高地行きのバスに乗る。
「安房トンネル」を通り抜ける。ここも長ーいトンネルなんだけれど、クルマだとスグ。
ちなみにこの安房トンネル、自転車通行できません。差別だー!
そして、上高地への分岐点である「釜トンネル」の手前、中の湯バス停で降りる。
そう、今日は目的の“秘湯の宿”、『中の湯温泉旅館』に泊まるので〜す。

ここから旅館まではちょっと距離があるので、バス停横の中の湯の売店から
無線で連絡してもらい、お茶とお菓子でまったりしつつ、送迎車を待つ。
そういえばバス停横に、『卜伝の湯』とある小屋があったなぁと思っていると、
湯上がりのじっちゃんが売店に入ってきて、その温泉の話になった。
どうやら、宿から送迎車でここまで来て入るのだそう。あとで来よ〜っと。わくわく。

送迎のワゴン車が来たので、乗り込んで宿へ。宿は安房峠への旧道を登った
中腹にあるのだけれど、登り坂が半端じゃない!もうまさにつづら折り。
当初は上高地までバスで行き、自転車ポタリングを楽しんで、
そこからは中の湯温泉旅館まで自転車でと思っていたので、
やめておいてよかったと、心底思った。

さてと、宿に到着。この中の湯温泉旅館は、例の“日本秘湯を守る会”の宿なんですけど、
見た目も中身も、鉄筋コンクリの近代的な旅館。安房トンネル建設の影響で、
川の付近からこの山の上に移転してきたらしく、さっきの卜伝の湯以外は
あまり秘湯っぽくはないけれど、まあ場所的には秘境かもしれない。
場所柄、登山客が多くて、天気の悪い今日も登山の格好をした人たちが多い。

今日は宿でのんびりと。川沿いの半露天洞窟風呂といった様相の、卜伝の湯も満喫。
宿の贅沢ごはんもおいしくいただいて、明日の天候が気になりつつ、過ごしました。


5日(火)。天気は、ダメだ雨!どうしようかなぁ。天気がよければ早く出て上高地へ、
あるいは自転車で安房峠を越えて今日の目的地へ、と思っていたのだけど、雨じゃなあ。
のんびり朝食をいただいて、のんびりチェックアウト。おおっと、秘湯の宿のスタンプを
押してもらうの忘れそうになった!今回はこれが目的ともいえるのに。

あーあ、雨天じゃ自転車使えませ〜ん。自転車持って、送迎車でバス停へ。
そこから平湯行きのバスを待って、平湯バスターミナルへ。

平湯に到着。みやげものを見たり、ターミナル内でだらだらと過ごす。
パン屋さんでチョコクロワッサンとコーヒーを買って、ベンチに座って作戦会議。
パンを食べながら地図を見る。クロワッサンおいしいな〜、
しかし、う〜む、これは…雨だと八方塞がりになってしまう〜。
しようがない、ちょっと早いけれど、バスでもう今日の宿に、行っちゃいますかー!

その前に、ダラダラしていたらもう11時半、お昼でも食べておこうかということで、
近くのラーメン屋に入る。『奥飛騨宝ラーメン』、ダシが効いててなかなかに
おいしゅうございました。「高山ラーメン」系のなかでも、おいしいほうだと思うよ〜。

さーて、ターミナルに戻って飲み物おやつと買い込んで、
12時半、新穂高温泉行きのバスが来た〜乗りまーす!自転車担いでバスに乗り込む。
宿に向けて出発〜。今日は自転車行程ナシ!また宿でのんびり!怠けものー!

福地温泉を経由して、赤い橋を渡り細い道を抜け、バスに揺られて40分、
深山荘前バス停で降りる。そうです、今日の宿は『深山荘』という旅館。
雨の中自転車を担いで、川にかかるつり橋を小走りで渡る。
午後2時前の早〜いチェックイン。ちなみにここは“秘湯の宿”じゃありませんが、
料金と露天風呂で決めました。このあたりの秘湯の宿は満室で予約が取れず…。

しかしながら、ここはとてもいいところでした!宿の外観も部屋もちょっと山小屋風で、
いかにも「登山客を相手にやってます」みたいな感じで昭和のニオイがするんだけれど、
露天風呂が最高!川沿いにでっかい露天風呂!まさに「野趣溢れる」といった感じで、
目の前に蒲田川、雨で増水して流れが激しかったのでそんなことしなかったけれど、
なんなら川にも入れます!貸し切り露天風呂も広〜い。露天風呂の底をかき混ぜると、
湯の花がまるで卵とじスープのごとく舞い上がる!湯の花ぬりぬり肌スベスベ!
雨はぱらついていたものの、温泉大満喫でした〜。内風呂も桧造りで趣あり。
女の人は、身に付ける水着みたいな素材のやつを貸してくれるので、
混浴露天風呂にも気兼ねなく入れるかな?

食事もおいしく、前日の宿同様、やっぱり川魚に飛騨牛は出ますね〜腹いっぱい。
食事での後ろ隣のオバチャンが「ごはん余ったから食べる〜?遠慮しなくても〜」って
進めてくれたけど、遠慮じゃないですってこちとらおかわりはもうしてますんで、
本当に満腹でいらないっつうの。

ということで、自転車にまったく乗らずして温泉三昧の贅沢三昧で、
ちょっと体がなまり気味。少し風邪っぽい感じもしていたので、
まあちょうどよかったかもなあ。それにしても怠け過ぎだ!


6日(水)。やった、雨降ってない。昨夜にはもう雨は上がっていて、
夜の露天風呂も満喫したんだけれど、今日は天気予報でも晴れマークが出ているほど、
問題なく自転車使えるでしょー!といっても、本日の行程では距離も短く、
あまり自転車をこぐ予定ではありません〜。とはいえ念のため、
午前10時前にはチェックアウト、深山荘をあとにした。

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ここの温泉最高でした。深山荘へかかる吊り橋より。

今日の目的地は、とりあえず「新穂高ロープウェイ」で展望台へ。
深山荘から475号線、川沿いの道を上流方面に進み、自転車でスグ、
新穂高温泉のロープウェイ乗り場に到着。自転車は近くの旅館の裏手、
駐車場の端っこに置いて、上ではきっと値段も高いだろうと売店でドリンクを購入、
しばし待ち時間。平日の午前中でも、けっこう人は多い。
やっぱり10月、紅葉シーズンだからか〜。

来た来た、ロープウェイに乗り込む。前方の座れる位置に着いて、出発ー。
グングン登っていく。支柱のあるところで上がって下がるんだけれど、
その感覚が気持ち悪い。4分ほどで鍋平高原駅に到着。ここまでが第1ロープウェイで、
ここを中継点として、しらかば平駅から第2ロープウェイで終点の西穂高口駅まで行く。
けっこう店もあって、ビジターセンターや温泉施設まである。
ビジターセンターで動物のはく製や昔の人の登山装備を見たりしつつ、
ふらふらと散策したあと、第2ロープウェイに乗るため少し待つ。
上まで行っちゃう前に、平湯バスターミナルにもあった『アルプスのパン屋さん』で
パンを買っておいた。上で食べよーっと。

さあ第2ロープウェイが来た〜今度のロープウェイは2階建て。運よく2階で座れた。
最初のロープウェイよりもさらにグングン登る。なんか、山、ガスってるなぁ。
天気予報は晴れでも、山の天気は変わりやすいというか、下界と違うのかもしれない。
どうも霧っぽく、青空は見えない。下に目を向ければちらほらと紅葉が見られ、
そのたびにオバサンたちの「ワァ」とか軽く歓声が上がる。登山道も見える。
楽だよな〜ロープウェイは〜。でも支柱のところのアップダウンはやっぱり気持ち悪い。
数分で、西穂高口に到着〜。

標高2156m、新穂高温泉駅で標高1117mというから、
1000mは登ってきたわけか。さすがに寒い。上着を着込む。展望所からの眺めは、
それはもう、霧で見えませーん!ガスガスガスガス(バスガス爆発風に)!!
壮大な山岳パノラマ?まったくわかりません!仕方ないので周辺の千石園地を散策。
霧深い〜。まだそれほど紅葉も広がってない。むぅ〜。前回の阿蘇山でも、
確かツツジが五分咲きだったし、あのときは本当に火山ガスでガスっていて
上に行けなかったし、どうも“山運”とでもいうのか、ツいてないなあ。

散策路を歩いていると、登山道入口を発見。横には小屋があって、登山地図や、
登山をする人が記録していく名簿があった。今まで登山の格好をした人たちは
電車の駅とかでも見かけたことはあるけれど、なんとなく、その小屋で、
初めて登山の文化に触れたような気がした。霧に景色を塞がれていたのもあって、
あまり知らない世界に興味がわいた。「ちょっとコレ行ってみようか〜」。
Kさんも賛同。日帰りだし試しに軽く、登山というよりは、
ちょっと行ってみるくらいの気持ちだったから、
名簿に名前を書くまではしなかったけれど、未体験ゾーン、ドキドキした…!

ずんずん登山道を進みゆく。まったくのタウンユースな格好だし、
道が険しくなったら戻ってこようと思っていたのだけれど、障害に感じることなく、
どんどん奥へと入っていった。途中の案内板で、この登山道のとりあえずの目的地が
『西穂山荘』だとわかったので、そこまでは行ってみようということになった。

やっぱりシーズンなのか、けっこう人とすれ違う。みんな、「こんにちは〜」って
挨拶するんですよね〜。これ、初めての体験だったけれど、いいなーと思った。
「もう少しですよ〜」とか、「あとどれくらいですか〜」とか、
知らない人との間で自然に生まれる会話が。

だんだんと道は急に。いつの間にか上着は必要ないくらいに体は温まっていて、
むしろ汗ばんできた。それでも手を使わないと進めないようなところはほとんどなく、
時折見られる紅葉に心も和む〜。そんなこんなで、勢いでとうとう西穂山荘まで来たー!
『レストハウス2385』!標高2385mってことですな。ちょっとした、達成感!

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紅葉登山。           西穂山荘。

山荘にあった登山地図を見ると、次の目標としては独標、そして西穂高岳山頂と
続くのだけれど、お昼もまだ済ませていないし、パンしか持ってないし、
ここで軽く休憩をとったら、もう戻ったほうがいいだろうということになった。
買っておいたパンを外で食べる。おいしいな〜!またチョコクロワッサン。
時々、雲の間からかすかに向こうの山が見える。でも基本的には常にガスってます!

ちょっと寒くなってきた。山荘の中に入ると暖房完備であったか〜い。
山荘ではうどんそばやラーメン、軽食はあるものの、やっぱり高いっすね〜。
あと水が貴重っぽい。物資は下からヘリコプターで運んでくるんだからねぇ。
ヘリポートもあったし。もちろん宿泊もできるけど、外にテント張ってもいいみたい。

さてと、戻りますかー。戻って遅めの昼食だ!登ってきた道を戻る。
登山地図にも表記があるとおり、登りよりも下りの所要時間のほうが短い。
でも、足への負担は下りのほうが大きい。途中、ほんの少し、雲間から青空がのぞいた。
でもほとんどは雲の中。北アルプスのまわりの山々なんて見渡せません!
それでも、色鮮やかな紅葉を目にすれば、心洗われる思い。
「こんちわーす」、「ちわーす」、「ちわー」と、
すれ違う人に挨拶を交わしながら下りゆく。なんか、登山っていいなー。

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雲が多くて山々は見渡せず。   紅葉は鮮やかでした。

西穂高口のロープウェイ乗り場に戻ってきた。こちらも相変わらずの霧の中。
ロープウェイに乗る前に、買う気もないのにみやげものを物色。
オコジョのしっぽがふあふあだあ!ロープウェイに乗ってしまえば、
スイスイと下界へと降りてゆく。鍋平高原では、なんだか割高に思えて昼食をパス。
人でいっぱいだったので足湯もパス。すぐに次のロープウェイに乗って、新穂高温泉へ。

もう午後3時前。なんだか本格的な昼食はいらないやという気分になってきて、
軽食でつなぐことにした。売店の脇にある足湯に浸かりながら、温泉卵をほおばる。
足乾かして、自転車乗って、村営駐車場の売店でカップ麺のうどんと飲み物も買って、
もう今日泊まる宿へと向かう!

天気は山とは違って日が差している。川沿いのゆるい下り道を、
自転車で気持ちよく行きまして、橋の手前、中尾高原口バス停のところで
左の登り坂へと入る。きつ〜い坂道を登り切るとすぐ、あったあった、
“秘湯の宿”の『谷旅館』に到着〜。今日はここに宿泊です。
部屋に入ってスグ、カップうどんを食べた(笑)。

ここは、なんだか豪華な“人んち”みたいな感じでした。でも決して民宿っぽくはなくて、
建物も新しいし、部屋もすっきりこぎれい。そして広い庭園に露天風呂があるみたいな。
今風に貸し切り露天風呂もあり。料理も凝っていて、洋風のものも取り入れたりして。
どうしても地域内での連泊旅の場合、この地方の名物など似通った料理が出ることが
多くなってしまうのですが、ここの料理はちょっとしたアクセントになったと思う〜。
ただ、新しいタオル借りるのに料金があったりして、そういうのは少し気になった。

夜には露天風呂から星が眺められたりして、さすが田舎だ、いい感じ。
天気予報を見ると明日も晴れそうなので、初日に頓挫した計画、上高地行きを再考!


7日(木)。晴れてます!山々も見渡せる!スタンプもらって早めにチェックアウト。
あ、ここのスタンプパソコンのプリントだ〜。しかも2人とも違うデザイン。
今風〜。そんじゃ、とりあえず平湯に向けて、出発〜。

急坂を一気に下りて、蒲田川沿いの道を下ってゆく。午前中は少し冷たく感じるけれど、
自転車で風を切って進むのは気持ちいい。栃尾温泉を通り過ぎて、目立つ赤い橋
「宝橋」を渡るとだんだんと登り坂。キツイ。新平湯温泉を通過。キツイ〜。
暑い。汗だくだー。山あり谷ありこの地方、ちょっと自転車向かないかも〜。

なんとか午前中には平湯に到着。よし、晴れてるし、バスで上高地行くぞー。
自転車は、バスターミナルの端に置かせてもらう。バス券を買おうかというそのとき、
大変なことがわかった!「お金がギリギリだ…」。これまで雨のせいでバス代が
かさんでいたからなあ〜。今日の上高地への往復バス代、宿代、そして明日、
もし高山までの帰りにバスを使うとなると〜、ホントにギリギリっす!
とりあえず、せっかくなので上高地へは行こうと決めた。
昼食は、宿の朝食でまだお腹も満たされているから、ほんの軽食で大丈夫か〜。

なにはともあれ、バスで上高地へ!安房トンネルを抜けて、中の湯バス停の
分岐点で左折、「釜トンネル」へ。ここがまた、めっちゃ狭い!暗い!危ない!
バスだからまったく問題ないけれど、当初の予定では、初日に上高地に行って、
そこから中の湯温泉旅館まで自転車で行くつもりだったわけで、これ見たら、
本当にやめておいてよかったと思う。そういえば中の湯温泉旅館に電話予約したとき、
「釜トンネルは自転車はやめたほうがいいですよ」って、いってたなあ。

上高地への道は大渋滞。道は狭いのに、観光バスでいっぱい。
マイカー規制はされているものの、観光バスがとにかく多い。終点少し手前で下車。
大正池から河童橋まで、「自然研究路」散策コースを歩いてゆく。

でもさすがに上高地は自然がいっぱい、大正池をはじめ、景色がいい!
梓川もさることながら、支流のたぶん名もない小川なども澄み切っていて、
芥川竜之介の名作『河童』のように「qua」っと河童が出そうな雰囲気。
そして雄大な山々!山がデカイ!

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梓川と山々の景色。             本当に河童が出てきそうな。

でもね、人が多いですね〜。野生のカモが、人がお菓子とかあげるもんだから、
慣れまくっていて。小さめのカモなんか、指で何か持ってるようにして差し出すと、
騙され指をくわえてきた。ダメだよ慣れ過ぎだってば〜。特に河童橋周辺は店も多く、
バスの駐車場も近くて、とにかく人が多い!これじゃ河童も出ないよ〜。
うむ、人がいないと最高ですな、上高地。閉鎖期間に徒歩で来たらいいかも。

売店でパンを1つだけ買って、河童橋から梓川を少し上流に行ったところ、
人が少ないキャンプポイント近くで、川を目の前にして少しだけ腹ごしらえ。
山々を眺めながら、しばしのんびり。雲が、山に影を落とし、右から左へと音
もなく移動してゆく。は〜、いいなぁ〜。川の瀬音だけがあたりに響き流れ、
テントを張って泊まる人なのか、川べりには読書にふける人。いいなぁ〜。

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雄大な山と青い空。

このあたりはまだ紅葉は見られなかったけれど、風は少し冷たい。
河童橋から明神池まで散策しようかとも思っていたけれど、
早めに宿に入ってのんびりしたいな〜とも思い、上高地をあとにした。

バスでまたまた、平湯のターミナルへ。自転車を回収、お金もないし、
宿でのんびり過ごすんだー!今日は、福地温泉にある有名な『湯元長座』に泊まる!!
そりゃあ、宿でのんびり過ごしたくなるというものよ〜。もちろんここは“秘湯の宿”!
でも、料金的にちょとお高いココに泊まってしまうからこそ、
お金がギリギリだということもいえます(笑)!

自転車で新平湯方面へ、国道471号線へ合流。今度は今朝平湯に来たときとは逆に、
下り道となるのでスイスイ進む。クマ牧場のあたりで福地温泉方面へと左折。
福地温泉は谷に位置している感じなので、下り坂ギューン!あっという間に、
午後4時前には、この旅最後の宿となる『湯元長座』に到着ー。

ここはもう、門構えから外観、中身も建築が素敵すぎます!“秘湯の宿”に多い
“豪農移築系”とでもいいましょうか。囲炉裏端もホンモノで煙たいけれど、いいんです!
とにかく、こういった和風の宿が好きな人には最高のところ!

時間も余裕があるので外に出て、近くの『舎湯(やどりゆ)』という、
宿泊の人のみ使える休憩所をのぞく。そこも昔ながらの造りで、
どこかの武家屋敷風建物の移築らしい。中には囲炉裏のある広間や足湯もあって、
やっぱり素敵だ〜。お茶を飲んでゆっくりくつろぐ。足湯にも浸かった。
福地温泉は、こういった雰囲気づくりを大切にしているように感じた。
朝市もあるみたいだし、いいっすねぇ〜。

宿に戻ったなら温泉三昧。露天風呂も貸し切り風呂もたくさんあるので、
温泉入り浸りだ〜。そして囲炉裏の間に敷かれた動物の毛皮にも興味津々。
風呂上がりなのにスグ煙たくなって燻製に(笑)。

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囲炉裏の間にまたもや、童じゃ、座敷童がおる。

あっという間に日は暮れて、昼はパンだけだったから…待ちに待った夕食の時間!
囲炉裏端での食事は、おいしゅうございました〜。やっぱり高いだけあって、
ワンランク違うな〜という感じ。主人の語りも味があり。

は〜極楽極楽。食後にはまた温泉に入りにいく。今度は「のくとまり手形」を使って
福地温泉内の別の宿にもらい湯。こういうのって、いいっすねぇ〜。
向かいの『元湯孫九郎』で、湯元長座とは源泉の違う(匂いが違う!)温泉を満喫。
ということで、大満足で、至福の時間は過ぎゆくのでした〜。


8日(金)。あーあ、今日でこの旅も終わり。朝風呂入って、豪華な朝食もいただいて、
身支度整えて午前10時チェックアウト。秘湯の宿のスタンプもまた1つ増えて、
これでこの旅3つ目、合計4つに。やっぱりいいところだったなあここは〜。
ただ天気はまたもや雨。ぱらついていて、入口の門のところで少し様子を見たけれど、
状況は変わりそうにない。バス停は宿のすぐ目の前にあるけれど、待ち時間もあるし、
何よりもうお金がない!それにこれくらいの雨なら、平湯までは自転車でも行けそう。

キツ過ぎる坂道を登って登って、平湯バスターミナルに到着〜。
このまま自転車で、高山まで行きたいという思いもあったけれど、
今日のこれからの天候のことと、平湯トンネルのことを考えると、
バスで帰るという選択に。お金はこれでもうぜんぜんありませーん(笑)!
クレジットカードは持っていたのですが、やっぱり田舎だからなのか
どこもカード払いができず。それも痛かった。

バスなら高山までは2時間ほど。途中、雨が本格的に降り始めて、バスでよかった〜。
高山に着いてからは、時間もあったので軽く高山観光。雨も降っているので、
自転車はバスターミナル付近の鉄柵にワイヤーロックでつなげておいた。

Kさんが銀行でお金をおろして、ランチにもありついた。
高山は何回か来たことがあるので目新しいところは特にないけれど、雨の中を歩き回る。
一応おみやげを購入。そして夕方には、普通列車に乗って、帰路に着いたのでした〜。

今回は雨が降ってしまって、雨が降ると自転車はちょっと邪魔になります。
雨でも自転車で行っちゃえばいいという意見もあるでしょうが、
雨具があると荷物が多くなるし、濡れれば自転車にもよくないし、
何より雨天走行はツライっすからねぇ。

あとは、雨で自転車に乗れなかったのもあるけれど、距離設定もやや甘めだったので、
なんとなく、不完全燃焼でした。もう少しがんばる距離にしたほうが、
達成感があっていいと思う。とはいっても、今回の坂道は山あり谷ありでキツかった。

そんななか、登山!新たな発見、登山はいい。個人的には、頂上をめざす登山よりも、
「山越えて温泉地へ」とか、「山越えたら近道」とか、山を、自然の中を歩いてゆく
トレッキング?“山歩き”に近い感覚?目的もさることながら、行程を楽しむ方向で
やっていきたいなあと、思った。これ、スロー旅っぽいですね。
頂上に行くのなんてついでのことよ〜。見た目も、登山というといかにもな格好に
なりがちですが、タウンユースのものもうまく取り入れてスタイリッシュに!
“オシャレ登山”の提唱〜。山をナメてます(笑)!!

ということで、奥飛騨温泉郷、各温泉地の距離を考えると、
そして山に思いをはせちゃいますと、自転車よりも歩き旅に向いているかもしれない!
またいつか、奥飛騨温泉郷スロー旅を決行するんなら、それでやりたいと思います!








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北九州折りたたみ自転車の旅! [スロー旅]

2004年の旅日記を再編して掲載しています。


『北九州折りたたみ自転車の旅!』の巻

さーあ、また連休取っちゃいましたよ〜スロー旅のはじまりですよ〜。
参加者は自分とKさんの2名、2004年ゴールデンウィーク明けの
5月10日(月)から5日間!今回は満を持して、憧れの彼の地へ行っちゃうよ〜!

その彼の地とは…由布院!魅惑的に響くその地名は、
紛いもなく自分の行きたいところランキングで1、2を争う、素敵であろう温泉地!
そしてそこへたどり着くまでのアプローチは、もちろん寝台列車!
「寝台列車で由布院へ」という、構想3年!?温めていたこの夢計画を、
ついに実行に移すときが来たのであります。

練りに練った計画はこう。前日夜に寝台列車に乗り込んで、
1日目は半前乗りでのんびり由布院を満喫!2日目はここも全国屈指の人気温泉地、
黒川温泉へ!3日目は阿蘇山をめざしまして、4日目は秘湯の一軒宿、壁湯温泉へ!
現地の移動手段は電車と持参の折りたたみ自転車!この地域はどこへ向かうにも、
「やまなみハイウェイ」など山間部の道を行くことになるので、
景色は抜群だと思われます!しかし、距離は短くとも山岳コース。
キツいのは覚悟〜といった感じでもあります。

ということで、前日までに、電車の切符は運賃割引と現地での乗り放題の利く
「周遊きっぷ」を、B寝台券と一緒に買っておいた。宿も人気温泉地ということもあり、
すべて予約を済ませておいた。折りたたみ自転車も点検よし。
荷物は今回からヒップバッグとサドルバッグを導入、汗ビショになりがちな背中を開放!
バッグの中身は最低限の着替えにガイド本、カメラ、身のまわり品、
自転車メンテナンス用品など、いつものとおり旅の持ち物を詰め込んだ。


そして前日、5月9日(日)。この日は普通に仕事があるため、
荷物と折りたたみ自転車を持って、電車で名古屋へ出勤。今日の天気は雨らしい。
明日は九州だけでも晴れるといいなあ。旅に半分足を突っ込んだ心持ちで
テキトーに仕事を終えて、名古屋駅にあるラーメン街で軽く夕食。
時間は余裕があったはずだったのに、売店で駅弁やおやつや飲料を買っているうちに、
あっという間に列車の出発時間が間近!重い荷物を持って駅ホームへと急ぐ。

ホームへの階段を駆け上がると、すぐにやって来た〜寝台特急「富士」!
普段は仕事帰りの電車待ちで、向かいのホームに停まっているこの寝台列車と、
ロビーカーや寝台席の窓際でドリンクを置いてくつろいでいる乗客の姿を見せられて、
うらやましく思っていたあの列車に、ついに乗ります!さっそく指定の席へ。
そして、いつもは見せつけられていた列車内のくつろぎを、
逆に向かいのホームで電車待ちしている帰宅さんたちに見せびらかしたい(笑)!
そう思い、窓際にドリンクをセッティングしているうちに、列車は動き出した。
あっという間に21時36分、出発だー。

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名古屋駅にて寝台特急富士。

前回乗った「あさかぜ」同様、今回もB寝台席。富士には同じ料金で
B寝台個室もあるのだけれど、喫煙車両しかなかったので、タバコ臭を避けるために
禁煙のB寝台にしたのです。しかし今回は、「車両の一番後ろの席で」と
指定をしておいたおかげで、向かいが壁の、気兼ねなく大きい荷物を置けたり、
おしゃべりしたりしてくつろげる席を確保できた。しかもやはり乗客はまばら。
席の指定が功を奏したのか、自分たちが乗っている車両にはほかに誰もいなかった。
つまり貸し切り状態。これはいいなあ。これからはこのやり方でいこうっと。

駅弁を食べたり、お茶を飲んだり。ダラッとくつろいでいるうちに、米原駅を通過。
ああそうだ、寝る前にコンタクトレンズを外さないとな。しかし、これが危ないんだよ。
動いているうちは車内の揺れも激しく、レンズを外す、着けるは至難の業。
「そうだ、京都でしよう」!京都駅では少し停車時間があるので、
列車が停まっているうちにコンタクトを外すことにした。京都に到着する間際、
素早く洗面台へ。「あさかぜ」より設備がいいような気がします。
すかさずコンタクト外し!無事完了〜。ついでに歯も磨いて、もう寝るだけ。

さあもう寝ておきますかあ。シーツを敷いて、“JR浴衣”に着替えまして、消灯、就寝〜。
明日は9時47分に大分に着く予定。“遠足前夜症候群”ですぐには眠れないだろうし、
朝になって明るくなったら到着時間よりも早く起きてしまいそうだけれど、
まあ前回の旅での5時台到着を思えば、のんびり寝られます。
明日になったら晴れているといいなあ。


10日(月)。ガタンゴトン…カーテンをめくり窓をのぞくと、もう外は明るく、
朝になっていた。よかった、雨は降っていなさそう。とある駅を通過。
まだ本州を出ていないか、終点よりもずいぶん手前で起床。
でも、しばらくの間は横になって、ぼけーっとする。

車内アナウンス、「下関では○○分停車します、なお、駅売店のご利用は
この駅が最後になります」とのこと。朝食が必要なら下関駅で買っておけということか。
一応、準備はしておこうか。着替え完了。コンタクトも停車中に装着しておかないと。

下関駅に到着。ホームは古びた感じですねえ。平日なので出勤風景も見られます。
のんびりコンタクトを着けて、洗顔歯磨き。あ、時間がないかな、売店行かなくちゃ!
ホームに一歩出てすぐ、車内用のスリッパのままだったことに気がついた!
右往左往しているうちに、もう出発の時間。あはは〜まあしようがない、
昨夜出発前に買っておいたパンでも食べておこう。

ガタンゴトン、ガタンゴトン…いつの間にか、関門海峡は越えたのか。
トンネルもそんなに長くなくて、このトンネルがそうだとはよくわからなかった。
たくさんの駅を通過していく。車窓を流れる駅舎は、なんだか古びたものが多い。
そしてだんだんと、田舎になっていった。古びた駅舎、田舎の路線、いいですよねえ。

中津駅に着く手前、車掌さんが、そろそろですよという感じで席をのぞきに来た。
中津駅に到着、出発。周遊きっぷの関係上、寝台列車の切符は中津駅までの表示で、
ここから先は乗り放題区間なのでゾーン券を使ったほうがいい。
周遊きっぷのゾーン券は、指定区間内で5日間、普通も特急も自由席乗り放題なのです。
これで行き帰り、電車のあるところは電車を使おうというわけで。
車掌さんが再びやって来て、過ぎちゃいましたよといわんばかりにのぞきに来たので、
「こういうきっぷの使い方してるんですよ」と説明したのでした。

さあ、もう少しで別府。別府も大きな温泉地だけれど、今回は通過するのみ。
到着した別府駅はやはり、古びた感じのたたずまい。
温泉街もどこか、昭和の栄華のあとというか、さびれた雰囲気を持っていそうに思う。
由布院と比較すると、ちょっとね。それで今回の旅では通過点となってしまったわけで。
しかし、由布院も昔は「奥別府」としか呼ばれない、日の目を浴びない時代が
あったということらしく、“昭和再発見!”みたいなリバイバルが
起こったりするといいですねえ、別府。

別府駅を出れば、次の駅はもう大分!窓の外、海がキラキラと光り輝いている。
列車がゆっくりとスピードを落としていく。ここも古びた、でも規模の大きな
ホームが見えてきた。9時47分、終点、大分駅に到着〜。
寝台列車の旅はひとまずここで終わり。寝台列車富士は、夕方出発してここから東京へ、
乗客の夢を乗せてまた帰ってゆきます。クッサ〜(笑)。

さてさて、自分たちはここで乗り換え。久大本線の普通列車で由布院まで行くのです!
折りたたまれた自転車の入ったキャリングバッグを肩に食い込ませながらも、
2両編成の小さなディーゼル列車にスムーズに乗り換え完了。
さあ、由布院へ連れてってください!9時55分、出発〜。

ゴーという振動とともに自分たちを乗せて、列車は街を抜け、だんだんと田舎、
山のほうへと進みゆきます。無人の駅に各駅停車。いいなあ単線、田舎の路線。
本数は少ないから不便なんだろうけど。そんなことを思っていると次第に雲行きが、
天気が悪くなってきた。あらら〜雲が多くなってきたな〜、由布岳見えるかな〜。

そして、ついに来た〜、由布院駅に到着!由布院だ〜。天気は曇ったままだけれど、
駅の中に足湯が!構内がアートギャラリー風だ!観光案内所でパンフレットをもらって、
外に出てみる。駅舎もモダンで素敵だ〜。曇っていて由布岳は見えないなあ。
雨が心配されつつも、さっそく折りたたみ自転車を組み上げる。
寝台列車で半前乗りで来たこともあって、午前11時からのんびりと、由布院散策、
自転車でポタリングが楽しめる!そろっとペダルを踏み込んで出発、行きますかあ!

まずは駅前通りをきょろきょろしながら走り進む。駅前にみやげもの屋はあるものの、
あとは飲食店がちらほらと。とりたてて、コレといったところはないですなあ。
そのまま、ガイド本にも載っている「湯の坪街道」へ。平日だけれどこちらは
観光らしい人たちもぽつぽつ見られる。自転車で行ったり来たり。
みやげもの屋、雑貨店、飲食店、などなどたくさん店が並んでいます。

天気は相変わらずの曇り空。由布岳は見えず、あのもやの中か。
時々ぱらぱらと雨も降ったりして、さわやかにポタリング〜というわけにもいかず。
でもまあ、ツーリング中に大雨に降られるような最悪の事態を考えれば、
今日は由布院の街を散策するだけだし、雨もたまにぽつりと降るだけだし、問題なし!

行ったり来たり、湯の坪街道を右往左往。何をしているのかといえば、
飲食店を選んでいるわけで。なかなか、コレといった決め手がない。
それに観光地、ちょっとお値段も高め。いろいろと迷った末に、
素敵な感じのレストランに入ることにした。オムライスとパスタサラダで満足。

少しの間、レストランの駐車場の木陰に自転車を置いて、
湯の坪街道のいろいろな店に入ってみる。ここも観光地だな、観光地にありそうな雑貨、
みやげものは大抵あります。“俗化”している感じが、少し残念に思った。

そして有名な金鱗湖へ。なかなかに素敵な景色だけれど、思っていたよりも小さく、
“湖”というよりは“池”といった感じ。それにこのあたりは観光客も多い。
ここでも少し、残念に思ってしまった。

さて、休憩がてら、喫茶でもたしなみましょうかということで、由布院に来る者ならば
誰しも憧れ、泊まりたいとは思うけれど、金銭面で断念せざるを得ない人も多いのでは?
という名旅館、『亀の井別荘』と『由布院玉の湯』のそれぞれの敷地内にある喫茶店、
『天井桟敷』と『ティールームニコル』をチラ見。泊まれないのならそこの施設を
少しだけでも利用したい!というのが人情ってもんです。けれど、ここすらもちょっと、
自分たちには敷居が高く感じられて、入るのをためらってしまいました。

ええ、自分ら庶民には、湯の坪街道で食べ歩きした味噌こんにゃくや「ぷりんどら」、
コロッケや大分名物だという鳥肉の天ぷら「とり天」で満足です!
それにしても、ぷりんどらはおいしかったなあ。その名のとおり、どら焼きにプリンが
挟んであるという、強引な発想にして何ゆえにこれが由布院銘菓なのか?
といった疑問もふつふつと湧いてくる、たぶん大分あたりの洋菓子メーカーの逸品!

さあ、なんだか手持ちぶさたになってしまいましたよ。
なんとなく、駅前に戻ってみることにした。おみやげを見ても、何かこう、
コレといったものがないですねえ。ちょっと由布院、期待が大き過ぎたせいか、
正直いって「こんなものか」といった感じは否めず。魅力的なショップが
たくさんあるかといえば、そうでもなく、自然がいっぱいかといえば、そうでもなく。
田舎育ちの自分には、ちょっと中途半端に思えた。

ふと駅の横に目をやると、観光辻馬車だ!馬がいて、馬車には何人か乗っている状態。
ひらめいた。馬車のあとをつけよう!しばらくすると、馬車はゆっくりと動き出した。
自分たちもゆっくりと自転車をこいでいく。パッカパッカパッカパッカ…
馬蹄がアスファルトを蹴る音が心地よく響く。それにしてものんびりだ〜。
後ろで詰まっているクルマもおかまいなし。というか、どうしようもないのか。
こちらも自転車でのんびり、風景を愉しむ。道は由布院の街の少し南、
まだ田植え前だけれど、田園地帯へ。だんだんと道は細くなって、
仏山寺の前まで来て馬車はUターンしていった。僕たちはここで馬車とお別れ。
この先に行ったら金鱗湖に出るはず。

そろそろ午後4時。予約してある宿のチェックイン時間でもあるので、
もう宿に向かうことにした。金鱗湖の東側を通り過ぎて、そこそこ交通量の多い
別府湯布院線をまたいで少し坂を上がれば、『別荘今昔庵』に到着。
ここが本日の宿泊場所でございます。

駐車場の木陰に自転車を停めて、チェックイン。この宿、母屋は築120年あまりの
元庄屋の館だったという日本建築で、古びてはいるけれど、ちょっと素敵な感じです。
部屋は一番リーズナブルな和室で、まあこんなものかといったところ。
ほかには洋室や離れの部屋もあるということなので、
うらやましいのはやまやまですが、まあ仕方ないです。

そしてここは由布院温泉。風呂はもちろん温泉で、外に出れば家族露天風呂と内湯が
それぞれ2つずつあり。しかも離れにはそれぞれ露天風呂が付いているらしい。
ここの宿泊人数と風呂数を考えると、あ、部屋数より風呂数のほうが多い。
贅沢なことですなあ。全部貸し切りで使えるので、のんびりゆったり、
気兼ねなく温泉を満喫!立地的に景色はそれほど望めないけれど、
貸し切りというのは、やっぱり贅沢なことです。

部屋に戻って窓辺で夕涼み。風呂上がり浴衣姿で、買っておいたドリンクをグビグビと。
ぷはぁ、うめぇ〜!母屋の2階にあるこの部屋から外を眺めていると、
何人か、お風呂に向かう人が中庭を通る。どうやら自分たちも含めて3、4組は
泊まっていそう。部屋、温泉、今のところそうとも思えないんだけれど、
意外と人気の宿なのかもしれない。部屋数の少なさもあってここだけは
念のため早めに予約しておいた経緯もあったので、まあよかったよかった。
外の調理場からいい匂いが漂ってきた。あ〜、腹減ったな〜。夕食が待ち遠しい。

よっしゃ夕食の時間!前のめりで食事処へ!お品書きを見ると、
メインは「豊後牛の炭火焼き」だけれど、ほかにもいっぱい、いろいろ出てきそう。
しばらくすると、出てきましたよ〜料理の数々!順番に出てくるどの料理も、
おいしかった〜。全体的にダシがおいしい。えびしんじょう最高!
川魚焼き立てでほくほく!炭火焼きも煙モクモク楽しいウマイ!しめはお茶漬け。
デザートは母屋の1階にある喫茶コーナーに移動してアイスクリーム2種、2人で4種!
至福のひととき〜。ということで、時間をかけての夕食、大満喫!
この宿、じつは食事がウリだったのか〜!?この夕食は今までで1位です!大満足!

は〜幸せじゃ〜。部屋でひと休み、ふたたび露天風呂を満喫。午後3時くらいからは
もう雨も降ってきていないし、今夜はちょっと星も見える。明日は晴れそうだな。
テレビの天気予報を気にしつつ早めの就寝へ。明日からは、ついに自転車行程が始まる!


11日(火)。早めに起床。晴れています!今日は一日晴れっぽいな。
あれが由布岳か?由布岳をバックに朝の露天風呂を満喫。着替えて準備も完了、
宿を出て散策へ。早朝、人の少ない街並みを散策したかったのです。
あッ!自転車のサドルに鳥フンが〜!フンガーッ!!

自転車でスイスイと、まずは金鱗湖へ。ああ、静かでいいですなあ。いい空気感。
いいじゃないですか〜金鱗湖。大きな魚が悠々と、小さな魚もすぐ目の前で泳いでいる。
人もほとんどおらず、早起きのジッチャンがカメラをぶら下げて散歩しているくらい。
あ、同じ宿の人発見。やっぱ早朝だな!昼は観光バスで来た人たちががやがやしていて、
興ざめだったからなあ。そりゃあ「神秘的な湖」といわれてもただの池に見えるっての。

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早朝の金鱗湖。         昨日見たよりいい感じ。

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湖畔の花なんか撮ってみたり。  自転車越しに(笑)。

そして湯の坪街道のゆるい坂を下り、由布院駅前へ。駅前もまだ人が少ない。
駅舎の前で思わず立ち止まる。あらためて見ても、モダンな建築ですなあ。
振り返れば由布岳がドン!昨日はもやでまったく見えなかったのが、今日はくっきりと。
やっぱり晴れたほうが景色はいい。昨日感じたよりも由布院がいいところに思えた。

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モダンな由布院駅の外観。    駅前通りの由布岳の姿。

あ〜腹減った腹減った。宿に戻って、待ちに待った朝食の時間。
朝食もおいしかった〜やっぱり和食はダシが決め手だな!
ダシがおいしいといろんな料理がおいしくなります!
夕食も朝食も、この宿は大満足でありました!

さてと、身支度を済ませて午前9時過ぎ、本日の目的地へと向かうため、
早めのチェックアウト。いい宿でした、今昔庵を出る。ここから先、すべて山岳コース!
目的地までの距離は短めに設定してあるつもりだけれど、念には念を、
早めに出発するに越したことはない。それで目的地に早く着いてもそれは喜ばしいこと。
さあ2日目、その目的地とは…黒川温泉!全国屈指の人気温泉地、あの黒川温泉です!
山を越え山を越え(峠を2つ越える)、あこがれの黒川温泉へ、レッツらゴー!!

ここから黒川温泉へ行くには、国道216号線(別府湯布院線)、210号線を経て
11号線(別府一の宮線)と、「やまなみハイウェイ」を行くことになる。
このやまなみハイウェイがまた、前回の「しまなみ海道」もそうだったけれど、
素晴らしく景色のいい道らしく、今回はこの道を自転車で行くこと自体も、
楽しみのひとつであったりもします!

しかしあくまでも山岳コースということで、しばらく走ると、登り坂になってきた〜。
「はぁ、はぁ」、いつ登っても坂はキツい〜。一番軽いギアでシャリシャリと
ペダルを回転させて、地道に登り坂を進む。Kさんはこのコツを掴んだらしく、
前回の旅よりも自転車を降りることが少なくなった。

この登り坂、水分峠までは続くはず。ただただ地道に登り進む。峠越えのときだけは、
天気がいいのが恨めしい。体が熱くなってもう汗だく。かといって雨はもっと嫌いだ。
太陽が隠れているが青空は見られるくらいで、軽く追い風、
自転車で行くならそんな天候がいい。人はわがまま(笑)。

どこからともなく、「ホケキョ」とウグイスの鳴き声が。どこでもそうなのか、
季節にもよるとは思うけれど、標高が上がってくると聞こえてくるよねえ。
歩きや自転車だとそれが実感できて、登り坂でキツいなか、少しだけ和みます。
思わずつられて、「ホケキョ!」、「ケキョケキョケキョケキョ」とシャウト。

ようやくトンネルを抜けて、標高707mの水分峠を通過。
うわぁ、やっぱり山岳コースは景色がいいなあ。まさに“やまなみ”。
山の高みに来てしまえば見晴らしは最高。街中の平たんな道は楽だけれど、
こうはいきません。そして少しの間、下り坂を堪能。サイコー!風が気持ちいいー!
大分県の湯布院町から九重町へ。かと思ったら道はすぐに湯布院町へ。

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いい景色が広がって。

そんな気持ちのいい下り坂もすぐに終焉を迎え、予想通り、道はまた登り坂が
多くなっていった。そう、わかってはいるんです、この先やまなみハイウェイ、
展望台のある朝日台まではだらだらと登り坂が続くってことは!

それでも木々の中、気持ちよく自転車を走らせる。しばらく進むと、道の左下に湖か?
池が見えてきた。湖畔にはホテルらしい建物もある。ここで地図を確認。
たぶんこの池が山下池か。このまま道を進めばもうすぐ、また湯布院町から九重町へ。
その先は崩平山を回り込むように、朝日台へと道が続く。

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湖畔のホテルなんていいですね。

まあ地図で確認するまでもなく、ほぼ一本道なのでこのまま進めばいいわけで、
自分たちは自転車をこいで、景色を愉しみながら進むのみ。登り坂で汗はかいたけれど、
ギリギリ午前中、12時前には朝日台に到着することができた。
ここまで来たらあと半分といったところか。時間を考えても、特に問題はない。
ここで昼食をと思ったものの、レストランのおすすめメニューが炭火焼きで、
昨夜食べたばかりだったのもあって、ここはパスすることにした。

さすがに展望台があるというだけあって、展望台からでなくとも、
ここからはこの先に広がる道や山を見通すことができた。道はすーっと一本伸びていて、
遠くには山々が連なっている。山からは煙が。火山か!ここから少し坂を下ると、
しばらくは高原のいい道が続くはず。景色も最高だし、いいランチまでがんばるぞー!

少し走り進むと、出たーッ!朝日台すぐ近くの休憩所で、脱力キャラに遭遇!
地方でよく出没する著作権ギリギリキャラだー!その奥のほうには、
「ここで写真撮ってください!」といわんばかりの見晴らしのいい場所もあって、
素敵な記念撮影用ブランコも。もちろん景色も素晴らしく。う〜んやまなみ最高〜。

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その名も「環境ほごえもん」。  見晴らしいい景色。

しばらく進んだ途中、右折して寄り道までして行ったのに、ガイド本を見て
候補だった飲食店は休み。数少ない周りの店も休みばかり。火曜は休業日なのか〜。
お腹は空いてきたけれど、仕方がないので先をめざす。

このあたりを飯田高原というのか。道はまっすぐ一本道となった。『長者原』の石標。
気持ちいい道だあー。自転車で風を切って走り進む。だんだんと道は右にカーブ、
橋を渡り川を越えると急な登り坂になっていった。左上にホテルらしき建物が。
たぶんあれが九重ハイランドホテルで長者原温泉で、
その先には長者原ビジターセンターがあって、
もうすぐ飲食店にもありつけるかもしれないぞーがんばるぞ〜。

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まっすぐ一本道。        本当に気持ちのいい道。

道を九重ハイランドホテル近くまで登ってくると、そこにもう休憩所があった。
『長者の茶屋場』。駐車場にはクルマも何台か停まっていて、期待できそうだったので
ここで昼食をとることに決定!午後1時過ぎか、ようやくランチだ〜。
そうそう、由布院でも『名物だんご汁』という看板を目にしたけれど、
ここでいただくことにした。Kさんがだんご汁定食、自分は鳥丼を頼んで、
取っ換えて両方味わう作戦。外の席で待つ。気持ちいい空気感。景色が素晴らしい。
山の斜面を人が歩いている。すぐ横にあった人工の小川にはコイやメダカが泳いでいる。
のどかだなあ。そしてやって来ました〜だんご汁&鳥丼!だんご汁はコレ、
丸い団子が入っているわけではなく、きしめんよりもっとぶっとい感じの、
でも団子の粉で作られたものなんですね。いただきます!うんめ〜!!
汗をかいてきたせいか、ダシの効いたしょっぱいものがとてもおいしく感じられた。
Kさんだんご汁、汁まで飲み干して完食。

さあ、ここから先は登り坂ばかりのはず。なぜなら、自分たちにとっては今日2回目の、
峠越えだから!標高1330mで水分峠よりもキツいであろう、
牧ノ戸峠が立ちはだかっている!しかし、少しの間はまっすぐないい道が続いた。
その先では山が煙を噴いている。久住山。だんだんと近づいてきた。
この時点でまっすぐな道の先だった長者原ビジターセンターを通過。
ここは登山口にもなっているせいか、「長者原自然研究路」を歩いている人も多い。

ここから先だった。だんだんと登り坂がキツくなってきた。完全に、峠越えモード、
山岳アタック。時々木陰の中の自然研究路に入って気分転換を試みるものの、
階段が現れ自転車を担ぐハメに。またすぐ車道に戻る。寒の地獄温泉、星生温泉と通過、
牧ノ戸温泉ホテルあたりに差し掛かると、かなり硫黄臭くなってきた。
Kさんぶっこいたなあ!いや、温泉の匂いだ!

ますます坂はキツくなってくる。しかしこの峠を越えれば、あとはもう下りばかりで
黒川温泉までは時間の問題、ペダルをこぐことなくスイーっと行けるはず!
じりじりと坂道を登り進んで、午後3時過ぎ、ついに牧ノ戸峠に到達〜!
標高1330m!ここも登山口になっていて、それらしき格好の人が多かった。
噴煙を上げている久住山が、すぐ近くに迫っていた。少し登ってみたく思った。

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『牧ノ戸峠』の石標にて。

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噴煙上がる久住山。

自販機で買った缶ジュースがすぐにカラになった。水分補給完了!黒川温泉に向けて、
下り坂へ突入ー!ここからの下りはすごかった。まああれだけ登ってきたんだから、
それだけ下るのは当たり前か。ちょっとスピードが出すぎてビビる。車輪が振れる。
けっこうなつづら折りの道で、急カーブも多い。フルブレーキでも止まらん〜
ブロンプトンめ〜!気づけばKさんはどんどん先へ。ホイールサイズの違いなのか〜。
どちらも折りたたみの小径自転車だけれど、自分のよりもKさんのビアンキのほうが
タイヤサイズが大きい。その分だけ早く転がっていくんですよね〜言い訳ではなく!

途中、停車できる見晴らしのいいコーナーでKさんは待っていた。
クルマの老夫婦も一緒で、何やら「元気だね〜」みたいなことをいわれたらしい。
老夫婦は「気をつけて」といい去っていった。そう、自転車で峠越えなんかしていると、
通り過ぎたクルマの中で乗っている人たちが振り返ったりして見ていくんですよね。
ものめずらしいのか、大変だと思うのか。

それにしても、牧ノ戸峠下り道、景色がすんばらしい!
はるか下に、これからたどっていくであろう道がうねうねと。
あそこまでまだ下るのか〜ワクワク。行きますぜ〜!風を切ってビュンビュン進む。
あっという間に、地図で確認しておいた右折ポイントまでやって来た。

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すんばらしい景色。

この右折で入っていく道、地図で見る限り黒川温泉までの最短ルートのように
思えるのだけれど、実際の道には黒川温泉の標識、案内もない。
でもまぁ、途中のオートキャンプ場『ゴンドーシャロレー』の案内はあるし、
間違いないと思えるので、やはりこの道を行くことにした。

こちらの道も下り坂が続く。地図のとおりにしばらく道を進むと、
『ゴンドーシャロレー』の門が立ちはだかっていた。
なになに、『ここから先は私有地につき、通り抜け禁止』!?
『なお、通り抜けの際には○○百円いただきます』という看板。なななんですと〜!?
チクショーそういうことだったのか〜!だから黒川温泉の標識も何もなかったのか!

しかしここまでやって来て、戻るのはあり得ない。
一休さんの「このはしわたるべからず」のごとく、ちょっと一考、強行突破!
ええい、もし止められれば数百円支払うまでよ!少し不安に思いながら、
それでもスーっと坂道を下っていくと、道の左側にはオートキャンプ場の
事務所らしき建物があり、行く手には低くロープが張ってあった。
あたりには誰もおらず、自分たちは自転車をひょいと持ち上げて、
ロープをまたいでその先へ。あっけなく、進むことができたのだった。
結果オーライ!正規の道ではないけれど、ショートカット成功〜!

通り抜けができないとあって、ここはあまりクルマの通らない道なのか、
整備が行き届いていない様子。アスファルトが少し荒れている。
そういえば、こっちの道へ来て、大分と熊本の県境の標識もなかったな。
でもここはもう熊本県、南小国町のはず。ガタガタガタガタ…と、
荒れ道の坂を自転車で下っていく。すると、黒川温泉にあるの宿の看板が見られ始めた!
よっしゃ〜黒川温泉間近なのか〜!?もうすぐだ〜!まだ温泉街からは
少し離れてはいるものの、宿がぽつぽつと現れ始めた。クルマも少しすれ違う。
まだ明るいうちに、やた、ヤッタ、『黒川温泉』の看板が〜!ほぼ目標通り、午後4時、
黒川温泉に到着〜!うれしい!目的地に早く着くって、メッチャうれしい!!

急な坂を下って橋を渡り、予約しておいた宿、田の原川沿いにある『いこい旅館』へ。
自転車を素敵な電話ボックス横の屋根の下に置かせてもらい、チェックイン。
着いた早々、予約時に少し伝えておいたのもあってか、「自転車ですか」、
「どこからですか」などなど、部屋に案内されてからも、
話のネタに自転車が。まあ、話題に困らないのはいいことか。

ここ『いこい旅館』は、とにかく風呂の数が多い!いろいろ合わせると10種類くらい
あるんじゃないの?!迷ってしまいます。黒川温泉は各旅館のお風呂に入れるという、
入湯手形での立ち寄り湯が有名だけれど、ここだけでいいっす!
とりあえず、露天風呂でも入って汗を流そう。

ところが露天風呂、温泉街の中心地にあるこの宿は、露天風呂が全国の百選とかに
選ばれていることもあってか、外来客も多い!平日なのにけっこうな人の多さ!
日中は静かに入れませんな〜これは〜。そういえば、第一希望だった宿は満室で
予約取れなかったよな〜。さすが人気温泉地といったところなのか。

さあ温泉で汗を流してスッキリしたところで、浴衣に着替えて温泉街を散策。
早く着くとこういうことができるからいいんだよな〜。うむ、これからは、
夜まで走ってちゃあダメだ!目的地でものんびりと、それがスロー旅ってもんでしょー。
さてさて温泉街はといえば、雰囲気を統一しているような街づくりが感じられて、
いい感じ!ガードレールや自販機も極力目立たないように色など配慮されている。
山の中、谷の集落の温泉地といった趣で、いいです!流れる川からは瀬音とともに、
「フョッフョッフョッフョッ…」と、カジカの鳴き声が聞こえてくる。
『天空の城ラピュタ』の飛行船が思い出された(わかる人はわかる)。
散策で、黒川温泉の魅力を実感。と同時に、やっぱり外も、人が多いなあ。
平日でこれなら、土日祝日はどうなっちゃうのか?!

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風情のある温泉街の通り。

いこい旅館も、けっこう素敵なたたずまい。囲炉裏やおでんコーナーが
敷地内にあったりして、民芸調の古民家風で和風建築。そして露天風呂。
こういうのに自分たちは弱いのだ。そしてそんな宿ばかりなのですここ黒川温泉は!

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素敵なたたずまい。童じゃ、座敷童がおる。

部屋に戻って、間もなく夕食。出た、熊本の名物、馬刺し!好んで食べようとは
思わないけれど、生姜醤油でパクッと、うん、食べられないことはない。
地のものを使った料理で、やっぱり川魚や炭火焼きは出た。おいしゅうございますなあ。

その後は温泉三昧!露天風呂、内湯、入れ替わり立ち替わり、数々のお風呂を満喫!
風呂上がり、炭酸飲料がウマイ!ここは館内の自販機も通常の値段で好感が持てた。
部屋の明かりを消して、窓を開ける。窓から半身を出して涼む。
川や対岸の宿を眺めながら、お茶を飲んだり。川のせせらぎと、
カジカの鳴き声が間近に聞こえてきます。う〜ん、至福のひととき。

温泉で汗を流し、夕食に舌鼓、露天風呂を満喫、ゆっくりと時間を過ごす。
夜は心置きなく眠ることができる。自転車の旅だと、そんな、宿に泊まれば
当たり前のように思えることが、とてもありがたく感じる。自転車や徒歩での自力旅は、
目にするもの、口にするもの、ひとつひとつの事象が、増幅されて感じられると思う。
自分が自転車の旅が好きなのは、自転車が好きで、マゾヒスティックな達成感を
得たいがためではなく、そういったこともあるのです。あと交通費も浮くし(笑)。


11日(水)。早めに起床。男湯と女湯が入れ替わった露天風呂、朝風呂を満喫。
やはり豪華な朝食もいただいて、なんとなーくのんびりとしていると、
あっという間に午前10時近く、チェックアウトの時間。荷物の準備をして、出発だー。

今日の目的地は、阿蘇!阿蘇山です!道は、やまなみハイウェイに戻って、
南下していくことになる。たぶん下りの多い、爽快なツーリングとなるはず。
と思いきや、黒川温泉を出発してからというもの登り坂ばかり。
まあ無理もないか、来たときは黒川温泉までずーっと下りだったからなあ。

登る、登る、けっこう登る。空は晴れ渡っていて、すぐに汗だくになった。
しょっぱなからの登り坂続きで、Kさんは少しダレてきたようだった。
「がんばれー」と声をかける。コツを掴んだかKさん、自転車を降りることは
少なくなったけれど、逆に、なかなか自転車を降りようとはしなかった。
今回はKさんのペースで進むために、自分があとからついていく形になっていたのだけど、
あまりに遅かったりすると、こちらも内装3段のギアではちとキツく、
自転車を降りて歩いてみたりする。すると、歩いている自分のほうが早かったりする。
「歩いたほうが早いし、休みながら進めて体力も温存できるよ」といっても、
頑に自転車に乗ったまま降りようとせずがんばっていた。
ちょっとKさん、意地っ張りなところがあるよなあ。

標高が上がってきたのか、見晴らしがよくなってきた。『瀬ノ本』の交差点、
やまなみハイウェイにここで合流。ここから黒川温泉に向かうのが正規ルートなのか。
さあここからは南下。見るからに、下りのいい道が続いている。

道はさっそく急な下り坂!ヒャッホ〜!!爽快!下りの坂道サイコー!
じつは自分、昨日温泉に入り過ぎて髪も濡れたままでいたせいか、
今日はちょっと風邪の症状があったんだけれど、そんなことも忘れてしまうくらい。
登り坂も時々あるけれど、少しなのでさほど苦にはならない。
見晴らしのいい高原の牧場では牛や馬が草をはんでいて、和む〜。

tabi103.jpg
まさに高原の牧場といった感じ。

ほぼ下り坂ばかりの一本道。南小国町から一の宮町へ。思っていたよりも早く
「城山展望所」に到達した。うわあ、さすがに展望所というだけあって、
すんばらしい眺め!下界を見下ろしているかのよう。一面に広がる田園地帯が、
まるで空を写し出す鏡のように思えた。このあたりが阿蘇山の外輪山となっていて、
標高は600mほど。ここから見える低いところが、火山活動でできたという
世界最大のカルデラというわけか。そりゃあ最大級だよなぁ、
人が住んでいて電車も通って、いくつかの市町村があるんだから。

tabi104.jpg
城山展望所からの景色。

この展望所では、売店はあるものの、水道が通ってないためトイレが有料だという。
こんなところもあるのだね。さあ、先へ進もう。ここからは外輪山のてっぺんから
カルデラの盆地へと、一気に下る!つづら折りの急坂をあっという間に下り切ると、
やまなみハイウェイはここで終わり。もうカルデラの底なのか、平たんな普通の町並み、
交差点のある道となった。ただ、前方には大きな阿蘇山がそびえている。

ふと、ペダルを踏み込む足が気になった。なんだこのペッタリ感は?うぎゃ!
ガム踏んでる〜!!たぶん城山展望所で踏んだのか。道端で靴裏のガム除去に悪戦苦闘。
時間は余裕があるので問題ないけれど、ガムは紙に包んでくずかごへ!
こんな子供でも常識のことを、なんでできない恐らくは大人がいるのか!
阿蘇山を前にして、少し自分がボルケーノ(噴火)気味になりました。

気を取り直して阿蘇山方面へ。町の中の道を進みゆくと、JR豊肥本線の宮地駅に到達。
近くの観光レストランで昼食にした。さてと、今日の目的地は阿蘇というわけで、
阿蘇山といえば、西側にある火口や草千里、米塚といったところが風光明媚なのですが、
今回はそちらには行かず。あまのじゃくな自分は、ちょうど「仙酔狹つつじ祭り」の
期間ということも手伝ったものの、観光地としてはマイナーな東側、
仙酔狭道路で仙酔狹へ、そこから先はロープウェイで火口東をめざすことしていた。
そしてその道の途中にあるペンションを、今日の宿としている。

レストランでの休憩もほどほどに、やはり風邪気味なのか少し気分が重いなか、
仙酔狹をめざす。ここからはさほど遠くはないはずだけれど、阿蘇山、山です。
確実に山道、登り坂。これだけは覚悟せねば。山の上は物価が高いだろうということで、
コンビニで水分補給用にスポーツドリンクを調達。

仙酔狹道路に向けて進んでいく。途中、大型バスが出入りしている、
売店や飲食店のある広い駐車場が。このつつじ祭りの期間は一般車両通行禁止らしく、
ここから仙酔狹まではバスで往復となる。が、こちらは自転車。
この先の仙酔狹道路入口でも、僕たちはすんなり先へと進むことができた。

だんだんと、じりじりと、道は登り坂になってゆく。今日泊まる予定のペンションを
通り過ぎる。まっすぐ、だらだらと続く登り坂。ただ、両側に広がる草原では牛が草を
はんでいたりして、とてもいい景色。自分たちは自転車を降りて引き、
遠足気分で歩いていくことにした。前方から、何人かがグループで、
ジャージ姿で歩いてきた。学校の部活動か、はたまたあちらも遠足か。少し親近感。

さすがに歩きは自転車よりも遅いけれど、歩いていれば着実に進む。道は完全に山道へ。
強い日差しを浴びて汗だくになりながら、阿蘇山のぐねぐね道を登っていく。
まだか、仙酔狹とロープウェイ乗り場はまだなのか。そんななか、
またジャージ姿で徒歩の団体とすれ違う。やはり学校の遠足で来ているのか。
すれ違いざま、「こんにちはー!」と、そういう教育がされているのか、
元気よく挨拶をしてくれるのだけれど、ああいうのって、どう返していいのやら
困りませんか?自分は困ってしまいます。「こんにちは!」と返せばいいのか、
手を振りニコニコ顔で応じればいいのか。結局、ちょっとそちらを向いて、
「どうも」みたいな表情を返すだけなんですが。

振り返ると、景色がいい。かなり高いところまで登ってきたということか。
怪しく思える仏舎利塔を過ぎて、しばらく登るとようやく仙酔狹、
ロープウェイ乗り場に到着!たどり着いたとたん、せき込んでしまった。
最初は風邪のせいかと思ったのだけれど、Kさんもせき込んでいる。
どうやらこれは火山ガスの影響か。硫黄っぽい臭いが立ち込めている。

仙酔狹。ここは5月下旬ごろに咲く「ミヤマキリシマ」というツツジの群生が有名で、
こういったつつじ祭りみたいなイベントもあるわけです。山肌を見ると、
ピンクの花が一面に咲いている。が、ふもとの仙酔狹道路入口でもあった表示通りに、
花は五分咲き程度だった。正直、見た目地味。ちょっと期待外れ。
山の斜面には人がいっぱい歩いている。ここから歩いて上の火口までも
行けたりするのだろう。そんな時間はないので、ロープウェイ乗り場へ。
がしかし!なんと、火山ガスの影響で運行中止〜!?確かにガス臭が立ち込めていて、
風もこちら側に向いているっぽい。しかも空はどんよりと曇り始めてきていた。
くうぅ、自然のことだから仕方ないか〜。少し待ったものの、ガス臭も天候も
好転する気配はなく、逆に今にも雨が落ちてきそうな雲行きになってきたので、
火口はあきらめて、早めに下山することにした。

tabi106.jpg
ツツジは五分咲きでした。

下りはあっという間。急坂をビビりながらもギュンギュン下りて、
遠足のジャージ中学生たちを追い抜いていった。さてと、もう宿にチェックインしよう。
本日の宿泊はペンション。和風旅館での宿泊が続く中、1日くらいは趣向の違った宿に
泊まろうということで、ペンションにしたというわけです。
予約しておいた『オーベルジュ萩嶺』に到着。

平日のせいか地理的な問題なのか、宿泊は自分たちだけだった。玄関のドアを開けると、
“奥さま”みたいな人が迎えてくれた。階段を上がって2階の部屋へと案内される。
部屋にはベッドとテレビ、ユニットバスがある。窓からは少し生活感の漂う裏庭が。
静かだ…ほかにお客がいないとこんなにも静かなのか。静かなのはいいけれど、
なんか寂しい。それに、他人の家に泊まりに来たかのようなこの感覚。
初ペンションの自分、予想はしていたけれど、ペンションって“洋風民宿”ですね。

まだ時間も夕方前。散策がてら、買い出しに行くことにした。
自転車は置いて、歩いていく。宮地駅の方向へ下る。う〜む、店はほとんどないし、
阿蘇山の西側に比べて、こっちは明らかに観光地じゃないな!バス発着地点の売店、
かんぽの宿の売店も寄ってみたものの、目ぼしいものはなく、
結局、宮地駅近くのコンビニまで歩いてきてしまった。

コンビニでドリンクや軽食を買い込んで、来た道を歩いて戻る。空は曇っている。
自分の体調もあまりいいとは思えない。風邪のせいか、若干の疲労感あり。
宿に戻ると、駐車場に停めておいた自転車を念のため屋根付きの
オープンスペースに置かせてもらった。これで雨が降っても安心。

部屋に戻ってベッドにゴロリ。う〜ん、疲労感。あまり動きたくない。
ひと休みしていると、もう夕食の時間。急いでシャワーで汗を流して、
部屋を出て1階のレストランコーナーへと移動。階段を下りる。
なんか、クラシックの音楽が流れている。扉を開けると、やや無表情の奥さまが
「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。いくつかテーブルがあるなか、
ぽつんと、お客は自分たちだけ。さみすぃ〜。白熱灯の照明の薄暗さも相まって、
“ホーンテッド・ペンション”…そんな不気味さを覚えた(笑)。

しかし、夕食はボリューム満点でお腹いっぱい。創作洋食のコースといった感じで
一品一品はおいしいのだけれど、ちょっと味が濃かった。うーん惜しい。
これまでまだ見ていないけれど、主人は奥で、シェフ担当のようです。

お風呂を沸かしてくれるというので、それまで部屋で休む。
ベッドで横になってテレビを見ていると、明日の天気予報がやっていた。
どれどれ…「明け方から大雨に注意」だって〜!?あかん、アカンよ、
雨降ったら自転車は使えない!交通手段を失うことに〜。
次の目的地は宿も予約して決めてあるし、う〜む、どうしたものか〜。
考えた結果、大雨なら自転車は折りたたんで、電車で行こうかということになった。

午後9時。風呂はもう沸いたころだろう。その前に、明日の雨をにらんで、
自転車を折りたたんで室内に入れておくことにした。暗いテラスで自転車を折りたたむ。
あ!自分の自転車のチェーンが外れた!なんだよ〜、こんな暗いところで〜。
手を油で汚しながら、チェーンを元に戻す。それでも、折りたたむとまたチェーンが
外れてしまう。なんなんだ〜?!暗い中、自転車に装着してあったヘッドライトで
チェーンまわりを照らして、試行錯誤…。わかった!今朝、瀬ノ本の交差点で、
走行時の異音が気になってテキトーにネジを増し締めした、あれだ!
そのネジを元に戻すと、オッケー、折りたたんでもチェーンは落ちず。
あー解決してよかったよかった。外は闇夜の中、どこかの施設で研修でもしているのか
大声が聞こえてきて、これまた不気味だった。(結局、この旅から帰ってきて、
異音はタイヤが泥よけに擦れていたことが原因で発生していたと判明。)

あ〜あ気を取り直して風呂でも入るかー。脱衣所に入ると、先客がいるようだった。
脱衣カゴにおっさん肌着が!ん??主人だ!間違いなく主人が入っている!
談話室みたいなところで待っていると、風呂上がり肌着スタイルの主人と遭遇。
何ごともなかったかのように「どうぞー」と去っていった。

またまた気を取り直して、ようやく入浴。熱めの湯。主人が熱いのが好きなのだろう。
“イオン風呂”とかあったけれど、脱衣所にその機械の本体があって、
そこからホースみたいなのが引き戸のすき間を通っていって湯船の中に入り、
何やら気泡が出ている。か、家庭用だ…。モチロン脱衣所には洗濯機が
鎮座ましましており、これでもかと生活感を放っていた。

ペンションの“ひとんち”感覚にノックアウト気味の自分たちは、
「きっと、ここの主人は料理が好きで、夫婦でペンションをやるのが夢で、
ここで生活しているのだろう」などと妄想トークを繰り広げ、
明日の天候も気になりつつ、疲労感いっぱいで眠りについた。


12日(木)。朝起きて、窓から外を見ると、雨、ザーザー降りです!大雨!
テレビをつけて天気予報を見ても、午前中はこんな感じらしい。まあ、仕方がない。
逆にここまで悪天候なら自転車走行もあきらめがつくってもんだ。
幸い、ここから駅までは近いので、クルマで送ってもらえるか頼んでみよう。

身支度を済ませて朝食の時間、下の階へ。またクラシックのBGMが流れて
います。また奥さまが「おはようございます」と迎えてくれていた。
朝食もボリューム満点。フルーツがデカい!なんとか完食、ふぅ、ごちそうさまでした。
そして、こちらから切り出す前に「駅までクルマで送りましょうか」という話になって、
ありがたや〜モチロンお願いすることに。

部屋に戻って準備をして、午前9時半には出ることにした。どしゃ降りの雨の中、
門に横付けされた四駆に駆け寄って、クルマの後ろに自転車を2台積んで
後部席に乗り込む。「お願いしまーす」。ドライバーは主人。
クルマは駅へと向かう。途中、仙酔狹へ行くのだろう小型バスがすれ違う。
「ツアーで決まった日取りで動くから、行かないとしようがないんだよね〜」
というような世間話をしつつ、クルマならほんの数分、宮地駅に到着。
「どうもありがとうございましたー」。お礼をいって、ペンションの主人と別れた。
ペンションはなんともいえない雰囲気を放っていたけれど、最終的には、
駅にも近くてクルマで送ってもらえて、よかったなあ。そう、思った。

さあ、ここからは電車でゴー!本来なら自転車で、ここ阿蘇からまっすぐ、
大分県とはいっても熊本県に近い九重町の壁湯温泉まで行くはずだったのだけれど、
あいにくの大雨。電車では大分県の海のほうから回り込むように行くことになる。
豊肥本線、まずはここ宮地駅から豊後竹田駅、そして大分駅へ。
豊後竹田駅からは手持ちの周遊きっぷゾーン券が使えるので、
そこまでの運賃だけで済む。電車で行く計画にすんなり落ち着いたのは、
この乗り放題の切符の存在が大きい。周遊きっぷにしておいてよかった〜。

9時45分着発の列車は大雨の影響か遅れていて、駅で1時間近く待つことになった。
そんななか、ようやくやって来た「九州横断特急2号」。特急とはいっても2両編成で、
ローカル線の雰囲気満載の列車に乗り込む。これで大分までは乗りっぱなし。
やっぱり電車は速いねえ。山の中雨の中、景色は流れ列車はグイグイ進む。

「大分〜大分〜」。午後12時過ぎには大分駅に到着。
なんだ、今は雨がやんでいるじゃないか〜。ここからは由布院方面に向かう
九大本線に乗って行くことになる。この行程も周遊きっぷのゾーン内で、
手持ちの切符だけで行ける。自転車で行くはずだった宿に、
「12時55分発の電車で、14時22分に駅に着きます」と伝え、
電話で最寄り駅までの送迎をお願いしておいた。
それにしても、1本逃したら2〜3時間待ちも当たり前の列車本数が少ない路線で、
うまく電車に乗ることができていて、ラッキーといえばラッキーかな。

出発の時間までまだ余裕があるので、改札を出て大分駅周辺を見ることにした。
売店を物色していると、おいしそうな駅弁があるじゃあないですか。
昼食は列車内で駅弁をいただくことに決定。そしてそして、「ぷりんどら」発見!
由布院で食べて以来、また食べたいと思っていたので思わず購入。宿で食べよーっと。
ドリンクも買い込んで、準備OK。電車に乗り込みまーす。

各駅停車、2両編成の普通列車に乗って12時55分、大分駅を出発。
買っておいた駅弁を愉しみつつ、ガタゴトガタゴト…列車は進む。
窓の外、山の上は薄曇りの空。雨はもう降らないのか。
電車に乗り換えて宿への送迎も確保できていて、雨降ってもいいのになあ。

由布院駅を過ぎて3〜4駅目、宿からの最寄り駅、引治駅に到着。
自転車を担いで電車を降りる。降りたのは、自分たちと、老夫婦の二組だけ。
駅の入口で宿の人が待っていた。あの人たちも宿泊客だったか、
老夫婦もワゴン車に乗っていく。自分たちも自転車を積んで、乗り込んだ。

クルマでスグ、あっという間に宿に到着。壁湯天然洞窟温泉の一軒宿、『旅館福元屋』。
ぱらぱらと雨の降る中、午後3時前にはチェックインすることができた。
じつは本来の自転車で行く予定では、今日は距離的にもかなりの強行軍だったので、
その場合この宿にたどり着くのはもっと遅い時間だったはず。
それがこんなにも早くチェックインできて、宿でのんびりできるし、
むしろ雨が降ってよかったかもしれない。

ここも黒川温泉の宿のような、民芸調の古民家といったたたずまい。
門、玄関、太い梁や黒光りする床、素敵ッス!部屋は広くはないけれど、
自分たちにはこれで十分。フロントでもらってきたこの宿のパンフレットを見ても、
素敵だ!おまけにここ、「日本秘湯を守る会」の会員旅館ということらしい。
そんな会、初耳。会員の宿の一覧を見ると、黒川温泉にも2件、宿が載っていた。
あ〜ここ、予約取れなかったところだよ〜。そしてしかも、会員の宿のスタンプを
10コ集めると会員の宿から好きなところにご招待だって〜!?
地元に近いところはどこかのう、むむ、これは…。

さっそく温泉に繰り出しまーす。「壁湯天然洞窟温泉」ということで、
けっこう歴史があるようで、川を仕切って、そこが川の侵食で洞窟となり、
天然の岩の壁、天井になっているという露天風呂。当然目の前には川が流れ、
雨で増水して濁ってはいるけれど、時々カジカの鳴き声も聞こえてきます。
奥には手を突っ込んでもまだ先がありそうな穴が。ぬるめの湯がホンモノっぽく、
いつまでも入っていられそう。足下の川砂を踏みしめると、小さな気泡が湧いてくる。
あ〜サイコ〜。極楽じゃあ。洞窟の奥の方にすっぽりハマっていると、
さっきの老人と、近所のオッチャンらしき人が、湯船で話しています。
むむ、話の内容から察すると、あのご老人、お金持ちだ!

湯上がりで囲炉裏の間でくつろいでいると、この宿の改装時の写真アルバムを発見。
けっこう最近に改装していて、熱意が感じられた。パンフレットのヘタウマな字も、
たぶん主人の字だ。やるなあここの主人は。そのあとは貸し切り風呂も満喫。
洞窟風呂よりも湯は熱め。木枠の窓を全部開け放って、入ってくる風が気持ちいい〜。
窓の外すぐそばまで、敷地内で飼っているのか、ニワトリが数羽やって来た。
う〜ん、こんなのいいっすね〜。

待ってましたの素敵な食事どころでの夕食も、お米や野菜、こんにゃく、川魚、
素材の味が生きてます!って感じで、とてもおいしゅうございました〜。
この平日なのに、自分たち以外にも宿泊客は4組ほどいるようで、
けっこう人気の宿なのか?確かに、古民家風のたたずまい、あの露天風呂でこの料理、
そんでもって良心的な料金なんすよ。わかる気もする。
主人も気さくでおしゃべり好きな人なのか、各組回って、いろいろ話をしていた。
僕たちのところではやはり自転車が話題に。

夕食後、部屋でのんびりしたあとはまた温泉!冷蔵庫がなかったので
窓の外の屋根の上に置いておいたドリンクを風呂上がりにゴクゴク。
夜のおやつにぷりんどらも満喫。温泉宿でのんびり、サイコ〜。
至福の時間を過ごしつつ、眠りへとついた。


14日(金)。目覚めて浴衣のまま、食事処で朝食を。朝食もおいしくて満足満足。
そのあとはまた温泉、朝風呂に興じる。ぷはぁ、いいですな〜。ここサイコ〜っす!
そんなこんなで、あっという間にもう午前10時、チェックアウトの時間。
フロントでの会計時、秘湯を守る会のスタンプ帳に、この宿のスタンプを
それぞれ捺してもらった。玄関では、あの老夫婦が主人と何か話している。
どうやら連泊のようで、うらやましい限り。

さあ、出発。今日はもう帰るのみ。帰路へと着くのです。さよなら福元屋。
いい宿だったよ、いつかまた来るよ〜。1日ぶりに折りたたみ自転車を組んで、
のんびりと、走り出した。

ここから自転車で、特急列車が停まる久大本線の豊後森駅をめざすことにした自分たちは、
スイスイと登りのない川沿いの道を走っていった。田舎の風景、風が気持ちいい。
けれど、少し寂しい空気感。この旅は、今日で終わりなんだよねえ〜。
道すがら、「メサ」と呼ばれる台地状の形をした、伐株山を確認することができた。

午前11時には豊後森駅に到着。時刻表を見ると、次の普通列車は13時。
けっこう待つことになる。ここでちょっとしたトラブルが。待ち時間はあるけれど、
手持ちの周遊きっぷで乗れる普通列車か、少ししたら来るけれど別途料金がかかる特急
「ゆふいんの森」に乗るかで、Kさんと対立発生。「ここでおいしい店でも探して
昼食とってからのんびり普通電車で帰ればいいじゃん、お金もかからないし」
という自分に対して、Kさんは「待ち時間はいやだ、早く帰りたい」という考え。
あげくに、「自分がお金払うから」とばかりに、勝手に窓口で切符を購入している。
う〜む、勝手な行動は困ってしまうよ〜。ちょっと、言葉が見つからない。
無言で自転車を折りたたむ。電車を待つ。

仕方がない、割り切ってここは「ゆふいんの森」を満喫するしかない!
特急ゆふいんの森は、外観も内装の素敵な、由布院に行き帰りする人なら憧れの列車。
そして12時、向こうから、やって来ましたゆふいんの森!もうこれで行きまーす。
指定席の列車に乗り込む。納得いかないながらも、記念撮影したりなんかして。

tabi108.jpg
特急ゆふいんの森。

そのあとは、大分駅でおみやげを購入、乗り換えて日豊本線の特急列車で小倉へ。
小倉からは新幹線に乗って、Kさんとは言葉少なで微妙なムードではあるものの、
急速に現実へと戻りゆく。あーあ、ほんとにもう、この旅も終わりだなぁ。
また来たいまた行きたい。九州、しかも今回と同じところにまた行きたいっす!
帰りゆく列車の中、そう思った。

そして− 心の中では、早くも次のスロー旅、目的地が決まりつつあった!
「日本秘湯を守る会」を知ってしまったからには、今まで構想にはあったものの
まだ手つかずだったあそこ、会員の宿も複数あるようだし、
「折りたたみ自転車で秘湯の宿めぐり」、行くしかないっしょ〜!
次回、乞うご期待!自分たちがね!!








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瀬戸内折りたたみ自転車の旅! [スロー旅]

2003年の旅日記を再編して掲載しています。


『瀬戸内折りたたみ自転車の旅!』の巻

2003年9月29日(月)。この日が近づくにつれて、
何をするにしてもココロここにあらず、上の空、そんな感じになっていった。
なぜなら、その日からは5連休!もう初秋といってもよい、
行楽日和になりそうなこの時期に連休となれば、これはもう旅に出るしかないっしょ〜!
そして素敵な計画も頭の中でしっかり考えられている!すべからく準備も!

計画はこう。まずは連休前日に名古屋から寝台列車で尾道へ。
そこから、持参の折りたたみ自転車であの自転車ツーリストの聖地(と思っている)、
しまなみ海道を行く!そして四国へ上陸し、温泉やさぬきうどん屋を巡る!という、
連休フル活用な5泊5日、スロー旅好きの面目躍如といったものなのであります。

そして何より、今回のこの旅はひとり旅ではありません。
相方Kさんも折りたたみ自転車を持って参加!なのです。
ひとり旅はひとり旅でいいところもあるのだけれど、お連れがいる旅もまたよきかな。
でも、ひとりの場合よりも、計画や準備はしっかりしていかないといけません。

というわけで、準備は着実に進められていた。ひとり旅のときのように
宿をいきあたりばったりで探すのはやめて、事前に決めた宿を前もって予約。
それでも少しはいきあたりばったり感も欲しかったので、最後の宿は未決定とした。
宿寝台列車の乗車券も購入しておいた。前々日には折りたたみ自転車の愛車、
ブロンプトンL3も点検オッケー。ザックを背負っていくので荷物は最小限に。
なかでも着替えは、1回は洗濯をすることにして半減。ガイド本とカメラも忘れずに。
明日28日は、家からの出発だけれど出勤日でもあるため、
朝から折りたたみ自転車でいつもの最寄り駅に向かう。


そして28日(日)。ザックと折りたたみ自転車を持って出勤。
しかしココロはすでに旅模様。テキトーに仕事を終えてからは、
寝台列車の出発までまだ時間があるので、Kさんと遅めの夜ゴハンをいただく。
オムライスを食べながら談笑。時間は過ぎゆき、あと1時間もすればもう、
旅のはじまり。駅へと向かう。

気持ち前のめりで名古屋駅ホームへ。23時46分発の列車を待つ。
未体験ということもあって、前々から寝台列車の旅にはかなり憧れていた。
席は安いほうのB寝台。たぶん期待できない席。それでもワクワクして待っていると、
来たーッ!寝台特急「あさかぜ」!旅の扉が開きます。ドキドキしながら、乗り込んだ。

tabi39.jpg
来たよー寝台特急あさかぜ!

列車に乗り込んだらすぐに自分たちの席へ。通路は自転車持ちには狭い。
乗客はまばら。空いているB寝台席を見れば、やっぱりカーテンだけの半個室。
ドリフのコントで見た寝台よりも狭いよなあ。席にたどり着くとそこに自転車を置いて、
ちょっと車内を探検。ロビーカーで少しくつろぎながら、A寝台は個室でいいなあとか、
シャワールーム使おうかなあとか思っていると、車掌さんが来て切符をチェック。
なんだか楽しいなあ。間違いなく遠足前夜の気分。眠れそうにないけれど、
下関行きのこの列車、尾道には5時20分に着いてしまう。明日は早いし寝ておこう。

結局、シャワーは面倒だし使わないことにした。それにA寝台用かな、あれは。
さてと、歯磨き洗顔はしよう。あ、歯ブラシ忘れた。コンタクトレンズも外さないと。
しかしこれが難題。車内の揺れは激しく、レンズを外すのは至難の業。
キケンだ。それでもなんとか、やり遂げる。

さあもう寝ましょうか。Kさんは上、自分は下の席に落ち着いた。
最初は「アタシが上だ〜いや自分が〜」と、二段ベッド上段がいいという兄弟のごとく、
“上の席争奪戦”が繰り広げられたけれど、背の高い自分は上よりスペースが広い
下のほうがよいと冷静に判断。それぞれの寝台席へ。備え付けの浴衣に着替えた。
シーツを敷くのを忘れたものの、就寝。しかし寝台列車、けっこう騒音が気になるなあ。


29日(月)。なんとか眠れたか。ピピピッと腕時計のアラームが鳴り、起床。
車窓の向こうはまだ深く青く闇の中、朝とは思われない。身支度を済ませて準備万端、
さあ尾道駅だ。まだまだ夜のような早朝、ついに、尾道に降り立った。
自分たちのほかには誰も降りてこない。少数派の旅行スタイルなんだと
再確認できたような思いもあって、なんだかうれしい。

駅の北側の改札口は、有名な尾道という地名に反して意外なほど小規模なものだった。
もちろんこの時間は無人。記念に切符はもらっておこう。
さて、お手洗いでコンタクトを装着したり、ここからの交通手段にして最大の楽しみ、
折りたたみ自転車を準備しているうちに、ようやく空が白み始めてきた。
自分は赤のブロンプトン。Kさんはチェレステカラーのビアンキ。
さあ、尾道駅を出発だ。行きますかあ!自転車で!!

tabi42.jpg tabi43.jpg
夜明けの尾道駅。        尾道駅前にて折りたたみ自転車準備OK。

時間も早いことだし、まずは尾道を散策してみることにした。しかし坂の多い尾道、
自転車はちと向かない様子。急な坂道、細い道。あげくの果てには階段が現れる。
とある寺に寄ってから、急坂の上をめざしたら行き止まり。
仕方なく、街のほうに戻ってコンビニで朝食。おにぎりに豚汁、胃に染み渡る。
気を取り直し再び山のほうへ。小学校があり、そのあたりまでは自転車で進めたけれど、
そこから先はもう階段の道。道標には『千光寺』。小学校の金網の脇に自転車を置いて、
ようしここからは徒歩で尾道散策だあ!朝の掃き掃除のジッチャンに励まされた。

tabi44.jpg
尾道のとあるお寺。

階段を登って登って、少し汗ばんできたところで尾道城にたどり着いた。
尾道城の歴史は知らない。昔あったのだろうか、『尾道城美術館』の看板があるものの、
閉鎖されているようだった。さらに登り進むと千光寺公園へ。
正岡子規や松尾芭蕉などの文学碑が点在する文学のこみちを行き、千光寺に到着。
ここから眺める朝の尾道の景観はとても素晴らしかった。

tabi45.jpg tabi46.jpg
尾道城。            題して「朝の港町」。

ここまで、自転車を置いて徒歩で千光山の山頂まで来たわけで、
自転車のあるところまではまた歩いて戻らないといけない。来た道とは別の道を、
今度は下る下る。猫あり、畑の脇道あり、細道あり、階段あり、また猫あり、
民家あり、寺あり…と、尾道らしい坂道を下っていく。

tabi47.jpg tabi48.jpg
人が近づいても動じない猫。         猫たちのひなたぼっこ場。

ようやく自転車を置いた小学校の脇まで戻ってくると、犬が現れた!
たぶん近所で飼われているのだろうか、通りすがりのオッチャンが、
「かわいいやろ、やっぱり犬好きがわかりよるな〜」とかいって去っていった。
確かにかわええな〜。どうする?!たたかう!!誰にでも構わずついてくる感じで、
屈託なくじゃれついてきたのでついつい遊んでしまう。でも、きりがないので、
犬が近所の幼稚園通いだろう母子についていった隙に逃げてきました。

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やっぱり犬も好き。

さて、自転車も無事回収したことだし、再びサイクリングで行きますかあ!
と思えばまた階段。自転車を抱えて越えたりしつつ、クルマの通る広い道、
国道2号線に出た。途中、寄り道で肉屋のコロッケを買い食い。
店のオバチャンに「あそこには行った?」なんて、話しかけられる。
知らない人にも気さくに喋りかけてくるなあ広島の人は。
旅の思い出ができて、いいですね。

もう少し尾道ポタリングを楽しもうかと思っていたけれど、そろそろいいかな。
今回の大目的でもある「しまなみ海道」へ、早く行きたい!
まずは尾道市から向島(広島県向島町)にかかる尾道大橋に向けて、行きまーす!

国道を東へ進むと、右前方、海上に見えてきました大きな橋が!
あの橋からしまなみ海道が始まるかと思うと、感慨ひとしお。
標識に従って、大橋を渡るための登坂道を行く。橋は高台から建設されているから、
その前には必ず登り坂があったりする。自分にはこれくらいの坂は問題なかったけれど、
Kさんにはちょっとつらい。自転車を引いて歩いていくことにした。

坂を登り切ると、橋は目の前に現れた。尾道水道にかかるこの「尾道大橋」、
「大橋」とはいっても、しまなみ海道にかかるほかの橋と比べたら、
それほど大規模なものではない。それでもしまなみ海道のはじまりの橋。気分も高まる。
歩道は狭かったので車道の端を走行しながら、尾道をあとにし、海上を渡った。

ちなみに「しまなみ海道」とは、瀬戸内海に浮かぶ8つの島に10本の橋がかかる、
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ自動車道のこと。橋や海、多島の景観は素晴らしく、
しかも自転車や徒歩で橋をすべて渡ることができる!橋以外の島内の道は一般国道などを
利用することになるけれど、サイクリングロードもほぼ完備されており、
全長約80kmの道のりになる。そうここは、自転車乗りにはもっぱら
“聖地”といわれる、サイクリスト天国なのだ!

さて、尾道大橋を渡り切ればここはもう芸予諸島のひとつ、向島。
料金所の自転車歩行者用料金箱に10円投入。しまなみ海道の各橋の通行は
有料なんだけれど、安っ!ほかの橋でも高くて200円。
しかも無人で料金箱設置といったシステムで、自転車歩行者の良心に任せます
といったところか。これくらいの料金なら喜んで払いますってば。
それにもっと高い金額を払う自動車に比べれば、優越感すらあるってもんです。

そんな優越感と風を感じながら、『サイクリングロード』の標識に従って、
大橋から一般道へとつながる下り坂を行く。気持ちイイ〜!登り坂あれば下り坂あり。
このひっくり返ることのない大地の法則に一喜一憂できてしまうのが自転車の旅!
最高〜!!ぐるぐると坂を下り切ると一般道へ。

一般道に出てしまえば、なんの変哲もない町中のただの道。海も見えない。
通り過ぎる建物、店、自動販売機、信号機に交差点、そしてクルマ。
しばらくするとKさんは「眠たい〜」といい出した。朝早かったからなとは思いつつも、
少しだけ腹立たしく思ってしまう。楽しくないのか〜旅の始まったとたんに眠たいって!
それよりも、居眠り運転はクルマも自転車も危ない。眠気覚ましにコーヒーでも
ということになり、時々声を出しつつコンビニや自販機を探して走行。
そんなときに限ってコンビニも自販機も、喫茶店さえないんだよね〜。

そうこう走行しているうちに、海が見えてきた!島の海沿いに出ると、
それはもう素晴らしい景観が続いた。潮の香り漂う海岸沿いの道。なんか海の色が違う!
“青”というよりも“碧”というのか、エメラルドグリーンの、目の前に広がる海。
地元で見たことのある海とは確実に違う。素敵な景色と、商店の自動販売機の
コーヒーも服用して、Kさんの睡魔も退散するかな。

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瀬戸内海、海の色が碧い。

海沿いの道を気持ちよく進む。ほどなくすると、橋が見えてきた!「因島大橋」。
橋が見渡せるポイントにはどうぞとばかりに休憩所があり、さすがしまなみ海道
サイクリングロード!ニクいねえ。しばし休憩。あの橋を渡って次の島に行くわけか。
それにしてもすごい建造物。あんなの造っちゃう人間って、スゲエ。

休憩もほどほどに、橋をめざして出発!標識をたどって進むと、やっぱりなあ、
橋の前には登り坂。ご褒美前の試練です。ぐるぐると坂を登り進む。Kさんリタイア。
自転車を引いて歩きます。なんとかこの坂を登り切ると、目前に大橋!
料金箱にそれぞれ50円を投入して、行くぞー!おー!気持ちエエー!
海のはるか上を、少しビビりながら風を切って行く。たまらんなあー!
そして向島よ、さようならー。

因島大橋を渡り切ると、そこはもう因島。広島県因島市。因島といえば村上水軍!
戦国時代好きにはおなじみの、あの村上氏の本拠だった島です。しかしながら、
サイクリングロードからは少し離れていることもあって、史跡などは寄らずに行く。
今度の道は少し海沿いを進むと、島の内陸部へと入っていく。
ちょっとした山の中といった感じ。ミカン畑などが見られる。
9月も終わりころとはいっても暑い。瀬戸内は温暖な土地なのか。
自転車運動も相まって汗ばむ。もうそろそろお昼か〜、少しお腹が空いてきた。
気にはなりながらも、『因島フラワーセンター』への道を通り過ぎる。
途中で見つけたレストランも休みのようで、やむを得ずパス。

このあたりで、Kさんがあまりにも登り坂で苦しそうなので聞いてみると、
「ギアチェンジしても軽くなってないかも」とのこと。試しに後輪を浮かせて
ペダルを手で回しながらシフトチェンジをしてみると、やっぱり軽いほう3段くらいへは
ギアチェンジしていかない。たぶん、シフトワイヤーが伸びてしまっている。
あいにく工具を持ち合わせていなかったので、シフトワイヤーのアジャスターを
いじるのみでなんとかギアチェンジ改善。これで登り坂も少しは楽になるかな。

ちょっとした自転車調整もあって思わぬタイムロス。さらに腹は空いてきているけれど、
これといった飲食店にも出くわさず。そのまま次の島へとかかる橋まで来てしまった。
空腹感も忘れて、橋までの登り坂を進む。途中、休憩所があったので少し休憩。
目の前には、直線的に伸びる橋!「生口橋」だ。さっきの橋よりも少し小さいかな、
でもいい景観。休憩と素晴らしい眺めでモチベーションも高まり、一気に坂を登り進むと
来ました橋の上!ここも通行料は50円。渡りまーす!ウヒョー!因島よ、さらばー!

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直線的な生口橋。

さあやって来ました第3ステージ次の島、生口島。まだここは広島県、瀬戸田町。
橋のあとの坂をぐるぐると下り切り、海沿いの道を行く。このあたりの海は町中で、
小さな港や造船所も見られた。途中、カフェ店の『シトラスソフトクリーム』の看板に
Kさんは後ろ髪引かれつつも、ここはやり過ごす。自分たちの頭の中には
寄り道の目的地が浮上していた。それは『シトラスパーク瀬戸田』。
瀬戸内全体がそうかもしれないけれど、ここ生口島は柑橘類が特産品らしく、
そんなテーマパークもあるのだろう。ガイド本で確認した自分が提案すると、
Kさんも「行きたい」ということになり、魅惑のシトラスソフトも昼食も、
そこでという思いが強くなってきていた。

少し海から離れて、瀬戸田の街に差しかかる。生口島出身で日本画で有名な
平山郁夫の美術館があり、観光客らしき人も多い。商店街の飲食店にそそられつつも、
ここはガマン。シトラスパークが待ってるじゃあないか!先へと進む。
再び海沿いへ出ると、素晴らしい景色の道が続いた。海には芸術作品と思われる
オブジェが点在。アーティスティックな島ですねえ。チャリチャリ進み行けば、
「サッンセットビーチ」と名付けられた砂浜が現れた。海水浴シーズンではないので
人もまばら。その名のとおりきっと夕日が美しいんだろうが、
まだそんな時間でもないので通り過ぎる。

海沿いの道は続く。しばらく走り進むと、でっかい橋が見えてきた!
今まで見てきた橋よりもさらにデカい!「多々羅大橋」だー!
しかし、今回は寄り道の目的地のため、一度はその橋の下を通り過ぎる。
そう、シトラスパークへ!もうかなり腹は減ってきたけれど、
なんとかシトラスまでがんばるぞー!

結果的に、「シトラスパークに行こう!」というその提案は間違いだった。
まず、『あと○○km』の看板を頼りに走っても、走っても走っても、
まだか〜というほど、遠く感じられた。みかんの直売所を通り過ぎては矛盾を感じつつ。
そしてなんとか『この道入る』の看板までたどり着くも、その先にはさらに過酷な道が。
行けども行けども登り坂。そう、シトラスパークはちょっとした山の上にあるのだった。
しかしここまで来たらもう引き返すわけにはいかない。自転車を引き歩いて坂道を登る。
どうしてもKさんは引き離されてしまう。待つ、合流、また歩き進む、離れてしまう。
日は照り汗は噴き出る。そんな道のりが続き、自分も、Kさんもきっと、
この選択を悔やんで、険悪なムードになっていた。それでももう行くしかない。

こんな苦行の中にも、いいことはあります。山を登れば景色がいい!
途中で眺められた高台からの景観は、瀬戸内海とそこに浮かぶ島々とを感じられて、
よかった!まあ、そうとでも思わないとやっていられないといった感じもあるか。
そんなわけで、ようやくどうにかシトラスパークへとやって来た!
入場料500円で中へ入ると、まずは園内のレストランで待ちに待ったランチタイム!
時間はもう午後2時くらいだったか、お客はほとんどいなかった。
自分はたこめしとたこ天の定食、Kさんは天丼をいただく。
大きいけれど固くて噛み切れないぞ〜このタコ!空腹だったのも手伝っておいしく完食。
そして場所を変えて、デザートには念願のシトラスソフトにオレンジジュース!
オレンジを目の前で搾っていくマシーンが、見ていておもしろかった。
疲れもあってか、やはりとてもおいしく感じられた。

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高台から瀬戸内海の景観。

しかしシトラスパーク、平日のためなんだかどうなのか、お客の姿もまばら。
自分たちにとってはこれといった見どころもなく、食事を済ませてから
少し施設を見て回り、自由に持ち帰れる緑色の小さなミカン玉を数個もらって、
早々と出ることとなった。正直、期待外れ。あんなにつらい思いをして来たのに〜!
クルマでドライブのついでならともかく、自転車でがんばって来るような
ところじゃあなかったですここは!

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シトラスパークにて。

このタイムロスで、今日泊まる予定の宿に到着するのが遅くなるんじゃないかと
心配になってきた。少し気が焦る。帰りは来た道をそのまま戻るのもシャクだったので、
シトラスパークの脇から奥の小道に入っていくと、従業員や郵便局員が使いそうな
裏道に通じていた。急な坂道を慎重に下り、かなりのショートカットに成功。
ようやく元の来た道へ戻ることができたのであった〜。

しばらく来た道を戻りゆくと、見えてきました「多々羅大橋」!
寄り道でかなり時間を消費してしまったけれど、これでようやくこの生口島ともお別れ!
次の島へ行ける〜。その前に橋前の通過儀礼、ぐるぐる坂道を登る。
大きな橋だけあってそれだけ高いところまで行かなきゃいけないのか、
今までより登り坂も長いような気がする。坂を登り切ろうかというところで、
多々羅大橋を目前に。デカいな〜。デカいだけあって通行料は100円。
そしてついに、この大橋を渡りまーす!ウヒョー!気持ちイー!最高ーッ!!

奇声を発しつつ橋を走り進む。多々羅大橋の真ん中からは県が変わります。
広島県から愛媛県へ!ついに県名上では四国に突入だー!そして次の島は、
東側の上浦町と西側の大三島町からなる大三島!橋から下ってきてすぐのところに
道の駅と「多々羅しまなみ公園」があったので、そこでしばし休憩を。
これまでもそうだったけれど、休憩すなわち水分補給!自転車運動で汗をかくし、
とにかくノド渇く!どれだけ自販機に手が伸びコンビニに足が進んだことか。
ここでも炭酸飲料をゴクゴク…プハー、ンマ〜イ!あっという間に飲み干した。

この多々羅しまなみ公園からの多々羅大橋の眺めも素晴らしく、
団体の観光客の姿も見られたけれど、その一行が去ってしまうと人はまばらとなった。
そうだ、もう時間は夕方にさしかかっている。太陽もいくぶん傾いてきた。
それにこの島のほぼ中心部、大山祇神社の参道にある旅館に今日は泊まることに
なっているため、なんとか日が落ちる前にはそこまで行き着きたい。少し急がなくては。

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広島県側からの多々羅大橋と、愛媛県側からの多々羅大橋。

この先、宿への道のりはサイクリングロードをそのまま進むことになるので、
迷うことはない。しかし、島の真ん中を西側の海岸から東側の海岸へと
横断するような道となり、地図を見てもどうやらちょっとした峠越え。
この時間で峠越えか…ますます心配になってきた。ガイド本に載っていた『ボッコ製菓』
という店が気になっていたけれど、通り道になかったのでもうあきらめた。先を急げ〜。

道は車道とは別に自転車専用道路があり、交差点もほとんどなく走りやすかった。
だらだらと登り坂が続くけれど、自転車を降りなくてもなんとかなりそうだ。
軽めのギアでくるくるとペダルを回し続ける。日はだいぶ落ちてきて、
もう夕日といえる色味を帯びていた。そのうちに登り坂は姿を消し、
道はゆるやかな下り坂へと変わっていった。いつの間にか峠は越えたみたいだ。
いつしか自転車専用道路は終わり、普通の道へ。だんだんと民家や店、
そして『大山祇神社』の看板が現れ始めた。

少し本ルートから外れて、クルマの少ない裏通りへ。自転車にとってクルマは天敵!
クルマがいないにこしたことはないのです。交差点がなければなおよい。
このあたりだろうと元の道に戻ると、左手には大山祇神社!右折すれば石畳の参道!
よーしもうすぐ宿だ〜。石畳の参道を下っていくと、ありました今日の宿泊場所、
旅館『茶梅』!なんとか明るいうちにたどり着けた〜。

旅館のとなりの駐車場に自転車を置こうとしていると、木造の旅館の建物の2階から
おばさんの顔が出てきて、「Kさーん?!」と聞かれた。
きっと、Kさんが電話予約をしたときに、交通手段を「自転車で」と伝えておいたので
わかったのだろう。さらに、「自転車を中に入れてもいい」とのこと。
よかった、自転車旅にはこれが一番ありがたいのです!大事な自転車だからねえ。
これなら盗難はもちろん雨露の心配もない!宿の玄関内に自転車を置かせてもらって、
ほっと安心チェックイーン!

この旅館のおばさんも、よくしゃべる気さくな人だった。
「坂がきつかったでしょう」との問いに「そうでもなかったですよ」と、
正直、思っていたよりもキツくはなかったのでそう答えた。
そして、時々自転車でのお客さんがいるということ、近いうちに愛媛県の今治から
広島県の尾道まで、しまなみ海道を歩いて横断しようといったイベントがあることなどを
話してくれた。ナイスイベント!やっぱりいいところだなあ、しまなみ海道。

お茶とお茶請けの菓子でひと休み。あ〜汗かいたな〜。風呂に入って汗を流す。
部屋に戻ると横になってまたひと休み。なんだかんだで疲労が激しいのか、
いつの間にかうたた寝モード。食事の用意でおばさんが来るまで寝てしまっていた。

ということで、ゴハンだー!ゴハム!ゴハム!自転車旅はとにかく腹が減ります!
なので食事がおいしく感じられます!それでなくたって旅館の料理ならうまいに
決まっている!今日のゴハンはなんだろな〜、噂に聞きし、鯛めしだー!
ほかにも魚介類満載!さすが瀬戸内海じゃけの〜。大満喫。

夕食を終えて、外をぶらついてみた。参道には灯籠型の街灯がともっている。
散歩がてらに神社とは逆の方向へ。交差点に出ると商店があった。
コンビニと薬局が一緒になったような、離島にありがちななんでも屋。
ジュースを買って、Kさんはバンテリンも購入。ヒザが痛いみたいで、大丈夫かな。
来た道を戻ると今度は神社へ。しかし境内は灯もなく真っ暗で、すぐに引き返した。

部屋に戻ると、食事のあと片づけも済んでふとんが敷いてあった。思わずゴロリ。
明日の予定や計画を話す。やっぱり疲れていたのか、横になっているうちに
いつの間にか眠ってしまい、早めの就寝となりました。


30日(火)。朝ー。少し早めに起床。朝食もおいしくいただく。
いつもの家での夕食よりも豪華なんだよね旅館の朝ゴハンって。満足じゃ〜。
ゆっくりしながらも、身支度を済ませて午前9時には宿を出る。
今日はまず、大山祇神社へ行くのです。せっかくなので参拝じゃ。
自転車が、自分の小さくて赤いブロンプトンとKさんのカッコいいビアンキと、
見た感じ持ち主は逆だよねえとおばさんに指摘され、そうですよね〜と相づち。
自分が仮面ライダーの人に似ているという話になりつつチェックアウト。いい宿でした。

さあ、参道を進み大山祇神社へ。この神社、天照大神の兄神、
大山積大神を祀っている全国1万以上の神社の総本社ということで、かなり有名らしく、
昔から朝廷や武将が参拝に訪れたという由緒あるところ。奉納品の武具や甲冑が
宝物館に収蔵されており、全国の武具・甲冑の国宝や重要文化財の
約8割がここに集まっているというから、もう驚きの場所なのです!
ううむ大三島、まさに国宝の島ですな〜。

神社前の道の端に自転車を置いて、鳥居をくぐり境内へ。
休憩所にある戦時中の軍人さんの写真に歴史を感じます。
その前にある神事に使われているだろう斎田も、橋を渡って敷地の中央にある
樹齢2600年(!)という天然記念物の大きな楠も、なんだか霊験あらたかに感じる。
神門をくぐると拝殿が、その先には重要文化財の本殿がデーンと鎮座。
本殿の中に見えるあの奥に、神様がおられるのですね。普段は信仰心のカケラもない
自分ですが、そしてクリスチャンのKさんですが、あらたまって参拝。

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天然記念物の大楠。       大山祇神社本殿。

参拝のあとは宝物館へ。入場料は1000円かかるけれど、ここまで来たなら
見るしかないでしょう。中に入ると、出るわ出るわ、国宝重文の数々!
なんとか天皇奉納、源頼朝奉納、義経奉納、河野なにがし奉納、などなど、
学校の教科書や資料集で見たあの武具甲冑、文化財が目の前に!すごいっすよ〜ここは。
こんなに重文国宝を見せられたのははじめてです!というか、ここだけでしょ〜。
後半戦の海事博物館では海の生物の気持ち悪い標本なども見られて、
よかったです!ここは入っときましょう!

ついつい長居してしまった大山祇神社。予定時間を1時間ほど遅れて、出発!
今日は残りのしまなみ海道を走り切って、四国へ上陸!そこからあの道後温泉まで行って
宿泊という計画で、目標は愛媛県松山市!目標というか、たどり着かなければならない!
でないとマンマもネンネも得られません!この遅れがどう響くのか、
出だしから少しだけ不安に思う。

参道を下り、交差点を右折、海のほうへ向かう。小さな宮浦港を過ぎ、
海の間際を自転車で走る。気持ちいい〜。ところがこの道、突き当たりに休憩所があって
そこで行き止まり。なんだよ〜と先ほどの交差点まで戻る。気を取り直して、行くぞー。
ここからは、指定されたサイクリングロードからは外れる。少し島の内陸を行き、
南側の海岸を通る環状線に出る道。そこそこ登り坂がキツい。今日も空は晴れ渡り、
ちょっとした山道、自然と汗が噴き出す。気づけばツクツクボウシが鳴いている。
もう10月だよ!どれだけ温暖なの!?

しばらく行くと、峠は越えたのだろうか、海が見えてきた!キラキラと光る遠くの水面。
感動〜。そして下り坂。ヒャッホー!気持ちイー!急すぎてコワイくらい。
ブレーキを握り締める。それにしてもブロンプトンのブレーキは固くて効かないな〜。
フルブレーキでも止まらん!海岸沿いの道に出る。ここからは道なりに進めば、
次の島へとかかる橋にたどり着く。海の景色はいいけれど、けっこう起伏が激しい。
Kさんも疲れでダレてきた。がんばれー。

遠くに小さく橋が見えてきた。地図で見たよりも距離が感じられる。
延々と続くように思えるこの道も、ペダルをこげば、自転車とともに着々と進んでゆく。
「大三島橋」だ。いつものように坂を登り、橋を渡る。通行料は50円。
ここは多々羅大橋と比べてしまうとちょっと見劣りするなあ。
さあ次の島、「伯方の塩」で有名な伯方島(伯方町)へ!

伯方島では、橋を下りてからサイクリングロードである317号線を行き、
島の西南をかすめて次の橋、次の島へと至る。
この島で、自分たちはやらなければならないことがひとつある!それは…おみやげ購入!
ザックを背負った自転車旅なので、好きなところでほいほい気に入ったものを買って
荷物を増やすわけにはいかない。荷物が増えてザックが重くなれば疲労も増します。
というわけで、昨夜考えた。しまなみ海道区間では、この伯方島を行く道すがらにある
『マリンオアシスはかた』でおみやげ一括購入、そして配送する計画!

チャリチャリチャリチャリ道を行く。Kさんを「伯方の塩アイスクリーム」で
ムチ打つという“馬ニンジン”法でようやくマリンオアシスはかたに到着すると、
さっそくおみや物色開始!伯方の塩ラーメン、尾道ラーメン、ボッコ製菓の芋菓子、
レモンケーキ、その他もろもろ…2人でかなりの量のおみやげを購入〜それを配送!
目的を果たしたところで、塩アイスを。うん、塩味だ〜。シャーベットっぽい。
自分はあまり好きじゃないな〜。

自転車を置いた駐車場には、ほかにも自転車がいくつか停めてあった。
これまでもちらほら見られた、遠足とかの学生が乗るのだろうレンタサイクルが多い。
しまなみ海道にはレンタサイクルのターミナルがいくつかあって、
そういった利用もされるみたいです。うむ、ええことや!

休憩もできたし、行きますかあ!少し走ると見えてきた次の橋、「伯方大島大橋」!
てことは次の島は大島ってことか。坂を上がり50円を料金箱に入れて、いざ橋を渡る。
橋は途中、見近島をまたいでいて、その島へと下りられる道もあったけれど、通過〜。
このあたりの海は潮流が渦巻いているとのこと。眼下の海面を見ると、
確かに波が激しいように思えた。

伯方大島大橋を渡り切り、ついにしまなみ海道最後の島、宮窪町と吉海町からなる
大島へとやって来た。橋から続く坂道を気持ちよく下りて、海沿いの道を進む。
例の“うず潮”は見られるかな。景色もいいし、海沿いの道はそれだけで気持ちがいい。
しかし、この先は島の中心部を通る317号線を行くことになる。海も見えないし、
内陸のため坂も多そう。特に見どころもなく、我慢のしどころか。
最後に待ち構える大橋をめざして、もうひとがんばりだ!

本当に、我慢のしどころとなった。景色がいいとは決していえない国道を、
小径自転車でチャリチャリと地道に進む。天気が良すぎて自転車乗りには暑い。
時間的にお腹も空いてくる。自分は残りの道のりと、旅なんだからその土地のものを
という考えから、休憩は昼食と兼ねてもう少しあとでと思っていたのだけれど、
Kさんには今すぐに休憩と補給が必要だった。やむなくコンビニに寄る。
「キーホルダーがない」…Kさんは自転車のワイヤーロックのキーホルダーを
落としたことに気づいた。少し戻ってみたけれど、やっぱり見つからない。
「しようがないよ」。コンビニで買った軽食とドリンクでKさん補給、少しだけ休憩。

さらに国道を行く。チャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリチャリ…
おもしろみのない我慢の道を乗り越えて、ついに来た〜橋はもう目前!
これはでっかいよ〜「来島海峡大橋」!橋のたもとにある道の駅のような施設で、
休憩を兼ねて待ちに待った昼食!雄大なまさに大橋を眺めつつ、
自分は豪華な定食にKさんは大盛りカレー!がっつり補給〜。

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大島側から来島海峡大橋。

昼食も済ませたし行きますかー!この先、今日の目的地まで残された距離を考えると、
少し急がなくてはと思ってしまう。さあ、大橋にアタックだ!坂道から、
天空へと続いているかのようなループへと入り、ぐるぐるぐるぐると登っていく。
途中、目前に眺められた来島海峡大橋の姿。絶景じゃ〜。この橋を、渡り切る!
行きまーす!2つの島をまたいで3つの橋が連なるこの来島海峡大橋、
全長4kmにも及ぶということで、自転車なら走っても走ってもまだ橋といった感覚!
橋からの景色も最高。来島海峡も急潮らしく、うず潮が見られます。
眺めのいいところには休憩ポイントがあったり、途中の馬島にはエレベーターで
降りることができたりして、至れり尽くせりですな〜。しかし、長いだけあって
通行料は200円。それから走行中、バランスを崩して柵に突っ込んで橋の上から
海に落ちたらどうなるんだろう…というような妄想が頭から離れない。
少し怖くなって、できるだけ道の真ん中を走る。風も強いし、
でっかい橋を渡るときっていつもそうなんだよなあ。ビビり?

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来島海峡大橋の真ん中あたりからの景色。

そんなこんなで、最高の気分で来島海峡大橋を走破!そしてついに、四国上陸〜!
ここは愛媛県今治市。ループを下りると分かれ道。その脇の休憩所には付近の地図も
あったけれど、よくわからなかった。たぶんこっちかなと、トンネルの見えるほうに。
短いトンネルを抜けると、道沿いに『糸山公園来島海峡展望館』が現れた。
たった今渡ってきた来島海峡大橋をあらためて眺める。やっぱりいい眺めだなあ。
そのうちに、この先の道と標識を見てこっちは違うと思えたので、方向修正。
さっきの分岐点まで少し戻ることにした。

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四国側から来島海峡大橋。

先ほどの休憩所に戻り、右折したところを左折する方向へと、坂道を下る。
少し進んでみると、標識などからこっちで正解だというのがうかがい知れた。
今治市から波方町、すぐに大西町へ。この先は電車の線路(予讃線)をたどる
海岸沿いの道を進む。国道196号線に入る交差点のコンビニで休憩していると、
お遍路さんの姿が見られた。いいなあ〜遍路の旅。まさにスロー旅だよなあ。
スロー旅好きにとってお遍路の旅は憧れなのです。

お遍路バックパッカーの姿を目で追いつつ、自分たちも旅路に戻る。
この交差点はまだ大西町。ここから196号線を進み菊間町、北条市を抜ければ松山市、
そして道後温泉へとたどり着く。文で書けばスグだけど、ここからがとても長く感じた。
菊間町の海岸沿いの道から、海の見えない北条市の道へと入るころには、
太陽はかなり傾き始めていた。交通量の多い、先の見えないまっすぐな国道。
景色はよくない空気も悪いし気も焦る。『松山市まであと○○km』との道路標識。
「まだ○○キロもあんのか〜」。残りの距離が恨めしい。それでも、とにかく自転車を
こいでいくしかない。そうすれば着実に進んでいくもの。それが自転車の旅。

もう日も落ちかけて薄暗くなってきたところで、ようやく松山市に入った。
しかし道後温泉まではまだ距離があり、標識は正直にそのことを示していた。
けっこう街中に来たように思えても、なかなか道後温泉にはたどり着かない。
念のため、今日泊まる予定の宿に「少し遅くなるかもしれない」と連絡しておいた。

次第に街は夜の中へ、あたりは街灯やクルマのヘッドライトで照らされ始めた。
夜間走行。できれば避けたいところだった。視界が悪くなって走りづらい。
道に迷いやすい。漠然とした不安感。何より、宿の夕食にありつけないかもしれない!
自然とペースも上がる。しかしそれによって、Kさんは引き離されることが多くなった。
KさんはKさんで、頑なに自分のペースを守り通そうとしていた。そう感じた。
「もう少しがんばってよ」そう、思った。そのときは少しだけ腹立たしくも感じられた。

そんななか、標識案内どおりに196号線を左折。少し走り進むと、
夜に浮かび上がる数々の旅館が見えてきた!もう近い、道後温泉だー!
アーケード街を抜けると、出た〜!『道後温泉本館』!本やテレビで見たことのある
あのいでたち!そこはとりあえず通り過ぎ、ようやく本日の宿泊場所、
道後温泉『ホテル小湧園』にたどり着いた〜。適当なところに自転車を停めて、
チェックイーン!なんとか午後6時台に到着できたので、
ほぼ通常どおりの時間で夕食にありつけます!

部屋に入ってお茶とお菓子でひと息。食事までちょっと時間があったので、
少し外に出ることにした。平日だけれど、けっこう浴衣姿で出歩いている人もいる。
道後温泉、風情がありますなあ。アーケード街のおみやげ店をチラ見しつつ、
アーケードを出たその先にあるダイエーっぽいスーパーで、安売りのドリンクなど購入。
温泉旅館にはこの買い出しが欠かせないのですよ。旅館内のドリンクは高いし、
温泉に入り浸ればノドも渇きまくるからねえ。ほかにも道すがら、
名物だというタルトの店や夜間営業のラーメン屋も気になりつつ、旅館へと戻った。

そして、お待ちかねの、別の部屋だが部屋食での夕食タイム!
今日も昨日の夕食に負けず劣らず、お造り、鯛めし、魚介類満載。豪華じゃのう〜。
余は満足じゃ。でも若干、料理内容が似ているな。ま、まだ昨日と同じ愛媛県内だから、
そりゃあ同じ名物も出るよなあ。しかしまあ、うまいもんなら連日同じものでも
ノープロブレム!腹いっぱ〜い。

自分たちの部屋に戻ると、もう布団が敷かれていた。別の空き部屋で食事が
用意されたのはこのためか。再び外に出ておやつにタルト購入。
道後温泉本館やラーメン屋に後ろ髪ひかれつつも、すぐに旅館に帰ってきた。
部屋ではのんびりしつつ、自分は洗面所で衣類を洗濯。空調を効かせて部屋干し。
そして館内の岩風呂や大浴場といった温泉を満喫したあと、
部屋で明日の予定のことを考えつつ、就寝とあいなりました。


朝。この日で10月、1日(水)。朝風呂と、連日の豪華な朝食を堪能。
館内の売店でおみやげを見る。多種多様、ここでもいっぱい買ってしまいました。
松山のおみやげはここで一括購入そして配送。部屋で身支度を整える。
洗濯した靴下がまだ湿っているなあ。あっという間に、もう10時近く。
急いでフロントへ、そしてチェックアウト。たくさんの従業員に見送られて、
あちらは仕事なんだろうけれど、なんだかこっぱずかしい思いで、自転車に乗って出発。

今日も空は晴れ渡り、天気は良好。風を切って爽快な気分で自転車を走らせる。
道後温泉本館の前を通り過ぎ、道後温泉駅前にある放生園の時計台にも寄ってみる。
素敵な建築。どちらも小学生の写生大会だろうか、子どもがいっぱいで微笑ましかった。

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道後温泉本館。

さあ、行きますかー!道は狭く、クルマの交通量も多くて少し走りにくい。
しばらく走り進み、四国に88か所ある礼所の中の51番の礼所、石手寺の前で
この先の道を確認しようと、ザックの中のガイド本を取ろうとすると…ない。
探る探る…ない!この先、ガイド本の地図がないのは絶対に困る!
旅館に置いてきたのか〜?!

急いで旅館に戻る。フロントに伝えると、「これですか」とすぐに忘れ物の
ガイド本を提示された。「それです!」受け取り、お礼をいって再出発〜。
そうだ、Kさんを置いてきてしまった。少し行くと、Kさんが追いついて落ち合えた。
「申し訳ない」。急ぐあまり、暴走してしまったのであった〜。

そう、この日の予定は急がざるを得ない強行軍なのです。
今日の目的地は、あの「こんぴらさん」で有名な香川県琴平町。
そこに宿を取ってあります。愛媛県松山市のここ道後温泉から、香川県の琴平まで、
国道11号線を進む道のりで、ガイド本の小さい地図で目測しても120km以上は
あるだろうと思われる距離。しかも、ちょっとした峠越えもありそう。
しっかり走る旅用の自転車で自分ひとりならなんとかなるかもしれないけれど、
今回は小径の折りたたみ自転車です。お連れもあります。本当にたどり着けるのか?!
そんな不安も相まって、ガイド本忘れのタイムロスを取り戻さなければと、
焦ってしまったというわけで。反省〜。

気を取り直して、石手寺まで戻りゆく。さすがは道後温泉にも近い51番礼所、
石手寺にはお遍路さんがいっぱいいた。やっぱりいいな〜遍路旅。いつかはやりたい。
自分たちはこの石手寺前の交差点を右折して、南に向かう道へ。細い道を行くと、
このあたりもお遍路さんが見られた。50番の繁多寺、49番の浄土寺があるらしい。
浄土寺最寄りのバス停付近で、早くも水分補給タイム。コンビニでジュースを買う。
今日も天気が良すぎて暑いくらい。いくら飲んでもすぐにノドが渇く。
さてと、この道をこのまま進めば11号線に合流するはずだ。とろとろと進み出す。

しばらく走り進むと、松山市から重信町へ。国道11号線へと出た。
このあたりからか、予想はしていましたよ〜道はじりじりと登り坂に。
黙々とペダルを回転させる。さらに雲行き、いや道行きはあやしくなっていった。
行けども行けども登り坂。田舎の風景は素晴らしいけれど、これ、山道だな〜。

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棚田みたいな風景、土手に彼岸花。

すぐに川内町へ。景勝地なのか『桜三里』の標識が。つづら折りとはいかないまでも、
登り坂が続く続く。Kさんは遅れ始めて間もなく、自転車から降りて歩いていた。
Kさんの荷物をこちらの自転車のハンドルにかけて、自分が負担することに。
無理をさせてはいけないと思い、ペースを合わせてこちらも自転車を引いて歩く。
しかし、歩いていてもKさんは遅れてしまい、先を行く自分とは知らないうちに
距離が広がっている。時々、木陰で待つ。こんな旅に慣れている自分と比べたら、
長距離での自転車の旅は初めてともいえるKさん、そりゃあキツいよなあ。
そんな自分も、ザックを背負っていることもあって、肩が凝ってきた。

もう完全に、山道。どうしても自分が先へ、Kさんは遅れて後ろへといった
位置関係になってしまう。そしてまたこちらはKさんが来るのを待って、再び進む。
そんなフォーメーションで坂を登り進む。すると、その先にトンネルが見えてきた。
トンネル!山道で、登っていったところで現れるトンネルは、そこが峠の場合が多い。
つまり、そこから先は下り坂。それを思うとこのトンネルには希望が持てる。
トンネルを目前にして、Kさんを待って足並みそろえる。荷物はここでKさんに返却。

『根引峠』の標識が。やっぱりここが峠だったか。もう登り坂もないだろう。
自転車にまたがってペダルを踏み込む。一気にトンネル突破だー!突入〜!
しかし、道が狭い〜!!「うわぁあ〜!」、ゴォォオオォォキュオ〜ンという
轟音とともに大型トラックがすれ違う!「アブナーい!!」思わず叫ぶ!
緊急停止、端に寄って回避。息つく間もなくまたトラックが。危ないぞここは。
歩行者はもちろん、安全に自転車で走れるスペースはない!クルマに脅えながら、
道の一番端っこを慎重に進んでいく。その後も怖い思いをしたものの、
なんとか無事にこのトンネルを脱出することができた〜。

峠を越えて、ここからは下り坂ばかり。楽々スピードアップ!気分は上々極楽じゃー。
しかし山道なので、急こう配で急カーブが多い。調子に乗って対向車線のクルマに
突っ込んでいかないよう、慎重にブレーキングを繰り返してスピード制動。
それにしても、ほんとに山の中に来たんだなぁ。景色が素晴らしく、山間部そのもの。
ガードレールに寄って下方をのぞき込むと、荒々しい渓谷が垣間見られた。
昨日は海で、今日は山で。いい旅だー!そんなことを思いつつ、転がってゆく。
もうひとつ短いトンネルを抜けると、川内町から丹原町へ。

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山と渓谷の景色。

風を切って坂道を気持ちよく下り進む。スピードが出ているので下り坂はあっという間。
だんだんと山から下り、道沿いに民家や店がちらほらと。丹原町から小松町、街の中へ。
まさに、「おら山越えてこの街さ来ただ〜」の世界(笑)。
11号線は再び、普段の国道らしい姿になっていった。

山を越えてひと段落、下り坂もない平たんな道になると、峠越えの疲れからか、
地味〜な、坂なのかわかりにくい、だらだらと続く登りに気がついたりする。
足回りが重たく感じられて、じわじわと疲労感が増す。

ふと時間を見ると、もうお昼。腹減った〜。「何かいいもんでも食べないと〜」と、
飲食店を探しつつ走り進む。国道沿いなので、ぽつぽつと飲食店は見られた。
が、なかなか“いいもん”に見合ったところがない。今回の第一希望は洋食。
なかでもパスタ!炭水化物で腹いっぱいエネルギー補給したいところ。
微妙な喫茶店…パス。回転寿司…パス。店の外観やメニューを見ては通り過ぎていく。
カラダが資本の自転車旅、食べることに関しては譲れない。

時間は過ぎゆき、午後1時を過ぎてもまだ空腹を我慢して、自転車をこいでいた。
「いいかげん、もう何か食べようかー」。妥協の二文字が頭に浮かび始めたとき、
『石鎚温泉』という温泉施設が現れた。入口には『食事もできます』とある。
ふらふらと中へと誘い込まれ、地元の人が利用していそうなこの施設の
レストランコーナーへと足を運び、メニューを見ると、期待外れだった…。
やはり妥協はするまいと、再び、“いいもん”を求めて走り始める。

しかしながら、しばらく走ると、「もうなんでもいいや〜」と極限状態にまで
追いつめられてしまった…そのとき!いい感じのたたずまい、メニューは値ごろな洋食、
駐車場を見ればそこそこ利用客もある、レストランを発見!ここだ〜ココしかない!
おもむろに店内へ。店内もいい感じじゃないですか。個室風になっている席に座ると、
まずは出された水をがぶ飲み!ぷはぁ〜。注文はパスタランチを大盛りで。
待っている間に、今日これまで進んできた道のりと残りの距離、時間のなさ加減を
話したりしていると、サラダとパン、そして待ちわびたよ〜パスタ!いただきまーす!
モグモグ…うまーい!ここで正解!妥協しなくてよかった〜。

さてと、昼食は無事済ませたものの、のんびりはしていられない。
目的地の琴平まではまだまだかなりの距離がある。少なく見積もってもあと3分の2!
そう、山越えもあって、午後2時でまだ目的地までの距離の3分の1しか進めていない!
時間的に、日が落ちるまでには…無理かな〜といった感じ。とはいっても行くしかない。
自転車にまたがりペダル踏み込む。疲労も徐々に溜まってきている。
背負ったザックが肩に食い込む。

国道11号線をひたすら突き進む。地図で見れば平たんな道のりだけれど、
小さな起伏も大きく感じられて、ちょっとした登り坂でもけっこうつらい。
ようやく西条市から抜け出し新居浜市へ。延々と続くように思える道。そして土居町へ。
まだまだ続くのかーこの道は〜。海はまだ見えないのか〜。この国道11号線、
松山から走ってきたときに海が見えてきたら香川県も間近!というような
地図上での目測もあったので、とにかく海が待ち遠しかった。

ペダルを踏み込み踏み込み自転車をこぎ続ける。ようやく、本当にようやく、
海が見えてきた〜!!土居町を抜け、伊予三島市へ。海に近い街の中の道を行く。
JR予讃線の伊予三島駅を通り過ぎるころには、太陽もずいぶんと傾き始めていた。
急がないとヤバい、夜になる。宿に着くのが遅くなるとメシにありつけない!
この先、国道11号線は予讃線と並走しており、このあたりでひとつの考えが
頭の中にもたげ始めていた。それは…でもまだ、粘って先へ進む!

少し海が見られたかと思うと、先ほどから見えていた工場群の中へ。
巨大な製紙工場の狭間を通り抜け、川之江市へ。道は街中から海沿いへ。
まだまだ〜、まだまだ〜と、粘って粘って自転車を走らせる。
そしてついに、『香川県』の標識が!讃岐だー!思わず「うど〜ん!!」と叫ぶ!
やっとの思いで愛媛横断〜!讃岐の国、香川県は豊浜町へ!!

香川県に入った勢いで海沿いを突き進む。昼、頭上にあった太陽は、
ふり返るともう海のすぐ上。背中の高さにまで落ちてきている。
左に海、右に線路沿いの道、前方右手に駅舎が見えてきた。
なんとか香川県に到達したことによって、ある種の達成感は得られた自分たちは、
伊予三島駅あたりから頭の中にあった、よくいえば合理的な考えを実行することにした。
はい、自転車こぎリタイア!!ここから先、自転車でいくらがんばっても、
琴平まではまだかなりの距離がある。時間もかかる。もう日の沈みかけているこの夕刻、
自転車は降りて、電車で行こう!挫折?ノンノン、むしろ折りたたみ自転車の威力が
発揮されるときがやって来た!とも思えなくもなかった。

振り返れば、夕日はオレンジ色に燃えて海へと沈んでゆく。道路を渡って駅へと向かう。
無人駅だ。そのまま自転車を引いてホームへ。ここはJR予讃線、箕浦駅。
自転車小物のメーカー「ミノウラ」が思い出された。さて、時刻表を見ると、
次の電車が来るまでにまだ30分は時間がある。そのままホームに引き入れた自転車を、
悠々と折りたたむ。さすが折りたたみ自転車、ガチャガチャーンとコンパクトになる。
キャリングバッグにしまってのんびり電車を待つ。念のため、予約してある宿には
少し遅くなると連絡。薄暗くなってきたところへ電車がやって来た。
自転車持って乗り込んで、ほっとひと安心。

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海へと沈む夕日。        箕浦駅にて。

電車で琴平へ向かう。車掌さんに琴平までと告げ切符を購入。乗り換えがあるらしい。
それにしても、運賃けっこうかかるなあ。ガタンゴトン、ガタンゴトン…
もう窓の外は真っ暗。各駅停車で思っていたよりも時間がかかりそう。
箕浦駅から、豊浜、観音寺、本山、比地大、高瀬、三野、宅間、津島宮、海岸寺、
そして多度津へ。多度津駅でJR土讃線に乗り換える。待ち時間がけっこうある。
平日、乗り降りする学生服。地元の人たちの生活を垣間見たような気がした。
旅モードの自分たちは少し浮いているように思えた。

多度津駅から、金蔵寺、善通寺、そして琴平へ。電車でもけっこう時間がかかった。
ようやく、琴平駅に到着〜。いそいそと自転車を組んで、駅からスグの、
予約してある旅館『琴参閣』へ。なんとか午後7時半には到着することができた〜。
到着時間が遅くなって少し心配されていた模様。自転車置き場にも気遣ってもらえた。

ここは四国きっての大型旅館。あの「冷凍さぬきうどん」でおなじみの
加ト吉経営の旅館らしく、四国においての加ト吉の大企業っぷりが、
館内にある加ト吉創業者の歴史やおみやげ売場のさぬきうどん、
さらには夕食に出るうどんに至るまで、ひしひしと伝わってきます!

部屋に荷物を置いて、すぐに夕食。ああ、夕食にありつけてよかった〜。
お造り、天ぷら、うどん、おかわり自由のごはんや漬物、豪華な食事でありました。
部屋は洋室、ベッドでゴロリ。ネットで予約した洋室プランで宿泊費を抑えた。
風呂は温泉で、露天もある。大型旅館なだけあって大浴場が広かった。
翌日のさぬきうどんづくり体験も別コースで用意されていたり、
館内で一日過ごせる感じの至れり尽くせり旅館でした。


10月2日(木)。時間ギリギリまで眠ってしまい、今朝は朝風呂は入らず。
やはり豪華な朝食をいただき、身支度を整える。ここではおみやげを、
定番のさぬきうどんを各々2個3個と購入、そして配送。10時前にはチェックアウト。
今日はまず、ここからスグのあの金刀比羅宮、通称「こんぴらさん」へと向かう。
天気はまたまたまた晴れで、うれしい限り。

参道を進み、いよいよ石段が現れる。奥社までは1300段もあるという
この石段を登る前に、自転車は置いていかなくては。石段の脇の建物の中からおばあが、
「置いていきな」という。怪しい。これは預かり料取られるなあと思いつつも、
まあ道端に置いて盗まれるよりはいいかと思い、そこに置いていくことにした。

石段を登りゆく。みやげもの店の客引きが多い。ちょっといやな気分になる。
だんだんと石段も急になってきた。大門をくぐると、名物?の「五人百姓」と
いわれるみやげ売りのオバアたちがいたけれど、正直少し、うっとうしく思えた。

さらに奥へと石段を登っていく。うっそうと茂る木々の中、
木漏れ日がちらちらと降りそそぐ。この空気感がなんとも気持ちいい。
しばらく進むと、重厚な旭社、そしてさらに行けば荘厳な本宮にたどり着いた。
本宮までは785段とのこと。それだけでずいぶん高いところまで来られるもんです。
そのときは少しだけ曇っていたけれど、本宮社殿前の展望台からの眺めは、
讃岐平野を一望できて素晴らしい。ということで、こんぴらさん、参拝〜。

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旭社。

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こんぴらさん本宮。

奥社へは向かわずにここで戻ることにした。来た道を下っていく。
平日だけれどツアーの団体客も見られた。やっぱり一大観光地なんだなあ。
下ってきたところで自転車回収。案の定、おばあは「何か買っていくか、
預かり料を払うか」という。まったくもう、いやだなあこういうの。
預かり料だけ払っていったほうが安く済みそうだったので、みやげものは買わなかった。
このせいで、もうこんぴらさんには来たくないな…とまで思えてしまった。

いやなことは忘れて、参道にあった『こんぴらうどん』でさぬきうどんを食す。
ここからが今日の目的のはじまり。今日の目的とはコレすなわち、さぬきうどんめぐり!
自転車でチャリチャリ、さぬきうどんの店を巡りつつ、高松へと向かう予定なのです。

琴平から高松に向かって走り出す。高松までの距離はそう遠くなく余裕があるので、
さぬきうどんめぐりみたいなこともやっていられるのです。早速、1件目として
めざしていた『宮武うどん』までの道のりで、迷う!ガイド本の地図の縮尺が
予想以上に小さく、目測を見誤っていた。「ここ、さっき通ったよなぁ」。
あの道この道、行ったり来たり。自力で通したい自分に対して、Kさんは現実的だった。
引き離されて見えなくなったと思ったら、ちゃっかり地元の人に聞いていたようだった。
そんなこんなでなんとか、『宮武うどん』にたどり着いた〜。

その店は、こんなところに名店が!?という田園風景の中、ぽつんとあった。
こんな店が香川には多いらしい。お昼時、狭い店内にお客はぎっしり。
「大」、「小」、「あつあつ」(麺もダシもあつい)、「ひやあつ」
(麺冷たいダシあつい)、独特の、でもさぬきうどん店では当たり前の言い方で注文。
「小あつあつ」をいただく。うまいな〜、太い麺もダシもうまい。しかも安い。
200〜300円で済んでしまう。小でも大満足。

その次にめざしたのは、客自らがネギを畑からもいできて切り刻むというセルフの極地、
有名な『中村うどん』。ガイド本の地図を見つつ適当に道を行くと、偶然見つけたのは
『山下うどん』だった。「ぶっかけ」を食す。うま〜い。
ここ山下うどんはぶっかけ発祥の店らしい。「ぶっかけ」というのは、
茹でた麺に濃いめのダシを少なめにぶっかけたもので、ここでは天かすとかつお節に
レモンが添えられていました。太麺でダシもうまかった〜。
思わず、店内で売られていた企画モノの山下うどんのおみやげを購入。
ザックはパンパンで重量大幅アップ。肩にめり込むっす!

次こそめざすは、伝説の中村うどん。しかし、ここでもガイド本の縮尺に惑わされ、
迷って迷って、結果的には善通寺市周辺を行ったり来たり。あきらめて高松に向かおうと
進んでいた道でようやく、地図と道とを把握。「このあたりだ!」と感づいた。

中村うどん。そこは、駐車場には看板があるものの、実際の店にはなんの看板もなく、
外観は民家そのもの。近所のおじさんに聞いてようやく見つけたときには、
営業時間の午後2時はとっくに過ぎていてもう閉まっていた。残念〜。
けれども、引き戸は施錠もされておらず、店内をちらっと見ることができた。
そして敷地内にはありましたよ、セルフサービスでもいでくるネギ畑が!!

中村うどんも見つけることができて、うどん屋を巡るのももう気が済んだ。
ここからはもう、高松市街へと向かうのみ。さぬきうどんめぐりの思ってもみなかった
難航もあって、善通寺市から丸亀市、飯山町、坂出市、国分寺市と、
街の中の交通量の多い道ばかりで長く感じられた18号線、国道11号線を経て、
高松市にたどり着いたときにはもうあたりは暗く、夜になってしまっていた。

少しだけいきあたりばったり感を楽しみたかったのもあって、今日泊まる最後の宿は
決めておらず。ガイド本を頼りに、ホテルを宿泊費と外観と、それから自転車を安全に
停められるところがあるかどうかを吟味して探し回る。街の中で安全な自転車置き場。
この条件を確保するのは難しい。まずは第一候補、『ロイヤルパークホテル高松』の
フロントで、自転車置き場はないかと聞いてみる。やはり「ない」とのこと。
やむを得ず外に出て、再びホテル探し。ない。この街中で、自転車を安全に置けそうな
ところなどそうはない。まあ、自転車は折りたたんで部屋に持ち込んでしまえば
いいんだけれど、それはそれでけっこう面倒なんだよねえ。

もう一度ロイヤルパークホテルへ。隣の駐車場棟入口の奥隅に置けないものか。
そう考え、守衛さんに交渉。「ここも人が通るので確実に安全とはいえないが、
クルマの邪魔にならない隅になら置いていい」とのこと。ここに決めた!
チェックイ〜ン!ふたたびフロントへ。一番安い部屋は空いてなかったけれど、
予算を伝えるとそれくらいの料金にまでしてもらえた。
ホテルって意外と値切れるもんなんですね。

無事に宿泊場所を確保できたので、部屋に荷物を置いて、外に出て街を歩く。
高松はアーケード街の連なるけっこう大きな街ですね。
でも街は、よくも悪くも日本全国どこも同じような感じがする。
繁盛していそうなパスタ屋で遅めの夕食をいただく。旅館での和食が続いていたので、
洋食のパスタとライスコロッケがなおさらおいしく感じられた。ホテルに戻ってからは、
明日の予定を考えたりしつつ、シャワーを浴びて就寝へ。明日はとうとう、帰路へ着く。


10月3日(金)。のんびり起きて、チェックアウト。今日も晴れ!
今回、天気には本当に恵まれている。朝食がてらに、さぬきうどん!
自転車で市街を少し南下して栗林駅近く、『松家製麺所』で食す。やっぱりうまいな〜。
この麺の太さ歯ごたえ。それにダシが合わさるこのうまさ!本場は違うな〜。
何より、安い!1玉150円っすよ!もう1玉おかわりしてしまいました。
そのあと、昼食へとなだれ込むように、全国展開している『はなまるうどん』、
それからもう一店と、今日もさぬきうどんめぐり。それぞれに麺やダシが少しずつ違い、
どこもおいしかった。さて、さぬきうどん今回の第1位、自分は『山下うどん』の
「ぶっかけ」でしたー。Kさんは『宮武うどん』だって。

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松家製麺所。このたたずまいがなんとも。

高松のアーケード街を自転車でふらふら。頃合いをみて、のんびりと高松港へ向かう。
そう、とうとう帰路に着くのです。まずは高松東港からフェリーに乗って、
ゆっくりと神戸三宮港まで。この船便は時間がかかる分、運賃は高速船と比べて安い。
それに、ゆっくりいくのがいいんですよ〜。なぜなら、スロー旅が好きですから!
フェリー最高!飛行機よりもフェリー!

高松東港のフェリー乗り場の受付センターに到着。外で自転車を折りたたむ。
ここで働いているおじさんが寄ってきて、ものめずらしそうにこちらを見つつ、
話しかけてきた。「何キロぐらいある?」、「12キロくらいですよ」、
「そんなにあるか」。そう、折りたたみの自転車を組んだり折りたたんだりしていると、
けっこう熱い視線を浴びることが多いのです。見せものじゃありません!が、
見たいならどうぞ見てくださいといった感じ。まあ、まんざらでもないし(笑)。

受付センターで切符を購入。加藤汽船の「ジャンボフェリー」、
高松〜神戸間で1790円。15時30分発。所要時間は3時間40分ほど。
けっこう時間はかかる。ここに来る前に途中のコンビニでおやつを買っておいた。
フェリーが出発するまでにまだ待ち時間があったので、
ここの売店でも最後のおみやげを購入。ロビーのベンチでのんびり待つ。

フェリーに乗る時間が来たようです。自転車を持って船内へと向かう。
じつは初のフェリー搭乗。少しわくわくする。座席に座ってしばし待つ。
出発の時間。ゆっくりと、景色が流れます。「とどけてよ〜ジャンボ〜フェリーィ〜♪」
と、ジャンボフェリーのテーマも流れます。耳に残る、ジャンボフェリーの歌。
このあと数日間、頭の中でヘビーローテーション(笑)。

最初は座席に座っていたけれど、途中で雑居寝できるおなじみの2等席に移動。
Kさんは眠りについたようだ。自分はといえば、やはり横になって眠ったり、
外を見にいったり、おやつを食べたり。ゆっくりと、旅の日々から離れて、
現実へと戻っていくよう。フェリーの後部から海を見ると、波あとが遠くまで見渡せた。
あの先に、自分たちはいたんだなあ。船上、ゆったりと時間は過ぎゆき、
日は海へと沈んでいった。旅の終わり。そう、感じられた。

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フェリーの波あとに日は沈みゆきます。

夜の明石海峡大橋をくぐり、キラキラと光る神戸の街が見えてきた。
ようやく神戸三宮港に着いたら、今度はシャトルバスを経由して三宮駅へ。
そこからはJRに乗って、新大阪から、お弁当買って、新幹線で名古屋へと帰っていく。
ああ、本当にいい旅だったなあ。また、こんな旅をしたいなあ。スロー旅、最高〜。
駅弁を食べながら、新幹線の特急スピードで現実へと戻りつつ、
そんなことを思ったのでした。










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ツール・ド・三遠南信!? [スロー旅]

2003年の旅日記を再編して掲載しています。


『ツール・ド・三遠南信!?』の巻

さあさあ、やって来ましたよ〜5月!自転車旅のシーズンが!
今回は、2003年5月19日(月)から5日間の連休を取っておいたのです。
これはもう、3泊4日で行くしかないっしょ〜!
2〜3日前から、「岐阜県の下呂温泉を中継地点にして奥飛騨温泉郷へ!」
という魅惑的な構想も浮上しておりまして、前日までには準備もバッチリ。
ただ、今回もトレーニングはまったくしておらずのぶっつけ本番ですが…。

ちなみにその準備とは…自転車はビアンキのシクロクロスモデル。
とはいっても、前回の旅でタイヤがバーストした際に、タイヤを標準装備の
35Cのブロックパターンありのものから、28Cのスリックタイプにしたので、
もうシクロというよりはツーリング車の、マイ旅自転車、愛車〜。
自転車屋に足しげく通い調整も済ませておいた。その自転車にヘッドライト、
新しく買ったインフレーター(携帯用空気入れ)、ペットボトル水、
サドルバッグが装着されています。サドルバッグの中にはワイヤーロックや携帯工具、
パンク修理キット、ヘッドライト用のスペア電池が。というわけで、ま、今まで通り。

そして今回からの新装備。まずはテールライト。赤く光るやつね。前回怖かったので。
夜間走行の安全性アップ!それからこれは新兵器っすよ〜、サイクルコンピュータ!
「コンピュータ」といっても、スポークにマグネットのセンサーを付けて、
速度や距離が計測できるだけのものなんだけれど。それでも、あれば楽しい小物!

自分が背負うザックには、これも前回と同じような感じで、必要箇所のみの地図、
お金、最小限の着替え、身のまわり品、それから使い捨てカメラと、
よりコンパクトにまとめた。それに追加して、スペアチューブ。
前回パンクしたときは持っていなくて痛い目にあったからねえ。

あとは当日、お気に入りのウェアを身にまとい、手にはグローブを装着。
コンタクトレンズ装用につき目の保護のためにサングラスをかけ、
相変わらず見た目と快適性重視でヘルメットはナシで、出発するのみ!

ところが初日、5月19日(月)は雨が降っていた…。
午後の遅くから雨は上がったのだけれど、今日は準備日にするしかない。
名古屋に電車で出て、旅前の最後の買い物日とした。が、目ぼしいモノはなく、
関係ないけれど欲しかったジーンズを買って帰ってきただけなのであった〜。


次の日、5月20日(火)。天気予報では「くもりのち晴れ」だった今日も、
朝から雨が降っているじゃあないの!いつでも出発できるようにと
雨が上がるのを待っていたけれど、気がつけばお昼過ぎになってしまっていた。
今日の出発をあきらめかけていると、午後1時半ごろ、雨は上がり、
少し晴れ間も見えてきた!今日出発しなければ3泊4日の行程は不可能、
魅惑の奥飛騨温泉郷にも行けない…出るしかない!
天候の不安はありつつも、準備OK出発だー!

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準備OKマイ自転車&荷物。

今回のルート予定は、自宅から、国道に出て北上、岡崎市、豊田市、瀬戸市、
愛知県を抜けて岐阜県は多治見市、可児市、美濃加茂市まで来たら、
そこからは飛騨川沿いに国道41号線をさらに北上、というもの。
JR高山本線で高山まで行ったとき、電車内から線路の近くを通る道を見て、
自転車でも走りやすそうだと思ったのが、この計画を構想したきっかけ。

ということで、自宅を出発。国道248号に出て岡崎市を北上。
まあ順調に走行していたのだけれどだがしかし!ポツリ、ポツリと、
国道1号線との交差点付近で雨が降ってきた!ついてねえなあと思いつつ、
近くの会社事務所が入っている建物の軒下で、雨宿りをすることにした。

すると、建物内のおばさんが出てきて、「いらない傘があるからあげるよ」と。
とてもありがたいお言葉。でも、自転車走行で傘はさしづらいし危ない。
それに自転車を濡らしたくない自分は雨が上がるまで待つつもりでいたので、
「いいですいいです」と丁重にお断りさせてもらった。それにしても、早くも、
いい人に出会えたな。こういう人とのふれあいが思いがけずあったりするから、
自転車ひとり旅はいいんだよなあ。

しかし、待てども待てども雨はやまない。時間もロスしているし、
今日はもうあきらめて家に帰ろうと思い始めていた。
ひまつぶしにサイクルコンピュータの速度や距離を見る。
ここまで14キロほど走ってきたのか。さらにひまつぶしに、
腕時計のクロノグラフ機能を再確認。普段使わないよこんなの。
雨はまだ上がらない。道の向こう側にうなぎ屋があって、悩ましくいい匂いがした。
関係ナイけど、「ひまつぶし」と「ひつまぶし」って似てませんか(バカ)?

1時間ほど待っただろうか、ようやく雨がやんできた。今日はもう家に帰ろう。
来た道を戻り自転車を走らせていると、また、雨が降ってきた。
ほんっっとうに、ついてないなあ。今度はカメラ屋の軒下で雨宿り。
目の前を中学生が徒歩や自転車で通り過ぎていく。自転車は濡らしたくないので、
雨中走行は絶対に避けたいところ。とにかく、雨が上がるのを待つ。

さらに1時間ほど経過。雨はまだ上がりそうにない。
小降りになり雨がやみそうに思えてきたところで、意を決して再び走り始めた。
しかし、道は濡れていて高速回転するタイヤが泥を巻き上げる。
自転車は泥で汚れ、背中もザックも汚れる。しかも、ほんっっっとうについてない、
またまた雨が降ってきた。もう、ヤケクソ。自分の運のなさに怒りが込み上げてきて、
思わず声も上がる。午後5時半ごろ、ようやく家に着いたものの、
自転車もウェアもザックも泥まみれ。もう3泊4日の行程は不可能。奥飛騨も無理。
「いつもこうだよ〜」!何かと雨に降られることが多い自分。
やり場のない怒りに充ち満ちていた。

ウェアを脱ぎ捨て、短パンに上半身裸。この日はその後、自転車やザックに
付着した泥をぬぐい去る作業で、終わった。


翌日、5月21日(水)。もう、モチベーションは下がりまくっていた。
昼下がりまで寝て過ごし、こんな目にあうのは、前回の自転車旅の文を
いまだにホームページに掲載していないからだとなぜか思い、急きょ完成させたり。
少し気が紛れた。精神的にまいっていたので、この日はある意味リハビリ日となった。
明日、どうしようか。1泊2日でも、どこか、行こうか。そんな気になれた。
下呂温泉?いや、電車で行ったことがあるし、最終目的地としてはちょっとな…。
そうだ、愛知県内の温泉地、湯谷温泉に行こう!昔、同じ鳳来町にある親戚の家まで、
クルマで連れていかれていたときに通った道で途中まで行けそうだし、
懐かしい気分にも浸れそうだ。距離は下呂と比べたら近いけれど、
温泉宿で、の〜んびりしてこよう。決定!明日、出発!


5月22日(木)、天気は晴れ!午前9時、自宅を出発!軽快にペダリング。
雨に降られて予定変更を余儀なくされたけれど、自転車はやっぱり気持ちいいなあ〜。
風を感じながら、道は蒲郡市の国道23号線に合流。市街を抜け坂を越えると海に出る。
海沿いを進み、2年前に通ったときにはまだ建造中だった『ラグーナ蒲郡』を横目に、
御津町へ。このあたりで左折して31号線へ、豊川市方面に向かう。

ここまで、特にこのあたりから、昔と変わらないのどかな光景が見てとれて、
ちょっと懐かしい気分にさせられた。クルマの交通量も少なくて快適。
豊川市、一宮町と軽快に自転車を走らせる。新城市に入ると国道151号線へ。
このまま国道をたどれば湯谷温泉まで行けるのだけれど、ここはあえて、
親戚の家までの道のりで途中まで行くことにした。こちらのほうがクルマも少なくて
走りやすいだろう。新城市街を避け右折、橋を渡り川を越える。
橋の真ん中で立ち止まると、やっぱりなんだか懐かしく感じる川の景色。
そして上流に向かい69号線、川沿いの別所街道を走る。あ、民家の庭にニワトリが。
道が、風景が、本当にのどかで懐かしい。途中、親戚の家への道から外れて、
懐かしロードはここまでにしたのだけれど、帰りにおみやげでも持って、
長い間行っていない親戚の家に寄っていこうかな、そう、思えた。

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たぶん昔も見ただろう川の景色。       ニワトリが放し飼いに。

宇連川沿いの69号線をさらに進むと、川の様相も上流のものに変わってきた。
それでも登り坂は少なく気持ちよく自転車走行を楽しんでいると、新城市から鳳来町へ。
長篠城址の近くを、赤引温泉を通り過ぎ、国道151号線に再合流すると、湯谷温泉だ!
もう来ちゃったのか!?時間はまだお昼前。温泉地は思っていたよりも小規模で、
本で紹介されている有名な宿はあるものの、全体的には寂れているように感じられた。
ここで折り返して帰ってしまうのはあまりにもつまらない。ようし、先に行ってやろう。
予定変更!行けるところまで行ってやる!その前に、飲食店で昼食を。
焼き鳥丼定食に五平餅!腹いっぱい。

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上流っていい。         焼き鳥丼に五平餅うまかったー。

のんびり昼食を終えると、午後12時40分ごろ、先に進むため出発。
じつは今回、やる気のなさもあって、湯谷温泉あたりまでの地図しか持ってきていない。
ということは、ここから少し先の地理はあまりわからないわけで、
どの町を通ってどこに行けるのかもよくわからん!ただ、国道151号線の標識には
『飯田120km』とあったりするので、このままこの道を行けば、長野県の飯田市に
たどり着くことだけはわかった。飯田か…残りの距離、「長野県」という響き、
ここからの目的地としては申し分なかろうて。よーし、行ってやるー!

と、意気込んで再出発はしたものの、ここからが今回の過酷な旅のはじまりだった。
だらだらと登り坂が続く続く。なんとなく予想はしていたけれど、山道ばかりじゃん!
しかしここは、軽いギアにして黙々とペダルを回転させ登る。時折、渓谷にかかる
「○○淵」という橋を渡る。はるか谷底に川。けっこう怖い。さらに行けども行けども、
目の前に立ちはだかる山、山、山。するとトンネルが現れる。トンネルを抜けると
下りに差しかかる。でも、下り坂はスピードが出る分あっという間だし、
帰りは逆に登り坂になるんだよなぁと思うとそんなには喜べない。
そしてまた登り坂へ、振り出しに戻る。着実に進んではいるので、
振り出しには戻っていないのだけれど、こんなパターンの連続!

登り坂は本当にキツい。とにかく消耗するので、水分補給は欠かさず行う。
というよりは、冷たいものを飲みたくてしようがなくなる。
自販機を見つけては、ゴクゴクゴク…ウマーイ!最高!自販機もない山道も続くので、
自転車に装着してあるペットボトル水もゴクゴク。ウマイ!
山道続きで、持ってきたペットボトル水はほどなくしてなくなった。
そしてあまりに厳しい登り坂は、自転車を引いて歩くことも。
休憩になるし、少しではあるけれど進んでもいるわけで。この先まだ長い。体力温存。

こんなにキツい山道ではあるけれど、いいこともあった。それは、やっぱり下り坂!
これほど気持ちのいいものはない。ペダルをこがなくても進む…どんなに楽なことか!
そして、ちょっとペダルを踏み込んで飛ばせば、時速50km以上!爽快!
山道の下り坂ではあまり飛ばすと危険ですが。実際、道幅の狭いところで
向かいから大型トラックが出てきたことがあって冷や汗かいた。
それから景色。山、川、農村、山あいの景観は、どれも素晴らしい。
あとは空気感。気温も平地よりも低くて、空気がおいしく感じられる。
沢から流れ吹く冷たい風。気持ちいい〜。クルマも少ない。自然の音色が感じられる。
ウグイスのさえずりも聞こえてきて、少し、和めます。

そんなわけで、とにかく長く感じられたが国道151号線、別所街道の山道を突き進み、
鳳来町を抜けたあと東栄町、豊根村と山を越え、茶臼山をかすめる形で新野峠に至り、
ついに長野県、阿南町に突入!標識の標高表示は1060m。キツいわけだよ!

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山の景色。           長野県阿南町へ。天狗?

ここからは、山を下る長い坂道。最高ーッ!
調子に乗って、湧き水で濡れた急カーブの路面で後輪がドリフトこいて焦ったりしつつ、
山道から抜け出ると、まっすぐなゆるい下りの一本道。その先には町が見える。
峠も越えたし、ここから先はもう登り坂もないのか〜と、少しほっとしたものの、
よく見るとさらに向こうには、また山が見える。やっぱりいやな予感…。
でも今はこの気持ちのいい道を進むのみ!

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まっすぐ一本道。これでも国道。

阿南町の道の駅を通り過ぎ、しばらく進むと、また登り坂になってきた。
さらに進むと、やっぱりか…もう完全に山道!それでもこの山道を乗り越えると下り坂。
標識は同じ151号線だけれど、遠州街道となっていた。もう登りはないか。
いや、先に山が見える。案の定、またまた登り坂に入る。

前半は下り、後半は登りといった構図で、阿南町の道のりもとても長く感じられた。
登り坂の先に、いつものごとくトンネル。短いそのトンネルを抜けると、
顔写真入りの標識が。『ようこそ下條村へ 峰竜太のふるさとです』…ププ。
噂には聞いていたけれど、これか〜!そしてここがあの下條村かあ!
思いがけず峰竜太のふるさと下條村に出くわし、少し笑えた。

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そうですここが峰竜太のふるさとです。

峰竜太の、いや、下條村の標識を越えるとそこからは下り坂だったが、
まだ向こうに山が見える。はいはい、覚悟はしていましたよ、また登り坂。
ふう、あきれてものもいえないというか疲れてものがいえない感じではあったけれど、
ここまで来てしまったらもう、意地でも飯田市街までは行かねば!

トンネルを抜け、道の駅を通り過ぎ、『お気をつけて』と下條村を出るときも
峰竜太の標識があり別れを告げると、午後6時ごろ、予測通りの範疇か、
ついに、飯田市に到来!来たか〜。でも市街はまだ先か。もう少し!

しばらく下り坂を進むと『天竜峡』の標識が。天竜峡は、名古屋から飯田経由のバスと
JR飯田線を乗り継いで前に来たことがある、ちょっと地味な観光地。
来たことあるところに泊まって帰るのもどうかと思い、ここはスルー。

市街はまだか。飯田市内の道のりも長く感じられる。もう夕方、日も落ちかけている。
走行中、左側にコンビニを確認、そのまま直進しようとした、その時!
車道と歩道との微妙な段差にタイヤをとられてバランスを失い、瞬間、
自分のことよりも「自転車大丈夫か?!」と思い、手を着き足を着き受け身を取るも
コンビニ前の歩道付近で落車!仰向けになって背負ったザックがクッションとなり、
頭を軽く地面にコンと打った。大の字、天を仰ぐ。自転車は自分の上に。
すぐに起き上がり自転車を見る。自分も自転車も、軽い擦り傷とチェーン外れ以外は
問題なさそうだけれど、「やってもうた〜」と思わず声を出してしまった。

コンビニ駐車場の隅に自転車を持っていき、チェーン外れを直す。
手が油で汚れてしまったので、コンビニに入り手を洗う。ついでにドリンク購入。
同じ白色のアスファルトでわかりにくい車道と歩道の段差と、夕刻で視界が悪かったのが
落車の原因か。危なかった〜。クルマがガンガン走っているところで落車なんてしたら、
本当に危ないな。気をつけよう。気を落ち着かせてオレンジジュースでエネルギー補給。
それにしても、市街はまだなのか。少し不安に思い、駐車場で人に道を聞いてみた。
が、説明はよくわからなかった。女の人に聞いたのが間違いだったかな。
でも少なくとも、このまま151号線を行けばいいことだけはわかった。
ということで、忘れもしない、セブンイレブン飯田松尾代田店をあとにした。

さらに薄暗くなってきたので、先を急ぐ。サングラスは視界が悪くなるので外した。
コンタクト目にはホコリや塵防止のため必需品なのだが(ハードコンタクト装用時に
ホコリや塵が目に入るとものすごく痛いのです)…。ここからしばらく進み
急な坂道を下り切ると、また登り坂!どうなってんの151号線は。
山を越えて村、また山を越えて村、この繰り返しじゃん!
自転車にはまったく不向きだな〜。それでも、この道を行くしかない。

かなり暗くなってきた。もう夜。そろそろ折り返し地点、宿泊先を決めなくては…。
黙々とペダルをこぐ。すると道路左側の高台に『天空の城』という看板が!
あ、雑誌で見たことがあるような…飯田市街でもいい宿泊施設だ。
もうここにすんなり入りたかったけれど、この時間では食事は出ない。
このあたりにコンビニや飲食店はなさそうだし、やはり市街、
こうなったらJR飯田駅まで行って、おみやげも買っておこう!

しばらくゆるい坂道を登り進むと、ようやく、見たことのあるリンゴ並木が。
飯田市街地に出た。ところが、地図もなく、夜間、駅がどこなのかわからず、迷った!
仕方なく、交差点で信号待ちのおばさんに道を聞いてみた。
すると、説明はよくわからなかったものの、「これ持っていって」と、
まんじゅうを手渡された。「え?いいんですか?ありがとうございます〜」。
お礼をいって別れ、手探りで駅へと向かう…さ迷いさ迷い、
ようやく、JR飯田駅に着くことができた〜。

飯田駅に来たものの、あてにしていた売店はもう閉まっていて、観光案内所もなさそう。
しようがない。このあたりのコンビニで簡単に夕食を買って、
宿泊しようと思い市街を巡ったものの、これといった旅館、ホテルがない。
やはり、通り過ぎてきた『天空の城』かなあと思い始めたのだがしかし!
また迷った…。夜間は本当に道に迷いやすくなる。これ自分の弱点だな…。
駅前の道を行ったり来たりしてもどうにもわからなかったので、
また人に道を聞いてみた。おじいさんだったので少し頼りなく感じたけれど、
そのおじいさんのいうことを信じて、その方向に走り出した。

しばらく進むうちに、見たことのある光景に気がついた。こっちだ!間違いない!
おじいさんのいっていたことは本当だった!ありがとうジッチャン〜。
そしてようやく、『天空の城・飯田城趾三宜亭本館』にたどり着いたのであった〜。

建物に近づくと、カラオケの騒がしい音が聞こえてきた。適当なところに自転車を置き、
入口からフロントへ。部屋はツインだけれど空きがあって、午後8時半ごろ、
無事チェックインすることができた〜。風呂は天然温泉で朝食は出る。
少し安くしてもらって9千円ちょっと。ま、いいでしょう。
売店もあるらしく、おみやげは明日ここで買っていくことにした。

部屋に入り、すぐにウェアを脱ぎ浴衣に着替えた。はあ〜、リラックス〜。
お茶とお茶請け菓子をいただく。おばさんにもらったまんじゅうのことを思い出し、
よく見ると、飯田銘菓かと思いきや、なぜか包装にアホの坂田のイラストが入っていた。
困惑(笑)。でもいい思い出になるだろう、これはおみやげとして持って帰るぞ〜。
テレビを見つつ、コンビニで買った夕食を食べる。置いてあったパンフレットを見ると、
飯田市街の簡単な地図が載っていた。こうだったかー!納得。
地図さえあればすぐにわかったものを〜。

そうこうしているうちに午後11時。そろそろ風呂にでも入りましょうか。
パンフレットによれば、湯は天然温泉で、飯田城温泉というらしい。
聞いたことはないが、平成7年地下1300mから出湯とあるから、
無理やり掘り出したんだろう(笑)。実際、入ってみると、
湯はトゥルっと若干のぬめりがあり確かに温泉。ぷはぁ〜、極楽じゃ〜。

ひとっ風呂浴びて部屋に戻り、少しテレビを見てから、日付も変わって午前12時、
コンタクトレンズを外して歯を磨く。今日は早めに寝ることにした。
明日は朝食を7時半に頼んであって、その前に朝風呂にも入りたいし、
いつもよりも早起きだ。疲れも取っておきたい。それに今日の難行を考えると、
早めに出るに越したことはない。腕時計のアラームをセットして、就寝。


ピピッ…5月23日(金)、朝。午前6時30分ピッタリ、アラームで目が覚めた。
おもむろにテレビを見る。画面左上の天気予報を見ると、南信(南信州ということか)、
晴れのち、雷雨マーク!確率50%!ヤバい…これはますます、早めに出発しなければ。

それはさておき、ここは朝風呂へ行っておかないと。
露天風呂に入ると、お、今は晴れている。露天風呂、眺めがいいねえ。極楽極楽。
朝風呂もほどほどに、部屋に戻ってウェアに着替え、朝食の場所へ。
ほかの宿泊客を見ると、オッサンやジッチャンバッチャンばかりだった。
そうだろうよ、こんな観光地でもないところでしかも平日だったら。
朝食は、いわゆる旅館の朝食といった感じでなかなかよかったです。

朝食を済ませて部屋で身支度を整え、部屋を出ると売店へ。おみやげを見る。
迷って迷って、クッキーやチョコレート、馬肉やいなごの缶詰をチョイス。
配送しようかと思ったけれど、明日にも渡したいからな、持って帰ることにした。
ザックは荷物でいっぱいになり、かなり重くなった。大丈夫か?

フロントにて会計、チェックアウト。そうだ、もっと楽な道はないものか。
聞いてみることにした。愛知県の岡崎方面に戻りたいことを告げると、
フロントの人いわく、「国道151号線よりも名古屋・豊田方面に向かう
153号線のほうがよいのでは」ということだった。地図がないのでなんとも
確認のしようがなかったけれど、この人のいうことを信じてみようと思った。
それほどに、来た道、151号線はきつかった。旅館周辺の地図をもらい、
まずは国道153号線へ向かうことにした。旅館をあとにする。

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泊まった宿。高台にあって見晴らしよい。

午前8時40分、午後の雷雨(予報)から逃れたい一心で、帰路、出発!
地図があれば、飯田市街はすぐに把握できた。それでも少し不安に思いながら、
この道かな〜と153号線をめざして市街を走っていると、しばらくして標識で
153号線を確認できてひと安心。『名古屋120km・豊田100km』とあり、
やはり153号線のほうが家まで近そう。よっしゃ、この道を突き進むぞー!

「いい道が続いている」と旅館のフロントの人はいっていた。
しばらくは平たんな道が続いていたので、153号線で正解だったとも思えたけれど、
だらだらと長い登り坂もあったりで、ペースは上がらず。飯田市を出て、阿智村へ。
そしてこの道の向こうには、やはり山が見えた。いやな予感がした。

予感的中。長野県に出入りするには山を越えるしかないのか!
鬼の山道アタック。うねうねと登っていく道、標識には『登坂7%8%』とある。
数字を見てもよくわからないけれど、キツ過ぎる坂。降参〜。
今日はもう無理をしないことにした。急な登り坂は、自転車を引いて歩く!
ザックも重たいし、昨日以上に体力温存だ。自販機で十分にジュースで水分を補給。
まったく、こっちも山道ばっかりじゃん!

自転車なのに急な登坂は歩き作戦で、スローペースながらも、浪合村に到達。
とろとろと走り進むとようやく、『寒原峠』の標識が。標高1073m、
電光掲示板には気温17℃の表示。涼しいのはありがたいんだけれど、
登り坂でのペダリング運動はそんな涼しさをもかき消してしまうんだよな…。

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寒原峠。

峠からは下り坂。低い気温も手伝って下りは気持ちいい。
ただ、あまり急な下り坂が続くと逆に疲れる。ブレーキングにクルマに気を使い、
重くなったザックも相まって首や肩が痛くなる。それに疲れもあってか、
スピードを出すと昨日よりも手がぶれやすい。慎重に、スピードも抑え目にした。

下り坂もほどほどに、またすぐに登り坂となった。例の作戦で乗り越える。
やっとの思いで『治部坂峠・標高1163m』の標識、トンネルを抜けると平谷村へ。
下り坂を慎重に走り切ると、またすぐにだらだらと登り坂。道の駅でドリンクタイム。
そこではバイクツーリングの人たちを見かけた。バイクは楽だろうよ〜。
ただね、自転車や徒歩の自力旅でないとわからないよさもあるんだよ〜。

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治部坂峠。

まだ長野県。いつ雨に降られるかわかったもんじゃない。先を急ぐ。
またまた登り坂を行くと、赤坂峠に到達。平谷高原スキー場の施設を横目に、
平谷村から根羽村へ。ほんっとにこのへん、村ばっかりだなあ。
ここからは下り坂が多かったけれど、慎重に走り進む。

急な下り坂が続いて逆に疲れ始めてきたあたりで、よっしゃ〜!ようやく、
ようやく愛知県、稲武町へ!これで雷雨も免れたのか?153号線を川沿いに、
ゆるい下り道を行く。のどかな風景まだまだ山の中。そのうちだらだらと登り坂になり、
夏焼温泉の小さな温泉施設を通り過ぎる。坂を越えると、稲武町の中心地?に出た。

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ようやく愛知県に戻って来た〜。

中心地とはいっても、国道から少し離れたところに住宅が多く見られる程度で、
標識では商店街の表示もあったけれど確認できず、印象は“集落”だった。
ただ、国道沿いには大きな道の駅の施設があり、公共の温泉施設もあった。
人出も多い。時間は午後1時半。ここで昼食を済ませておかないと、
この先まともな飲食店がないかもしれない。そう思い、この施設群の一部なのか、
なかなか雰囲気のいいレストランで昼食をとることに。パスタランチのセットを注文。
自転車運動後のせいか、とてもおいしく感じられた。

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自転車旅はメシがうまい!!

さあ、昼食も済んだことだし、もう少し、がんばって行きますか。
しかし出鼻をくじくように、だらだらと登りの坂道が続いた。
途中、周辺地図の標識があったので見ると、この先に峠のトンネルがあって、
そこを越えると足助町ということらしい。この地味な登り坂はそこまでの辛抱か。
長く感じられたもののしばらく走り進むと、現れた「伊勢神トンネル」。ここが峠か。

しかし、この伊勢神トンネル、これまでいくつものトンネルを通り抜けてきたけれど、
このトンネルが一番凶悪だった!歩行者や自転車が回避できるスペースはほぼなく、
車道の幅も狭い。対向車線とこちら側の車線でクルマがすれ違ったら、
もう自転車の逃げるスペースはない。おまけに1km以上続く長さ。
これはもう、自転車を引いて端を歩いていくよりどうしようもない。
テールライトを点滅させて、トンネル内の左端いっぱいを、
恐る恐る歩いてやり過ごしたのだった。

というように、今回はトンネルが多かったので、日中でもトンネル内では安全のため、
テールライトやヘッドライトを使うことが多かった。それが当たり前かな?
特に今回から装備したテールライト、着けておいてよかったと思う!

悪の伊勢神トンネルを抜けると、下り道が待っていた。そしてトンネルの手前から
すでに足助町に入っていたようだった。足助町といえば紅葉で有名な香嵐渓。
地図のない自分には、あの香嵐渓にたどり着くのはちょっと思いがけなかった。
香嵐渓へは豊田市から自転車で来たこともあるので、あと少しという思いが強まった。
道すがら、ドライブインの喫茶店名が『紅葉』だったりする。
だんだんと、香嵐渓に近づいてきたのが感じられた。

そしてついに、香嵐渓に到達!当然、今は紅葉の季節ではないので観光客は見かけず。
こんな季節外れに来るのは旧街道が好きな人だけだろう。そう、今まで走ってきた道、
中馬街道っていうんだよな。そういえば稲武町だったかダムの発電施設付近の道の壁に、
昔の過酷な峠越えの様子が描かれていた。当時の運輸移動の大変さに想いをはせながら、
壁画の人たちの顔が本当に苦しそうで、こちらも重たい気分になって疲れ倍増だった。

紅葉の季節ならクルマでいっぱいになる駐車場にあった自販機で、ジュースで補給。
すぐに香嵐渓をあとにする。当初の予定としては、豊田市まで行って、
そこから国道248号線に乗って岡崎市方面に向かうつもりだったのだけれど、
思いがけず香嵐渓にたどり着いたので、ここからは岡崎市に向かう別のルートがある。
香嵐渓から153号線を少し行くと、左折する道。足助街道、39号岡崎足助線。
前に豊田から自転車で香嵐渓に来たとき、帰り道はこちらの道を通って
豊田方面へ向かったっけか。というわけで、途中までは見知った道だ。

この岡崎足助線、岡崎市で国道248号線に合流するまで、穏やかに下りが続いていて、
とても走りやすかった。まさに山から街に下りていく感じ。
豊田市に入ると、山あい、徳川家康の祖、松平氏の出身地の松平郷を通り抜けていく。
そして岡崎市へ。首が痛い、肩が痛い、腰が痛いとうような疲労はあったものの、
比較的楽に岡崎市まで到達することができた。

地元といってもいい岡崎ではあるけれど、まだここは岡崎市の端。
岡崎まで来たら家までスグという固定観念もあって、ここからが意外と長く感じられた。
39号線を道なりに進み、やっと国道248号線に合流。このままこの道を行けばOK。
しかしここからも長く感じられる。今までの道に比べて道は複数車線あって広いけれど、
とにかくクルマの交通量が多い。景色も空気も悪い。車道や歩道内の自転車道を行く。

ようやく、国道1号線との交差点、4日前に雨宿りした地点を通過。
ペースは速くはない。そうだ、このまま行けば、行きつけの自転車屋が近い。
転倒したし、一度自転車を見てもらって今回の旅を終えよう。そう思い、少し寄り道。
自転車屋では待たされたものの、自転車を見てもらい調整完了。
ホイールの振れ以外は特に問題もなく、これでひと安心。

さあ、家に帰るかー。ここからは完全に知った道。焦らずのんびりと、家路を行く。
248号線から離脱、県道へ。刻は夕方から夜へ、かなり薄暗くなってきた。
田んぼの真ん中を突っ切るアスファルトの道を走り抜け、自宅のある集落へ。
そしてついに、午後7時半、自宅に到着!ゴールだ〜!というような感慨は
あまりなかったものの、少し、ほっとした。すぐにウェアを脱ぎ捨てて、
冷蔵庫にあったジュースをがぶ飲み!ゴクゴクゴクゴク…ンマーイ!!
シャワーを浴びて汗を流す。ぷはぁ〜、リラックス〜。

ということで、今回は1泊2日だったけれど、やっぱり自転車旅はいいもんですねぇ。
長い道のりと、この達成感がたまらんのですよ、スロートラベルは。
また自転車でどこか遠く、行くしかないなー!

そしておまけ。今回からの秘密兵器、サイクルコンピュータ!そのデータ結果は?!
まずは1日目、走行距離159.54km、走行時間8.48.44h、平均速度時速18.1km、
最高速度時速53.6km。2日目、走行距離129.87km、走行時間7.47.43h、
平均速度時速16.6km、最高速度時速44.3kmでした〜。
いくら山道ばかりだったとはいっても、遅すぎるでしょ〜。
ま、自転車を引いて歩いていた分も入っているし、素人だし、しようがないか〜。
2日目の疲労とビビりっぷりも見てとれる。それからなんといっても、
帰りの道のほうが距離が断然近い!旅館の人のいうことを聞いてよかった。
同時に自分の無計画さ加減も思い知らされた。まぁ、のんびりゆっくり、
時間をかけて遠くに行く、LSD(ロング・スロー・ディスタンス)、
スロー旅を実践できたっつうことか!うまくまとまったところで、終わり!




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ふたたび!自転車へ遠くへ! [スロー旅]

2002年の旅日記を再編して掲載しています。


『ふたたび!自転車で遠くへ!』の巻

前回の無謀な決行から一年、もう前々から、また行くぞ〜と決め込んで自転車屋に通い、
ウェア類も買っておいたのです。トレーニングはまったくナシのぶっつけ本番!
2002年5月8日(水)からの9日間の連休中に、自転車で遠くへ行くことに決定!
本当に、トレーニングをしていないどころか、その自転車にもロクに乗っていない状態。
それでも前回と比べてアドバンテージがあるとすれば、前回の自転車旅での経験!か?!

連休初日の5月8日(水)、この日は天候も微妙で、出発前の準備に徹することにした。
自転車は前回と同じ、ビアンキのシクロクロスモデル。自分の走行スタイルは、
車道を走ったり歩道を走ったりという感じで、段差を越えることも多いし、
ロードレーサーよりもタイヤが太くて丈夫そうなシクロクロスが
やっぱり合っているのかなあと思えます。ちなみにシクロクロスって、
競技としてはロードのオフシーズンの冬に行われているらしいです。

さてさて、今回の自転車への装備。前回とほぼ同じく、ヘッドライト、
インフレーター(携帯用空気入れ)とペットボトル水を装着、
サドルバッグにはワイヤーロック、携帯工具、パンク修理キット、
ヘッドライト用のスペア電池などの小物が収納してあります。

それからこれ重要、ザックへの荷物。携行品を最小限に抑える。
ザックを背負う以上、荷物が重たいのはそのまま体力の消耗につながると前回痛感した。
地図はリング形式のものを買って必要箇所のみをピックアップ。お金、最小限の着替え、
身のまわり品、あとは使い捨てカメラなどを詰め込み、前回よりも大幅に減量した。

そしてウェア。前回はグローブとパッド入りレーサーパンツを身に着けてはいたものの、
それら以外はTシャツ短パンなど普段着だった。今回は自転車専用を用意!
これまでサイクルウェアはハデ過ぎてちょっと…と思っていたけれど、
やっぱり機能面は捨てがたく、それにハデ過ぎずカッコイイのを見つけたんだよね〜、
「エチュ・オンド」ってスペインのメーカーの。でも相変わらずヘルメットはナシ。
だって似合わないんだもん…。サングラスも似合ってはいないんだろうけれど、
これはコンタクト目の保護のため必要なのです。


5月9日(木)、今日も天候は微妙。しかし決定!今回は大阪方面に向かうことにした。
以前から漠然と、「西へ行くなら3日で尾道」という目標設定もあったりして。
そこまで行けるかどうかはまだわからないけれど、午前9時ちょっと前、自宅を出発ー!

天気は本当に微妙。いつ雨が降ってくるのかというような曇り空。
それでも久しぶりの旅自転車走行で、気持ちイイー!自宅のある町から、
西尾市、岡崎市、そして安城市と進み、JR三河安城駅周辺でさっそく少し迷うも、
知立市へ抜けて国道1号線に出た。今回も1号線をたどって、大阪方面へ向かう。
一番わかりやすくて、何より最短ルートだからな。やむを得ない迂回以外は、
1号線をひたすら走行することになる。しかし、やはり排気ガスがひどく空気は悪い。
これはもう仕方がないことなのか〜。

知立市から刈谷市、境川を越えたら三河から尾張の国に。豊明市を抜けると名古屋市へ。
有名な桶狭間を通り抜けて、JR笠寺駅を過ぎたあたりで、ん?何か音がする…タイヤだ!
後輪、パンクだ〜!!マジすか〜!前回はタイヤのトラブルはまったくなくて、
だから今回はスペアチューブを持ってこなかったのに〜。

今日はもう出直そうかなぁ…とヘコみまくりながらも、修理にかかる。
見ると、タイヤからチューブにかけて、長い針金が刺さっていることがわかった。
国道のヤロ〜…なぜか道が恨めしい。針金はタイヤの繊維に絡んで、
手ではびくともしない。仕方がないので、どこかで工具を借りることにした。

自転車を置いて少し歩くと、『イトウコーヒー』なる店を発見。
コーヒー店といっても喫茶店ではないようで、どうやらコーヒー豆の卸し兼小売り業?
そんなことはどうでもいい、そこで事情を説明して工具を貸してもらえないかと頼むと、
快くペンチなどを貸していただけた。店の駐車場らしいところで修理していいとのこと、
お言葉に甘えて、そこでやらせていただくことにした。

それでも針金はなかなか抜けない。気づいたらもう昼休み時間、
コーヒー店の男手が帰ってきて見てもらったりしながらも、結局、タイヤ部分からは
完全に針金を取除くことはできず、チューブ部分からのみなんとか針金を取り除いた。
チューブにゴムパッチを貼ってパンクの応急処置は施したものの、
針金との悪戦苦闘でタイヤはバースト気味になってしまった〜。

イトウコーヒー店の人にお礼をいって、駐車場で考えた。雨も降りそうだし、
今日は帰ろうか。いや、そのまま突き進もうか。それとも、知っている最寄りの
自転車屋で確実に修理して、それからどうするか考えようか…。
よし!何はともあれ、まずは自転車屋に行くことにした。

出発しようかというその時、コーヒー店のお客なのか、通りすがりの自転車のおばさんに
「どうしたの〜?」と声をかけられた。「パンクしてしまって修理を」と経緯を話すと、
そのおばさんも自分と同じ岡崎方面の出身らしく、「これでお昼でも食べて」と、
なんと千円札を差し出すじゃあないの!最初は丁重にお断りしたけれど、
「岡崎(出身)と聞いたら黙っていられない」と押されて、厳密にいえば自分は
隣町の人間で岡崎出身じゃあないのだけれど、有り難く、ありがたくいただいた。
世の中にはこんないい人がいるのかと、本当にありがたい気持ちでいっぱいになった。

そろそろと自転車に乗り出発すると、すぐにレストランがあったけれどそこはパス。
まずは自転車修理!自転車屋まで行くことに。後輪を気にして気にしつつこぎ進む。
ふと、交差点の信号待ちでパンク箇所のタイヤを見ると、バースト気味のタイヤから、
チューブがぷくっと飛び出してきている!ヤバいな…と思いつつも
自転車を引いて歩こうとした瞬間、パン!とチューブが破裂した!!
ブレーキシューに飛び出したチューブが擦れて、破裂したのだった。またパンクかよ…。
仕方ないので、そこからは自転車を引いて、歩いて自転車屋に向かうことにした。

歩いて歩いて、ようやく自転車屋に到着。店の人に状況を話すと、なんだか冷たい態度。
そんなに顔見知りではないし、わかってはいるけど、少しムカついた。
タイヤはもちろん換えることになった。しかも、今までのタイヤはリムに対して
太すぎるとの指摘。シクロだし、完成車のままなんだけどなあ…。
釈然としないまま前輪後輪ともタイヤとチューブを交換。タイヤは35Cから28Cに細く、
パターンもなくスリックになって、以前よりも舗装路を走りやすそうになった。
パナレーサーの「ツーキニスト」。名前とロゴがダサいけれど、機能面は期待できそう。

自転車屋をあとにして、国道1号線に戻る。時刻はもう午後2時ごろだろうか。
家に帰るべきか、行けるところまで行くべきか。
考えて考えて、とりあえず、行けるところまで前に進むことにした。

でももう、モチベーションは下がりまくっていた。パンク修理にタイヤ交換、
相当のタイムロス。悪化しそうな天候も手伝って、帰る気は満々だった。
しかし前に進むと決めた以上、とりあえず、帰るわけにはいかなかった。
コンビニのイートインで遅めの昼食をとる。サンドウィッチ。オレンジジュースが噴射!
服が汚れる。今日は本当にツいていないな〜。さっさと食事を済ませて、なんとなく、
自転車をこぎ進める。あ、中古車の『スーパージャンボ』だ(わかる人はわかる)。

名古屋市を抜け、蟹江町に至り、佐屋町、十四山村をかすめて弥富町を越えると
愛知県から三重県へ。木曾川、長良川の大橋を越える長島町、そして桑名市、
川越町を抜けると、四日市市に。市街を通り過ぎたころにはもう夕方。
地図で行く先の道を確認すると、国道1号線がバイパスになっているようだった。
自転車を拒否するバイパスの迂回で前回も迷ったわけで、
今回は前もって回避することにした。鈴鹿市街の方に抜けるコースを選択。

しかし!それで迷った…。鈴鹿川を渡るころには夜になり、心配していた雨も
ぱらぱらと降ってきた。夜道で迷うのって、本当に不安なんだよ〜。
なんとか軌道修正をして街に出ると、塾帰りだろう子供に道を聞いたりして、
鈴鹿駅にたどり着いた。これでもう市街を通る道もわかるぞ〜。

鈴鹿市街からは、鈴鹿環状線、54号線を西に直進。鈴鹿サーキットが近いせいか、
宿泊できるシティホテルも点在していたけれど、まだ早いと思いパスした。
そして、国道1号線に戻り亀山市に入ると、さらに雨が降り始めてきた。
雨は好きではない。自分が濡れるのはともかく、ザックが泥で汚れたり、
自転車が濡れるのがいやなのだ〜。そもそも、雨の装備を持ち合わせていない。
午後9時、ちょうどお腹も空いてきたので、雨宿りも兼ねてファミレスに逃げ込んだ。

店内では、自転車乗りの格好は浮いているように思えた。
一応、普通に店に入ってもおかしくないようなデザインを選んだつもりだったのにな〜。
適当に食事を済ませて(カレー、サラダにドリンクバー)、地図でこの先の道を確認。
雨はまだ降っているけれど、泊まるところの確保もしたい。先を急ぐ。

ファミレスを出て少し走り進むと、ラブホテルの広告看板が気になった。
宿泊場所の候補だよな。雨は降っていて、食事は済んでいて、あとは泊まるところだけ。
さらに進むと、国道沿いの、明らかになラブホテルがそこにあった。駐車場は屋根付きで
自転車が雨にさらされないし、隣にはコンビニもある。なかなかいいかもしれない。
時間的にももうここしかないと思えたので、今日はここに泊まることにした。

その名も、『ホテルチャペルココナッツ』。ラブホテルだけあってベッドはダブル!
浴槽も大きくジャグジー完備!モーニングサービスもあって、申し分ないっす!
自転車は屋根付き駐車場に置けて雨も回避できなおかつ盗まれにくいだろうし、
う〜むラブホテルって…じつは自転車旅にはいいんじゃないの〜!
ただ、唯一の問題は、少しむなしい気持ちになることか…。

この日はアクシデント続きで、もう、まいっていた。
知り合いに電話をしたりして気を紛らわし、明日は帰ろうという気にさえなっていた。
だからこそ明日も雨という天気予報が気になりつつ、眠りに入った。


5月10日(木)、朝、起床。窓から外を見ると、やっぱり雨だ…。
天気予報も当然、雨。モーニングサービスの朝食をいただき、
テレビを見ては雨を気にし、窓から外を見ては雨を気にし。
チェックアウト時間は12時までなので、それまでは待てる。
のんびりできるし、いいねえ、チャペルココナッツ。

午後12時。まだ雨は降っている。チェックアウトの時間なので仕方なく出たものの、
駐車場で待てども待てども、一行に雨はやむ気配がない。雨でも走り進もうか…
天気予報も考慮して悩んだ結果、出費やむを得ず、またホテルに戻ることにした。

隣のコンビニで昼食を買い、再びチェックイン。予報では今日は一日中、雨。
つまり、同じこのラブホテルでひとり、もう一泊することになる〜。
しかも、昼にインしたフリ−タイムとは別に、宿泊時間になったらチェックインを
やり直して料金もまたその分かかる。交渉して昼の部屋よりも安い部屋に
変えてもらったけれど、かなり出費が痛い。

夜はまた隣のコンビニで夕食を買ってきて、室内で食事。
昼から夜まで、テレビを見たり、外を見たり、寝たり、ラブホに一日缶詰め状態…。
その代わり、お菓子やドリンク、アロマオイルなどホテルのサービスは
利用できるだけ利用させてもらいました。やっぱり、案外いいよラブホテル(笑)。

明日の天気予報を見てみる。明日は朝から晴れるらしい!出発はできそうだ。
そうだ、帰るのか、行けるところまで行くのか…。風邪なのか排気ガスのせいなのか
ノドがつぶれていたけれど、ここまで来たら(お金をかけてしまったら)
もう行くしかない!先に進むことを、決断した。


5月11日(金)、午前7時、起床。2度目のモーニングサービスの朝食をいただき、
のんびりと身支度を済ませて午前9時、ホテルをチェックアウト。出発〜!
今日は天候もよくてすがすがしい気分。めざすはとりあえず、京都だ!

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お世話になったチャペルココナッツ。

亀山市から関町に入る。しばらく走り進むと、『この先鈴鹿峠』の標識が!
鈴鹿峠か〜。心してかからねばと、気合いを入れて坂道を登り進む。
すると、意外に早く峠のトンネルまでたどり着けてしまった。
前回、悪魔の箱根峠を経験していたせいもあってか、そう思えたのかもしれない。

峠は越えた。トンネルを抜けると滋賀県は甲賀郡、土山町に突入。
そこからは下り坂!自転車にとっては天国!クルマの交通量が案外多いので、
全開とまではいかないけれど、飛ばす!コーッという走行音とともに、
アスファルトの上を自転車は高速で転がってゆく。

坂を下り切り、ここから先はまっすぐ、延々と国道1号線を進む。
土山町から水口町、甲西町、石部町、文にしたらスグだけれど、本当に延々と。
そして、栗東市へ。栗東市といえば、JRA栗東トレーニングセンター!
でも競馬にはあまり興味ないや(笑)。ここまで来ると琵琶湖が目前。
国道を離脱して、草津市に入り湖沿いのさざなみ街道を走ることにした。

さざなみ街道。琵琶湖沿いを走る有料路のような整備された道路で、
自転車道も整っていて、景色も相まってとても気持ちよく走ることができた。
琵琶湖はデカいなあ。釣り人や賑やかなバーベキュー大会を横目に、走り進む。

湖沿いの街道から国道1号線に再合流、大津市へ。大橋を渡り石山を抜け、先を急ぐ。
ほどなくして登り坂が多くなってきた。自然と自販機に手が伸びる。
この峠?山を越えると、ついに京都!ここが意外ときつく、しかも道が狭い。
前方で自転車を引いて歩いているオジサンが邪魔だ。

この坂を登り切ったあたりで、京都は山科区に入る。そろそろお昼。
飲食店が気になりながらも、京都市街に到達するまではと我慢する。
そしてついに、京都の中心地といえなくもない、JR京都駅周辺に到着!
東海道ならこのあたりが終点なのか!?市街では自転車を引いて歩く。
やはり京都、観光客や修学旅行の学生の姿が見られて、旅情をかき立てられた。
もういい加減に昼食をとらないと。自転車をビルの狭間に置いて飲食店を探し、
ポルタ地下街の和食屋で、うなぎご飯に茶そばの定食という、
京都らしい(か?)昼食をいただいた。

さて、これからどうしようか。京都で一泊、折り返して帰路に着こうか。
でも、まだ今日は時間がある。さらに大阪方面へ、行けるところまで行っちゃうか?!
よーし、行くことにした!とりあえず、めざせ大阪!

京都を出発、国道1号線をたどって大阪へ向かう。さすがに大都市、
国道はクルマの交通量も多く、排気ガスも多い。ここからが長く感じられ、
自販機でドリンクを飲む回数も増えた。京都府は久世郡久御山町、八幡市と越え、
大阪府へ。枚方市、寝屋川市、守口市と抜け、地下鉄の駅を見かける。
大阪市に入ったか。そして、ついに大阪は梅田、中心街に。

この時点で夕方過ぎ、まだ行けると判断。これまで自転車で走ってきてわかったこと、
自転車ツーリングは1時間20kmだな。大阪の中心街を通り過ぎ、
新たに目標を神戸に設定。めざせ、神戸は三宮!

大阪の中心からは、国道1号線が2号線に変わる。ここからは国道2号線をたどって、
神戸に向かう。夕日の淀川の大橋を渡り、ひたすら自転車をこぎ進む。

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淀川にかかる大橋からの夕日。

ほどなく兵庫県尼崎市に入るも、神戸はまだまだ先。
クルマの交通量は多いし、だんだんとあたりは暗くなってきて、走りにくい。
途中、一般の自転車乗りやクルマと、こちらの心の中だけで競争になったりする。
かと思えば、ものすごく速いロードレーサーが自分を追い抜いていき、
いや、クルマも追い抜いていき、すっげえ…と競争する気も失せたり。
こんなのを見ると、歩道よりも車道のほうが自転車を走らせやすいと思えてくる。
夜間で段差も見えにくいこともあり、やっぱり歩道は走りにくい。
このあたりから、意識的に車道を走ることが多くなった。

地図で見るとスグなんだけれどな…尼崎市を越え、西宮市、芦屋市、そして神戸市、
知らない道での夜間走行の不安感もあってか、三宮はとても遠くに感じられた。
午後9時前、神戸市街で少し道に迷いかなり不安になりつつも、
やっとの思いで、三宮に到着〜!!

市街は人も多く、自転車では走りにくい。自転車を引いて歩き、すぐに宿泊場所を探す。
なかなか目ぼしいところはない。なんせ自転車持ちだからなあ。
探して探して、ぐったりしてきたところでようやく、自転車が置けるスペースもある、
中心街から少し離れた『ホテルアマリー』というところにたどり着いた。

フロントで自転車のことと、部屋が空いているかを聞こうとしたら、
思うように声が出ない!もう、完全にノドがつぶれていた。なんとか声を絞り出して、
空室があることを確認。宿泊代はちょっと高いけれど、ここに泊まることにした。

部屋に入りベッドに寝転がる。ぐはあああ、疲れた〜。でもやった!神戸だ!
よーし、自分にご褒美。夕食は美味いものでもいただこう。夜の市街に繰り出すと、
金曜日だからか人が多い。飲食店も遅くまでやっているようだ。
風俗店の呼び込みが五月蝿い。有名な洋食店『赤ちゃん』でハヤシライスを食す。
おいしかった〜。そのあと、『四天王ラーメン』をズルズルっといただいて、
なおかつ『菊兆』の明石焼きを持ち帰って部屋でじゅるパクっと。
神戸の味を堪能したのであった〜。

さてと、明日はどうしようか。この先進めないこともないけれど、
ノドも調子が悪いし、何より神戸まで来たというキリのいい達成感もあったので、
ここで折り返して帰路に着くことにした。シャワーを浴びて、ウェアも少し水洗い。
明日の目覚ましアラームをセットして、就寝ー。


5月12日(土)、朝早めに起床。ホテルを出てすぐ、自転車を確認。
ある!よかった〜。そしてまだ観光客のいない北野の街を、おみやげはどうしようかと
思案しながら散策。自転車用のビンディングシューズで歩きづらかったけれど、
定番の風見鶏の館も見て、そして街の小高いところまで登っていく。
神戸市街を一望。少しだけ、神戸の街の雰囲気を楽しめた。

tabi15.jpg tabi16.jpg
ホテル脇に停めておいた愛車。        風見鶏の館。風見鶏写ってないじゃん!

店が開き始めたので、おみやげをいくつか購入後、『いすずパン』で朝食を調達。
ホテルに戻ると、何やら結婚式のリハーサルのようなことがなされていて、
自分は場違いに思えた。そそくさと部屋に入る。朝食のパンをいただき、
身支度を整えていると、あっという間にチェックアウト時間の午前11時に。
フロントでおみやげの配送を頼み、ホテルアマリーをあとにした。

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お世話になったホテルアマリー。

さあ、行きますか。帰路、出発!天気は良好すぎて、自転車乗りには暑いくらい。
昨日来た道を戻り進む。腰が痛くなったり、足が張っていたり、
疲れは若干残っているけれど、国道2号線の車道をなかなかどうして軽快に飛ばす。

神戸市を出て、芦屋市を通り抜け、西宮市へ。途中、地図を見てみた。
京都までを視野に入れると、このまま国道2号線〜1号線をたどって行くよりも、
西宮市で2号線から分岐している、国道171号線を行ったほうが最短のように思えた。
クルマの交通量も2号線、1号線に比べれば少ないだろうといった考えもあって、
ここは171号線を進むことにした。

しかし、そう甘くはなかった。171号線も立派な国道、相当の交通量で空気も悪い。
延々と続く、そんな道。それでも、2号線〜1号線と比べればまだよかったかな〜
といったところ。そうとでも思わないとやっていられない。

もうお昼。171号線沿いの途中、昼食はまだまだと粘って粘って、
もういいかと午後2時ごろ、昼食がてら、ファミレスに寄ってしばし休憩。
先を急ぐ。急いでいるわけではないけれど、自転車に乗って走り進むしかないもんなあ。
そんなこんなで、長〜く感じた道のりではあったけれど、それでも思ったよりも早く
京都までたどり着けた。国道1号線沿いの東寺を見上げた。

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国道沿いの東寺。

ここまで来たらあとはもう勢い。山科の峠を越えて、滋賀県へ。
国道1号線、要は来た道を戻ればいいのだけれど、
やっぱりバイパスで自転車が入れないところの回避で、迷うんだよねえ。
栗東市内の1号線から名神高速道路へのインターチェンジあたりからわからなくなり、
住宅地の細い路地に入ってしまったり、いつの間にか進んできた国道を戻っていたり。
結局、正解は歩道とも車道ともとれないような細い急な坂道で、
小さなトンネルをくぐり抜けていく回避路だったりするんだよねえ。
ほんとクルマ優先。なんとかならないのかなあ、国土交通省さんよお。

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山科の峠から滋賀県側の眺め。

バイパス回避後、右手に線路(JR草津線?)を見ながら本ルートを行く。
ちょっと国道から抜けて、というか迷って、また住宅地に入ってしまったり、
この踏切を越えていけば国道に戻れるよなあ、あれ、戻れない。
自動販売機のジュースにつられてとある門前道に入ってみたり、
みちくさが多くなってきた。この症状、つまり疲れているのです。
こんな感じで、石部町、甲西町、水口町と走り進んだ。

とにかく、滋賀県の国道1号線、延々と続くまっすぐ一本道を突き進む。
今どのあたりを走っているのだろうか。あたりは暗くなりもう夜になっていた。
少し肌寒い。そうそう、行き道のときに、このあたりにビジネスホテルのような
宿泊施設があったので、そこで泊まろうかと思っていたのだけれど、
帰り道で見てみるとそこは真っ暗だった。つぶれてんのかよ!
あーあ、今日の宿泊、どうしようかな〜と思いつつ、やむなく通り過ぎた。

途中、マックに寄って軽い夕食。寒かったので体を暖める意味も含めて。
店内で食べればいいのに、なぜか外の駐車場の隅で済ませた。
ひとりで落ち着いて食べたかったのかもしれない。
さあ、そろそろ本気で宿泊のことを考えないといけないし、先を急ごう。

夜道、国道。ひたすら自転車をこぎ進む。サングラス着用もあって夜間は視認性が激減。
歩道のほうが突然の障害物があったりして危ないので、車道の白線を頼りその上を走る。
しかし車道は車道で、後方から迫ってくるクルマに脅かされる。ザックやサドルバッグ、
シューズにも反射生地が付いてはいるけれど、自転車自体には赤く光るテールライトを
装備していない。あのチョッ速のロードレーサーも赤く点滅するテールライトを
着けていたっけなあ。特に、大型トラックなんかがゴーッと轟音をたてて、
横スレスレを通り過ぎていくのは本当に怖い。スリップストリームなのかなんなのか、
引き込まれそうになるんですよね〜。夜間走行にはテールライトがあったほうがいいな。

というわけで、夜の峠道はなおさら危険に思えた。なんとか、鈴鹿峠を越える
手前までには宿泊先を決めたかった。土山町に入っていただろうか、途中、
『国民宿舎関ロッジ→この道入ってスグ』の看板を見て、その道を少し進み確認するも、
そんな気配は感じられず、すぐに国道に戻った。きっと、クルマならスグなんだろうな。
あきらめて国道を進むと、坂道が多くなり街灯も少なくなってきた。
前方が見えず走りづらい。危険に思えたところは自転車を降りて引いて歩いた。

もう鈴鹿峠も間近だろうというあたりで、『国民宿舎かもしか荘』の看板が目に入った。
これには少し期待したけれど、そこまでどのくらいの距離があるのかわからなかったし、
近くの民家で聞いてみることにした。呼び鈴を押すとおじさんが出てきた。
この近くに宿泊できるようなところがあるのか聞くと、やはりかもしか荘は遠く、
それよりは鈴鹿峠を越えたほうがいいということだった。仕方ない、鈴鹿峠を越えるか。

そこからしばらく国道を進むと、坂がきつくなってきた。鈴鹿峠だ。
よーし、気合い入れて行くぞ〜と、一気にダーッと坂を登り切ると、
ちょっと拍子抜け、あとは下り坂だけだった。後方からのクルマを気にして、
念のため歩道を走っていたのでスピードは出せなかったけれど、とにかく楽だった。
ということは、もう三重県の関町に突入。このまま国道を突き進む。

順調に軽い下り坂の夜道を進む。しばらくすると、『道の駅関宿』が見えてきた。
来るときには通り過ぎたこの場所。昔は東海道の宿場だったんだろうなあと思い、
ふらっと寄ってみることにした。が、おみやげなどを売る店はすでに閉まっていて、
食堂が開いているだけだった。そのほか、ここにはシャワー室や仮眠室があるらしく、
トラックの運ちゃん達が出入りしていた。へえ、道の駅にはこんな施設もあるのか〜
と思いつつも、泊まるのはパス、この場をあとにした。

でもどこか泊まるところを決めないといけない。しかしここまで来たらもう保険あり。
この先、ラブホがあるじゃん!その前にコンビニで遅めの夕食を買っておき、
少し進むと、イルカのオブジェがすごいラブホ発見!コンセプトは“海”か?!
駐車場に潜入、料金を確認。思い当たるもうひとつの選択肢と比較してみる。
あっちのほうが安いか。それにいろいろとわかっているから安心だな。
決定!ここはパスして、もうひとつの選択肢、毎度お世話になります、
チャペルココナッツをめざす!

亀山市に入ると、見えてきましたよ〜派手な照明、外観、ホテルチャペルココナッツ!
駐車場に自転車を置いて、イン。フロントに聞くと、あ、空いてないって〜!?
ガックリ。ふてくされてトボトボと出ていくと、呼び止められた。
「もうすぐ空きますよ」。ヨッシャ!しばし待つ。無事チェックイ〜ン!みたび!
部屋でコンビニめしと、サービスのジュース、スナック菓子をいただき、
例のアロマオイル貸し出しにサービスの朝食も注文しておいた。
ジャグジー風呂も堪能、あとは寝るのみ!ラブホテルフル活用で、眠りに入る。


5月13日(日)、朝。設定のアラームが鳴り響き、起きる。
頼んだ時間に朝食が来たので、いただく。3回とも同じだ、BLTサンド。
身支度を済ませて、今日はチェックアウトの時間よりも早く出る。
ああ、チャペルココナッツのポイントカードもらっちゃったよ。
もう使うことはないだろうになぁ。さあ、家に帰るぞ、出発〜!

きつい日差しの中、国道1号線に合流、亀山市を抜け、順調に帰路を進む。
暑い。自販機に手が伸びる。少しスローペースか。それでも鈴鹿市、四日市市、
川越町、桑名市と走り進み、長島町へ。長島といえば、ナガシマスパーランド。
新しい温泉施設も完成して、気になったけれど通り過ぎた。
木曽川、長良川の大橋を越える。いつも思うことだけれど、長い橋を渡るのって
緊張しませんか?ふらついて、柵を越えて川(海)に落ちる妄想が頭をよぎる。

少しビビりながら大橋を渡り切ると、長島町から弥富町へ。そう、愛知県に突入!
帰ってきたなー愛知県〜。何ごともなく、十四山村、佐屋町、蟹江町と突き進む。
途中、クルマは渋滞気味で、その脇をスルスルと優越感に浸りながら走っていると、
ついに戻ってきた、名古屋市へ〜。

名古屋市に入りある程度進んだところで、昼食兼休憩。ファミレスで日替わりランチ。
ドリンクバー付きにした。炭酸飲料ガブ飲み。水分とエネルギー補給完了。
やはり疲れているのか、筋肉疲労あり、腰も痛いし、長めに休憩。

適度に居座り、ファミレスをあとに。相変わらずペースはスロー。
見知った土地でもあるし、あとは来た道を戻るのみ。いろいろなことを思い出しつつ、
名古屋市を抜け、豊明市、刈谷市、知立市と惰性で進む。
安城市に入ってからはさらにスロー。安城市から岡崎市へ。
岡崎市に入れば、もう道もわかっているし、安心感も増す。

そして、見慣れた景色の中、のんびりのんびりと、夕方ごろ自宅に無事、到着〜。
ゴーーール!今回はボロボロじゃなく帰ってこれた〜。疲れもあるが充実感いっぱい。
前半はトラブル続きだったけれど、いい思い出になるっつうもんです。
でも、事前にトレーニングはしておくべきだし、トラブルもないに越したことはない。
しかし今回も、いい旅だった〜。また機会があったら、自転車でどこか遠く、
行っちゃいたいと思います!




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自転車で遠くへ! [スロー旅]

2001年の旅日記を再編して掲載しています。


『自転車で遠くへ!』の巻

今回は、電車じゃないよ、自転車だ!7日間の連休をいただいたので、
自転車で遠くに行くことにしたのです。3日間で行けるところまで行って、
そして帰ってくる、という予定(でも行き先は未定)で、決行ー!

まずは準備から。自転車はビアンキのシクロクロスモデル。
「シクロクロス」というのは、ロードレーサーをダート(未舗装路)でも
走行可能にしたようなヤツで、タイヤも太め(35C)のブロックパターンあり。
ロードレーサーより丈夫そうで自転車旅にはいいかなあと。
そう、そのために大金(20万円弱)はたいて買っちゃいました!
チェレステカラーにやられました!

ということで、自転車の装備。ハンドルバーにヘッドライトを着けて、
フレームのダウンチューブにはインフレーター(携帯用空気入れ)と
ペットボトルホルダー&水を装着、サドルバッグ内にワイヤーロックや携帯工具、
パンク修理キット、スペアチューブ、ヘッドライト用のスペア電池などの小物を収納。

そして、自分が背負うザックには、冊子の全国地図、最小限の着替え、
身のまわり品、ペットボトル水、トレッキングマットなどを入れて、
ちょっと重いかな〜という感じ。あ、使い捨てカメラも。

ウェアは、パッドの入ったレーサーパンツをはいてTシャツ短パン。
グローブを装着、コンタクト目の保護のためにサングラスをして、
ヘルメットは、たぶん似合わないな〜と思い、ナシ!


2001年5月25日(金)、午前10時45分、初日、出発ー!そして行く先決定!
愛知県内の自宅から、とりあえず東京方面へ向かうことにした。

この日は天気もよくて、まさに自転車日和。あまりに気持ちがいいので、
海を見ようと、東京方面への最短ルートである国道1号線から外れて、
渥美半島の付け根あたりの遠州灘方面へ向かった。最初のうちはそんな遠回りを
気にすることもなく、崖っぷちまで入り込んで海を望み、感動〜。
あ〜やっぱり自転車最高ー!とも思え、余裕たっぷりだったのだけれど、
遠回りも度を越すと道がわからなくなり(アホ)、
少し不安になってきたのでまた1号線に戻ることにした。

なんとか国道1号線に合流し、自転車を走らす。本日の前半の見どころは、
やはり海だった。塩見バイパス付近から見えてきた海はデカかった!
思わず写真パチリ。そのまま海岸沿いを行くと、ちらほらとサーファーの姿も見られ。
チクショウ、楽しそうだな…。その後、浜名湖弁天島でも写真をパチリと。

tabi3.jpg
太平洋はデカいぜよ。

tabi4.jpg
弁天島の鳥居。

1日目の余裕からか、いい感じのペースで飛ばす〜。
水分は常に自販機やコンビニで摂取しながら(頻繁にのどが乾く!)、
愛知県は蒲郡市、御津町、豊橋市(コンビニ駐車場で昼食)、静岡県に入って湖西市、
新居町、舞阪町、浜松市、豊田町、磐田市、袋井市、掛川市
(スーパーのマック&ケンタで夕食)と、国道1号線をたどってほぼ順調に
進んでいたのだがしかし!掛川市も山の方へ差し掛かった夜道、迷う!
バイパスがクセモノなんだよ、突然、歩行者と自転車を拒否して階段で下に行けとか、
自転車を担ぐことになったりするんだよ〜まったくもう。で、自転車は通れないから、
「迂回しないといけない→迂回してみる→違う方向に行ってしまう!」このパターン!
その後も何回かやらかしています(バカ)。

とにかく、迷った!まいった!夜、山道、カナリ不安…。どうにもならないと思い、
午後9時ごろ、民家で道を聞くことにした。その前に、自転車チェーンが外れるという
トラブルも抱えていたので、その民家の薄明かりでガタゴト直していると、家の中から
「誰かいるのー?」と声が!ヤバっすかさずピンポ〜ン。母と思われる人が出てきた。
「道を教えてほしいんですが…」。すると父と娘も登場、親切にも簡単な地図まで
描いてもらって教えていただけた。そして「がんばって」と…!
まあ、好きでやっているんだけれど、ガンバるよ!

その地図と自分のカンを頼りに、街灯もない真っ暗闇の道を、
不安にかられながらも探り進む。そして、どのくらい経ったんだろうか、
どうにかこうにか、本ルートへ無事脱出することができた〜。

ようやく掛川市を抜け、夜道を走る。金谷町、島田市、藤枝市、そして岡部町へ。
そろそろ泊まるところを探さないとな…。とあるタクシー事務所の車庫の電灯で
地図を見ていると、タクシーが帰ってきてドライバーのオッチャンが降りてきた。
事情を話すと、オッチャンはアメをくれて、この先に「道の駅」という
国道沿いの休憩所があって、そこなら休めるところがあるとを教えてくれた。
ありがと〜オッチャン!

先へ進むと、ほどなく岡部町道の駅なる休憩所に到着した。
売店も24時間やっているらしく、めん類などいただける。
おみやげも売っている(お茶っ葉購入)。もう日付が変わって夜中の1時。
この休憩所で一泊することにした。

その前に、トイレでコンタクトレンズを外す。これが本当に面倒で、
洗面所がないとできないので野宿しづらい。こういった旅の自由を奪う一番の要因で、
もし願いをひとつ叶えてくれるというのなら、「視力をサンコン並みにしてほしい」
と、本気で思う。鏡を見ると、日焼け止めに排気ガスのススが吸着してか顔が黒い。
国道ばかりを走っているとこうなるのか…念入りに顔を洗う。

休憩所とはいっても、固定された小さい丸太のイスがあるだけなので、
そのイス2つにマットを敷いて寝るハメに。もちろん寝心地は悪い。それよりも、
たぶん一日中流れているのであろうBS放映の大音響と、蚊の多さにまいった。
しかも意外と冷える。当然、熟睡なんてできるはずもなく、2〜3時間くらいか、
寝たのか寝ていないのかよくわからないまま、朝になっていった。


売店でそばの朝食セットをいただき、身支度を整える。
26日(土)、午前8時45分ごろ、2日目、出発ー。
快晴で、しかもしばらく下り坂が続いたが、睡眠不足と排気ガスで快適ともいかず。
岡部町を出ると、静岡市。静岡市街を走り抜け、清水市へ。海岸沿いの道路を行くと、
由比町へ出た。国道1号線のバイパスを避けると、旧街道っぽい趣のある細道に入った。
海も見えて素敵な景色だ。ここはウォーキングのコースにもなっているのか、
歩きの観光客らしき人が多く、何やら桜エビが名産で名物らしい。
桜エビか…そそられる〜!けれど、昼食にはまだ時間が早かった。やむなく、
帰り道の際にもし寄っていけるのなら食べようということにして、あきらめた。

由比町をあとにして、蒲原町、そして富士市、市街で電車の線路に阻まれて少し迷うも、
ほぼ順調に沼津市へ。しかし2日目、延々と続くまっすぐな国道1号線…
ここへきて疲れも溜まってきていた。肩が腰が痛い〜。何かイイもんでも食わなきゃあ
やってられないよ!と、奮発!今日の昼食は回転寿司!ヤッター寿司だぁウマイウマイ…
適度にいただき、お勘定。二千円弱ナリ〜。この出費があとあと響くことになろうとは、
このときは思いもしなかった…。

沼津市を抜けると、また清水、清水町。すぐに三島市。徐々に登り坂が多くなってきた。
そう、ついにやって来た、箱根路!標識からはもう、延々と登り坂!しかも急こう配!
最初は「自転車に乗ったままで!」と意気込んでいたけれど、疲れもあってか、
3分の1も進まないうちに自転車を引いて歩いていた。完敗…。
しかもこの日は霧がひどく、上へ行けば行くほど霧は濃くなっていった。
もう、雨に降られているのと同じ状態。視界は数メートル。そんななか延々と、
ひたすら坂を登っていく。靴は自転車のビンディングペダル用のカタいものなので、
かなり歩きづらい。それでも自転車を引いて、登っても登っても登りの坂道を、
歩く、歩く、歩く…。すると、ついに『箱根峠』の標識が!神奈川県箱根町に到達!

しばらく進むと、芦ノ湖畔の温泉街に出た。が、濃い霧で湖など確認もできず、
旅情もへったくれもなくそのまま通り過ぎた。ここからまたさらに登り坂を進み、
『箱根最高標高地点』の標識を越えると、そこからは逆に延々と下り坂!
そう、自転車にとってはパラダイス!地獄のあとの天国、ムチとアメ!ってことかー!
あいにく霧で視界が悪く、あまりスピードは出せなかったけれど、
それでも、ジェットコースターみたいだーこれは!あー楽しい!
シャーッと水しぶきをあげて下り直滑降!でも楽しい下りはあっという間。
これで箱根越えを達成!そしてふもとの温泉街、箱根湯本へたどり着いたのであった。

午後7時半、箱根湯本。ここまで来て、心境の変化が。このまま突き進めば、
3日間で東京まで行けるだろう。だがしかし!行ってどうなるんよ、と。
それよりも、この有名な温泉街で一泊して帰路に着いたほうが、
旅としては正解なんじゃあないのかと思えてきた。体力的にも金銭的にも、
じつはギリギリっぽい。よし、予定変更!ここで一泊&温泉入って、帰る!

そうと決まればさっそく宿案内所へ。安く素泊まりできるところを当たってもらい、
そこで一泊することにした。もちろん温泉付き。自転車も軒下に置けてラッキー。
部屋に入るとベッドが!ゴロン!ぷはぁ〜、カラダ休まる〜。

しばらく部屋で休んだあと、街に出てぶらぶら歩いてみた。しかし温泉街の夜は早い。
みやげもの屋は早々とシャッターを下ろしていく。聞くと朝は8時半には開くらしい。
おみやげは明日の朝見よーっと。そうだ夜ゴハン、飲食店は開いているところは
開いているけれど、金銭的にちょっと厳しい。ということで、今宵のメシはコンビニ食!
昼の回転寿司がボディブローのごとく効き始めていたのであった…。

部屋に戻ると浴衣に着替えて、コンビニ夕食をいただく。テレビを見ながらのんびりと。
そして温泉へ。普段はシャワーだけで湯船には入りもしないのに、1時間ほど浸った〜。
建物最上階(といっても6階)の展望風呂。極楽極楽〜。温泉を満喫したあとは、
部屋で古風にも手紙をしたためたりなんかして、今日はもう寝早めに寝ることにした。
やはり疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。


ピピピ…朝、7時半。腕時計のアラームで起きる。テレビの天気予報を見ると、
雨の可能性大。今のところ曇っている状態でまだ雨は降っていないけれど、ヤバいな。
昨日コンビニで買っておいたもので朝食を済ませ、朝の温泉を満喫〜。そして外に出る。
温泉街を歩いていると、雨が!かなり強く降ってきた。ついてないなあと思いつつも、
アーケード街でおみやげを物色し、いくつかを購入。定番だけれど、温泉まんじゅう!

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雨の箱根湯本。あの建物の最上階が入った展望風呂。

宿泊先の出時間は午前10時まで。先にチェックアウトを済ませて、
自転車はもう少し軒下に置かせてもらうことにした。雨がやまないかと、
おみやげ店を見て回る。そうそう、おみやげはいいけれど、行きでの荷物重のつらさと、
帰りの体力のことを考えて、購入したおみやげとトレッキングマットは
宅配で送り返すことにした。これで少しは荷物の負担が和らぐか。
そうこうしているうちに、雨がやんできた!今だとばかりに自転車を出して、
27日(日)、午前10時45分ごろ、3日目、出発ー!

今日は昨日来た道を戻ってゆく。昨日の下りは、今日は登り!またもや箱根越え!
しかし昨日と違う点は、宿泊して多少なりとも体力が回復しているということ。
雨が降ったりやんだりで天気はあまりよくないけれど、
自転車から降りることもなく、スムーズに坂を登り進む。

そんな道すがら、自動車のオッチャンから「がんばれよ〜」との声が。
罰ゲームじゃないんだし、好きでやってるんだけどなぁとは思いながらも、
自然とほほ笑み返し。さらに途中、休憩中の外国人自転車ツーリスト2人組に遭遇!
最初はそのまま通り過ぎたけれど、やっぱり気になって、少し戻って歩み寄り、
写真を撮り合って交流!名前は聞かなかったけれど、カタコトで話したところ、
アメリカのワシントンとニューヨークの人らしい。いい思い出づくりが
できたなあと思いつつ、「じゃあ!」と再び、走り出す。

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撮ってもらいました。

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ワシントンの人と。             ニューヨークの人と。

意外なほど早く、箱根最高標高地点を通過、芦ノ湖畔に到着した。
今日は霧もなく湖が見える。富士山?あれ、見えなかったな〜。
湖を見ながら、コンビニ前で昼食をとる。観光客が遊覧船に乗っていく。いいなあ…。
さあ!行くぞ。さらに登り坂を進むと、さっきまでいた芦ノ湖が一望できた。
もう少し行けばあとは下る一方。あ!『箱根峠』の標識が!峠を越えればこちらのもの。
そこからは延々と、ヤッター!下り坂!!まだ雨は少し降ってはいるものの、
視界はまあ良好。飛ばすーッ!最高ー!!約40分もの間、下りを大満喫〜。

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芦ノ湖。

そして順調に、昨日来た道を戻っていく。とはいっても、無理がたたって節々が痛い。
満身創痍、気力もペースも減。休憩が多くなる。でも自転車で帰るしかないわけで、
三島市、清水町、沼津市、富士市、蒲原町と静岡県内の長い長い道のりをこぎ進み、
由比町までたどり着いた。

ここで!昨日気になった桜エビ再来。一番安いメニューは、桜エビ専門レストランの、
かけそばに桜エビのかき揚げが付いたセット、700円。でも、これを食べてしまうと
明日はもう朝昼夕食と各300円ほどしか使えない。考えに考え、早めの夕食時間では
あったけれど、モチベーション向上も兼ねていただくことにした!桜エビ、んま〜い!
レストランからは海が見えて景色も最高。ザックの泥汚れを拭いたりしつつ、
くつろがせてもらいました。しかし、残金はもうわずか。
昨日の昼食の回転寿司がやっぱり失敗だったなああ効いてきた〜ボディブロ〜。

夕食を終え由比町を出る。清水市、静岡市と進み、昨日の出発地点、岡部町も突破。
島田市を抜け、途中どうしても何か食べたくなって、コンビニでドーナツを買い
さらに残金を減らしてしまうも、金谷町に到達。もう夜中の12時。
そろそろ寝床を確保しなくてはと迷い探した結果、JR金谷駅で一泊することにした。
ここまで来て盗難にあっては悲しいうえに移動手段もなくなってしまうので、
自転車は安全と思えた駅前のタクシー事務所の脇に置かせてもらった。
終電を確認して、駅構内のベンチに横になった。

明日は人が来る前に、始発の5時28分前には起きて出発だ…。眠りに入る。
が、2〜3時間後に目が覚めた。寒い!着替えをすべて重ね着していても、
ベンチで仰向けじゃあ寒くて寝れやしない。少しでも温かい場所へと、
壁の電光広告板にくっついて、地面に駅のパンフレットの紙を敷き詰めて、
丸まって寝る…。それでも寒い!どのくらい経ったのか、ふと気がついたら、
おじさんが毛布を被せてくれていた。えっ?「寒いだろ…向かいの…だよ」。
駅前のタクシー事務所の人だ…!丸まったままの体勢で「ありがとうございます…」。
なんていい人なんだ〜。ありがたく使わせていただく。ベンチに戻り毛布を被って、
毛布の温かさと人の心の温かさを胸に、再び眠りに入った…。


朝、午前5時。やっぱり寒い。吐く息が白い。毛布に包まって、ぼーっとする…
そろそろ時間だ。身支度を済ませて、タクシー事務所に毛布を返す。
居合わせた人にお礼をいうと、持ってきてくれた人と違う人なのか、
事情がわかっていないようだった。自転車も無事でよかった。さあ行くかー。
28日(月)、午前5時45分ごろ、4日目、出発ー。

4日目、疲れはかなり溜まっていた。肩痛、腰痛に加えて右膝痛。おまけに眠い!
朝食をコンビニで済ませて、進もうとするも、ペースは遅い。休憩も多くなり、
自転車を引いて歩くことも。それでもなんとか、金谷町から掛川市への峠を越え、
初日の夜に迷った道もそことはわからず走り抜け、掛川市、袋井市、磐田市、豊田町、
そこから海のほうへ、竜洋町の海洋公園にたどり着き少し気分転換にはなったものの、
浜松市に入ったころには疲れもピークに達し、たまらずコンビニで昼食を買って休憩。
そして新居町、県境のキツい坂道を越え、やっとの思いで、ついに静岡県を突破〜!

とうとう愛知県に戻って来た。お金はもう水を買うくらいしか残っていない。
自転車に乗っては降りて歩き、乗っては降りて歩き、もうヘロヘロになりながらも、
豊橋市を越え御津町、そして蒲郡市へ。ここまで来たら自宅は目前、見慣れた景色、
不思議とペダルを踏む足が軽くなった。あと少し、あと少し…。

そして、午後7時ごろ、無事、自宅帰還〜!あー疲れた〜。というか痛い〜。
慣れないことするもんじゃあないな〜。教訓、長距離ツーリングには多少なりとも
事前にトレーニングが必要です!でも、いい旅だった〜。また機会があったら、
自転車でどこか遠く、行っちゃうぜ〜!懲りないヤツ…(笑)。
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日帰り東京レコ屋めぐり2000夏 [スロー旅]

2000年の旅日記を再編して掲載しています。


『日帰り東京レコ屋めぐり夏』の巻

2000年8月3日夜、決定!東京行き!朝のうちに「18きっぷ」は買ったし、
最低限の準備はしてきたし、明日から連休だしで、もうこの日に行かないで
いつ行くのかという感じ。

とりあえず、仕事をあがってまだ時間があるので、前哨戦で近くのレコード屋に
行くことにした。さっそくCD1枚を購入。おいおい、CD買いに東京に行くのに、
行く前から買ってるよ…。夜ゴハンにココイチでカレーとサラダを食べて、名古屋駅へ。

電車が来るまでに、お手洗いで最近調子の悪いコンタクトレンズを外しておく。
ついでに律義にハミガキ。駅構内でしばらく待つと、来た来た。列車はもちろん、
「ムーンライトながら」ではなく季節の臨時列車、指定席券が必要ない快速東京行き。

夏休み期間なので混むのは覚悟していたのに、平日のせいか客数は少なめ。
4人掛けボックス席に自分と、会社帰り風の人と、2人だけ。
これはあとになってから、ボックス席をひとり占めできるかも!

そうこう思っているうちに、名古屋駅を23時43分に出発〜!
5〜6駅も過ぎると、思惑通り向かいの会社帰りの人は降りていった。
ヤッタ!4人掛けの席にひとりになった!間違いなく横になって寝られる!
迷わず横になる。でも、4人掛け席に2人でも自分ひとりでも、
寝る体勢は大して変わらず。座席の硬いも相変わらずで寝づらいし、
横になれたってあまり意味ナイ!

ガタンゴトン…横になって寝ようと思っていても、電車の音は聞こえる。
眠れない。いつもの電車帰りなら立っていても寝てしまうのに!
それだけ遠出で気分が高まっているということなのか。遠足前日の夜の感覚だな。


眠れたのかどうかよくわからないまま、早朝5時前、無事着きました、東京〜。
東京駅もこの時間は、それでも人はいるけれど、ガランとしている。
まずは、なぜかやっぱり改札を出る。自販機で炭酸飲料を購入、飲む。
あ、3月に行ったときと同じだ…。

で、毎度の事ながらこんなに朝早く着いてしまうので、店が開き始めるまでは
ヒマなわけで、今回は築地に行くことに。閑散とした街を歩いて歩いて、
人が多くなってきたなと思っていると、ほどなく築地市場界隈に到着。
やっぱり魚市場の朝は早い!銀座のビル街とは違って、もう店は開いているし人も多い。
市場をところ狭しと走り回る、荷台に前部のエンジンとデカいハンドルだけの乗り物
(なんていうの?)が印象的。いろいろ歩き回って、知人が雑誌を見て
「おいしそう〜」といっていた和菓子店でおみやげを購入。

日差しがキツくなってきた街中を歩き、東京駅に戻る。ノドの渇きをポカリで潤す。
朝7時台の駅、人がかなり増えている。せわしなく歩く人の流れとは逆に進むのは、
なんだか変な感じがする。

さて、弁当店で穴子釜飯とミネラルウォーターを買い、コンタクトレンズも着けて、
東京駅構内の「銀の鈴待ち合わせ場所」で朝食。う〜ん、んまい。
あ、前回も同じ場所で穴子釜飯食べたよなあ…まあいいか。

そしてようやく、今日の予定を大まかに決める。今回は久しぶりに吉祥寺に
行くことにした。というわけで、午前10時前に吉祥寺へ、それから新宿、
渋谷とレコード屋を巡ることに。もちろん日帰りだから、
帰りは東京駅を午後5時半に出発!

予定も決まったことだし早速、吉祥寺に向かう。中央線に乗り出発!
寝過ごしてしまい西国分寺まで行ってしまうも、すぐに引き返し、
吉祥寺にはちょうどいい時間で着いた〜。

レコード屋開店の10時まで、少し街を歩き回ってみる。いいところだなあ、吉祥寺。
アーケードの商店街も、東急、伊勢丹、パルコも、GAPもタワーレコードもあるけれど、
すべて小じんまりとしていて、少し裏通りに入るとブティックや雑貨屋が多数。
なぜか東南アジア系の料理店の多い、住みたくなるようなところでした。

午前10時、レコード屋めぐり開始!期待していたレコード屋にもイイCDはなく、
結局どこでも買えそうな1枚をゲット。これじゃああんまりだと思い、
行列ができていた店で和菓子のモナカをおみやげとして購入。昼食は手早く吉牛で。
買ったおみやげを置き忘れそうになりながらも、吉祥寺をあとにした。

そして新宿、渋谷とレコード屋を巡回。渋谷では時間がなくなってしまい、
いつも行く店『テクニーク』に行けず、残念。やっぱり吉祥寺まで行くと
時間かかるなあと思いつつ、午後5時前には山手線で東京駅に向かう。
それにしても、結局なんだかんだでCDは合計12枚購入。
お金が減る減る。やっぱりバカだ自分〜。

東京駅に戻り、夜ゴハン用に穴子押し寿司(また穴子か!)とおにぎり2個を買って、
早めに帰りの電車、17時35分発沼津行きに乗車した。無事座席に座ることができて、
朝から歩き通しで少し疲れていた自分にはかなり助かった〜。そして間もなく、発車〜。

その後、三島で「ホームライナー浜松」という、別に乗車券が必要な列車に
乗り換えてからは、ゆったりシートで穴子押し寿司&おにぎりも満喫!
途中停車駅で買ったジュースとポテチも加わって、お決まりのパターンだけれど、
こんなの大好き!快適じゃ〜。そして列車を乗り換えること計3回、
午後11時半には家に着いたのであったー。よーし、また来年も行くぞーっと。
これはもう、過去の音源を掘り出して掘り出して枯渇するまで、続くと思う!!


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さすがに東京駅でも早朝はガランとしています。



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日帰り東京レコ屋めぐり2000春 [スロー旅]

2000年の旅日記を再編して掲載しています。


『日帰り東京レコ屋めぐり春』の巻

2000年3月29日夜、決めた!仕事あがりで電車で東京に行く!
今日は朝からどうしようかと迷っていて、一応、最低限行ける準備をして
出勤してはいたんだけれど、明日からは久しぶりの連休でもあるし、
JR1日乗り放題の「18きっぷ」は持っているし、もう決行ッ!
“いきあたりばったり”が好きな自分としては、もっともなことだ〜!

列車は例の、「ムーンライトながら」ではなく季節の臨時列車、
指定席券なしで乗車できる快速東京行き。タダなせいか車両が古い!座席が硬い!
これに名古屋から乗って、早朝4時40分ごろか、東京に着くのをひたすら待つ。
いや、寝られるものなら寝ておく。

車内はド平日のせいか、いくぶん客数は少なめ。オッケー、これなら横になって
寝られるかも。と思った矢先、自分が座っていた4人掛けボックス席に人が来た。
「ここいいですか?」、「あっはい」。ダメとはいえないです。
この人も東京まで行くんだろうなと思っていると、また人が来た。
あーあ、これじゃあ横になって寝るのはムリかな…。

あれこれ思っているうちに、名古屋駅を23時42分に発車〜!
2〜3駅も過ぎるとただの会社帰りの人は降りていく。
休祝日時と比べれば人はかなり少ない。ヤッタ!4人掛けの座席に2人になった!
横になって寝られる!迷わず横になる。それにしても、この座席カタいよな〜。

無事、横になったのもつかの間、イタタ…左目が痛い。
じつは自分、ハードコンタクトレンズ使用者。本当は就寝時にはレンズを
外さないといけない。でも今日は着けっぱなし。普通ならそれでも
1日ぐらいは問題ないんだけれど、最近は調子が悪くてとうとう痛みが。
仕方なく、左目だけコンタクトレンズを外す。

気を取り直し、寝るぞと再び横になる。ガタンゴトン…あ〜もう、座席はカタいし
騒音もヒドいし、普通なら寝られないよな〜。でも、横になれるのは本当に幸い。
無理にでも寝ようとする。ガタンゴトンガタンゴトン…ふと目を開けると、
もうというかまだというか、静岡だったりする。やっぱり遠いな〜東京は。
また目を閉じて、がんばって寝ておく。


眠れたのかどうかよくわからないまま、気づくとアナウンス「次は品川〜」。
もうスグ東京だと思ったら、何かアクシデントがあったらしい。
アナウンスによると、東京〜有楽町間の橋げたにトラックが突っ込んだらしい!
安全確認のためということで、品川でしばらく停車することになった。
でもまあ、東京に着いたって早朝で店は開いていないし、やることはないし、
電車が動かなくてもこちらは寝ていればいいんだし、
結局、1時間ほど待たされたけれど、問題なし。

約1時間遅れで、着きました東京〜。いつもなら売店はまだ開いていないんだけれど、
今回は着いたのが午前6時前。駅構内のフードショップやコンビニはもう開店している。
コンタクト装着後、意味もなく改札を出てぶらぶら歩く。自販機で炭酸飲料を購入、
グビグビ飲む。そして弁当店で穴子釜飯とおにぎり2個とウーロン茶を購入。
そうそう、昨夜は夜ゴハンを食べていなかったので、これが夕食兼朝食。
東京駅構内の「銀の鈴待ち合わせ場所」でいただく。う〜ん、んまい。
でも、隣のオッサンがこっちにケツ向けて寝ているのが気になった!

その後ようやく、今日の予定を大まかに決める。いきあたりばったりだなあホント。
ちなみに、自分が東京に来る目的は、ほとんどはレコード屋を巡って地元になかった
CDを買うためで、あとはまあひとりで東京に来たという雰囲気を楽しむという感じ。
まったくもってノー観光であります!というわけで、午前10時前に池袋からスタート、
それから渋谷、最後に新宿でレコード屋を巡り、中央線で東京駅へ、午後5時半には
電車に乗って帰る!という、昼ゴハンを食べているヒマもないだろう予定とした。
これはもう毎回のことだから慣れたもの。日帰りするには午後5時半には
東京駅を出発しないと帰れなくなるしなー。

しばらく銀の鈴待ち合わせ場所でボーっとしたあと、早めに池袋に向かうことに。
出発!山手線に乗る。案の定、車内で寝てしまい山手線をぐるっと一周してしまうと、
池袋には午前10時ちょうどに着いた。さあ、CDあさるぞ〜。

が、午前中はそれほど買おうと思うCDもなく、もう何回も来ているし、
買いたいCDも少なくなるはずだよな〜と思ったり。
折りたたみ自転車が欲しかったこともあって、東急ハンズで折り畳み自転車でも買って
持ち帰ろっかなーなどと、ムダな行動も思い立つほどだったんだけれど、
午後からはもう、このCDアリかな〜ならこれもアリか〜と、買いまくった!
結局、池袋、渋谷、新宿でCD14枚購入。お金が…。バカバカ自分のバカ〜。

それにしても、今回はレコード屋でよく流れていたELTの新曲がやたら耳に障った。
今の自分の情況的にさー。ブル〜。

そうこうしてるうちに、もう午後5時!急いで新宿から中央線に飛び乗り、
東京駅に到着〜。売店で昼食兼夕食の鳥めし弁当&ジュースと、
一応おみやげのレモンケーキを購入して、慌ただしく17時35分発
沼津行きの電車に乗る!そして発車〜!

東京を出発後、しばらくは車内満員、立ちっぱなし。そのうえオヤジたちに囲まれて
苦しい思いもしたけれど、小田原あたりからは人も少なくなってやや快適に。
三島駅で「ホームライナー浜松」という別に乗車券が必要な列車に乗り換えてからは、
ゆったりシートで鳥めしも満喫!途中で買ったポテチもバリボリ!ジュースゴックン!
あ〜快適快適。その後2回の乗り換えを経て、午後11時半には家に着いたのでしたー。
よーし、また行くぞーっと。もうこれは、年中行事だなー!!


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帰りの電車内にて本日の戦果。いつもこうだよ〜。



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